『Rhythm Motif』[DISC REVIEW]
おおはた雄一
COLUMN
バンド・セッションにのせて
日常の詩をシネマティックに味わう。
10枚目となるオリジナル・アルバムは、「音」からアプローチした一作。芳垣安洋(Dr)、伊賀航(Ba)、細海魚(H.Org)、エンジニアを務め、プライベートスタジオを提供した笹倉慎介(B.Cho) という、普段からセッションを重ねてきたミュージシャンたちと全編を録音した。ハモンドオルガンやスチールギターの音色が小気味いい『おおきなものに』、アコーディオンが異国の哀愁を誘う『冬の朝のホーボー』、ダイナミクスに包まれるバンド・バージョン『ギターの音が街に響けば』など、円熟のバンド・サウンドがシネマティックな7つの景色をくっきりと映し出していく。ラストは、リアルな眼差しで時代の混沌を歌った『君だけにわかる言葉』。セッションという音の会話、その妙を存分に味わいながら、淡々と、日常から汲んだ詩、誠実な声に耳を澄ませ、噛み締めたくなる一枚。(前田亜礼)
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