『天使/風化した街』[DISC REVIEW]
爛漫天国
COLUMN
![『天使/風化した街』[DISC REVIEW]](https://beavoiceweb.com/wp-content/uploads/2025/09/爛漫天国ジャケ写.jpg)
《風化した街を台風のようにかけまわる》
ノスタルジィを超えるタフネスをもって
爛漫天国の躍動がはじまる
福岡出身・在住の4ピース・バンド、爛漫天国。2024年4月結成と、活動歴はまだ2年にも満たないながら、県内を中心としたライヴ活動を精力的に展開。最初の音源を配信リリースしたあたりからジワジワと話題を呼んであっという間に東京へ飛び火。今や“噂の”という枕詞をもって取り上げられるほどの注目株だ。
本作は、昨冬から今春にかけて配信リリースされた2曲──ライヴにおいて抜群の求心力を発揮しセットリストの柱ともなっている、現時点での代表曲『天使』『風化した街』──をファンタスティックな紙ジャケット仕様でパッケージした、爛漫天国にとって初のフィジカル作品である。
ビートの効いた王道のロックンロール感、エッジの立ったガレージ感を宿すアンサンブルは、粗くもみずみずしく手垢を感じさせない。音粒の躍動や煌めきはそこかしこに満ちてこぼれ落ちるが、青さだけで逃げ切るような軽薄さがなく、至極まっとうで伸びやか。そして、鼻の奥がツンとなるようなリアリティーを覚えるのが、ジャパニーズ・ソウルやブルースに根差したフォーキーなメロディーと詩情である。ソングライティングを手がけるボーカル・ギターのモモノマナトの眼差しは、歌を生むのは特別な景色じゃなくごく身近でありふれた一瞬の、まるで切り取ったように胸に焼き付く情景であることを、すでに射抜いているようだ。それはまた、同世代の共感はもとより同時代を生きる者たちの共鳴を生む普遍性をも湛えている。
今週末9月7日(日)にはベイサイドプレイス博多にて開催される『BAYFES 2025』に、Ovallやシャッポ、優河等と並んで出演する。福岡発のニューカマーが《台風のようにかけまわる》頼もしい姿を、ぜひその目で確かめてほしい。(山崎聡美)

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