『I am here』[DISC REVIEW]
SAHAJi
COLUMN
![『I am here』[DISC REVIEW]](https://beavoiceweb.com/wp-content/uploads/2025/01/I-am-here-cover_s.jpg)
極東にて継がれるブリティッシュロックの系譜
世界に告ぐ《I am here》
物真似で終わるのか、偉大な先達を血肉としその心身によって個を醸成、ルーツの継承と称えられるのか。その違いはなんだろう。前者になく後者にあるもの――センスか、技巧か、経験か、理解か、リスペクトか、スピリッツか、物語か、あるいはそれら全てか。
富山市出身の兄弟、SHOTARO NISHIDA(西田蕉太郎・Gt,Vo)、YOSHIRO NISHIDA(西田曜志朗・Gt)によるSAHAJi。日本国内で話題となりはじめたのは昨春だったか。デビューシングル『Future In The Sky』が英国フィジカルシングルチャートにランクイン、最高8位を獲得したことから、Spotifyのヴァイラルチャートで再生・共感数が急上昇。7月には、『Future In The Sky』をタイトルに冠し、2ndシングル『Tell Me All Your Feelings』 & 3rdシングル『I Wanna Be There』をパッケージしたEPが輸入盤としてリリースされた。その後、9月にはTHE BEATLES直系のブリットポップ『Stay around』をすがすがしいばかりにドロップ。そしていよいよアルバムリリースへとつながるだろうニューシングル『I am here』が本日リリースとなった。
ここには、連綿と続くブリティッシュロックの継承をこの極東で成し遂げようとする二人のリアルと本領が、挑発的に息づいている。デビュー時、The Stone Roses(ザ・ストーン・ローゼズ)やOasis(オアシス)らの作品でエンジニア、プロデューサーを務めたNick Brine(ニック・ブライン)が音源制作を手がけ自身のレーベル【FLIP FLOP RECORDS】からリリースしたというトピックも、国内外のUKロックファンの心をくすぐっただろう。だがやはり心を掴まれるのは、曇天のような憂いを孕んだ音像、緻密であって心の内から沸き上がるようなグルーヴ感に満ちたサウンド構築、光射すようなストリングスの拡がり、そして頭上の分厚い雲を蹴り上げるメロディアスでエモーショナルな旋律と展開。胸をすくのは、シンプルに削ぎ落とされたメッセージの力強さとピュアネス。《I am here》《I believe in myself》――それは自らに問うた真価の応えだ。(山崎聡美)
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