『FLOWERS』[DISC REVIEW]

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『FLOWERS』[DISC REVIEW]

謳おう、そして、咲かせよう。
僕らの音楽と未来ためにーー

水中に咲く、一輪の花。
その、花もとから水面に向かって、勢いよく湧き上がる黄色と白の細かい流線ーー。
花びらなのか、副花冠なのか。それとも天上からの光だろうか。
いずれにしても、その佇まいから放たれる“強さ”と“美しさ”に息を飲む。

書き下ろしたのは、長崎県諫早市在住の萩原慎哉氏。
首から下の自由がほぼ利かないながら、操作が容易なデジタルツールではなく、キャンバスに直接、筆で描くという油彩での表現にこだわっている。興味がある方は是非、検索してほしいが、16歳で味わった絶望からの、不死鳥のような人生。もちろん“大分”や“ペンギン”といったキーワードが幾度か、その人生において交わる部分があることも含めて今回、彼の筆致にバニラズが共鳴したのも、分かる気がする。

内なる自分と向き合った前作『PANDORA』から約1年9カ月。
本作には、昨年秋のアリーナツアー以降、発表してきた“会場限定シングル”や“配信限定シングル”のほか、今年9月の大阪城ホール・日本武道館両公演で、ひと足先にお披露目された『HIGHER』、『My Favorite Things』、『Two of Us feat. 林萌々子(Hump Back)』など全12曲が収録されている。

多彩な彼らのルーツのなかでも、とりわけカントリーやブルーグラス、アイリッシュ/ケルトといった要素をフィーチャー。アルバムの起点となった『LIFE IS BEAUTIFUL』からの流れで、のちに“バニラズ・セブン”としても彼らとステージを共にすることになる手島宏夢(フィドル)、ファンファン(トランペット)、井上惇志(ピアノ)という強力かつ愉快な三銃士が加わったことで、より“人とのつながり、温もり”が感じられる1枚へと仕上がった。

なかでも男女ツイン・ヴォーカルで聴かせるバンド初のコラボ曲『Two of Us feat. 林萌々子(Hump Back)』では、まさかのバニラズでこんなイチャイチャな歌詞、演るんですか?!と思いきや、ちょいちょい挟み込まれる牧達弥らしいワード・センスに、安定のニヤリ(笑)。どちらかと言えば、続く『Dirty Pretty Things』の<1+1が3になって/目まぐるしく変わる日々の音/横たわるおもちゃはそこらにあってね>と歌う“未来”の、こそばゆくも温かな生活への実感にーー今ではもう大きくなってしまったけれど、我が子の赤ちゃん期の風景もこんなだったなぁ…と思わずほっこり…のち、ドキリな一面を感じたりもして。

ただ、人と人とが関わり合えば、傷つくことやイラッとすること、煩わしいなと思うこともあるかもしれない。でも、そんな時こそ、バニラズだ。色とりどりに咲き誇る、音の花束、心に挿して。彼らの歌を口ずさもう。

<痛み消えるまで忘れさせて/踊り明かしてもいいよ/僕が付き合うよ>(『HIGHER』)
<難しいことは考えずに/このまま僕と歌おう>(『きみとぼく』)

なお本盤を携えた全国ツアーは1月17日からスタート予定。九州では1/26長崎 DRUM Be-7、1/27大分 DRUM Be-0、1/29福岡 Zepp Fukuokaの3公演に加えて、4/23福岡市民会館でのホール公演が控えている。是非、お見逃しなく!
(なかしまさおり)

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LIVE INFORMATION

「FLOWERS」TOUR 2023

2023年1月26日(木)
長崎 DRUM Be-7
2023年1月27日(金)
大分 DRUM Be-0
2023年1月29日(日)
福岡 Zepp Fukuoka
2023年4月23日(日)
福岡市民会館

PROFILE

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