『離島東京』[DISC REVIEW]
須藤寿 GATALI ACOUSTIC SET
COLUMN
ディストピアでもユートピアでも、
ぼくらはまた落ち合って、楽しむだけ。
昨年、デビュー20周年を迎えた髭のフロントマンである須藤寿のアナザーサイド・プロジェクト、GATALI ACOUSTIC SET(以下、GAS)。須藤寿(GATALI_髭) 、長岡亮介 (Guitar_ペトロールズ)。 ケイタイモ(Bass_WUJA BIN BIN)、伊藤大地(Drums_ グッドラックヘイワ) 、野村卓史(Keyboards_ グッドラックヘイワ)…メンバーの名を聞くだけで、グッド・ミュージックへの扉はすでに開いている。
GASとしては、前作『For Example, Utopia』から6年半ぶり3作目のリリースだが、作品自体はコロナ禍前の2019年にレコーディングされていたものという。振り返れば、ここ数年、私たちは何かを選び取るにしても、あまりに情報過多で不鮮明ゆえ、困難な時代に生きている、と感じる場面も少なからずあっただろう。そんな複雑さを抱え込んでしまった時代に、今作は「コロナ前も後も、自分と他人の距離感って、あんまり変わってないんじゃない?」と、さらりと言いのける須藤からの、ご機嫌なウェルカム・チケットになっている。
全7曲の収録曲は、須藤による全詞に、ケイタイモ、長岡亮介、會田茂一、そして須藤自身が作曲。軽快なドラムとギター、弾む鍵盤、直走るベースラインから生み出されるトロピカルなグルーヴにのせて、甘いヴォーカルが豊潤なサウンドスケープを浮かび上がらせ、たちまち異次元の離島へと運んでいってくれる。
あなたにとっての、この世界がディストピアでもユートピアでも、「ぼくらはまた落ち合って、楽しむだけ」。音楽は自由、望めばいつでもEXITへと解放してくれる、と。(前田亜礼)
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