現実になった限界の先、
“歓声の中の奇跡”に向かって、
僕らは僕ららしく、行く。

04 Limited Sazabys

取材/文:なかしまさおり

現実になった限界の先、<br>“歓声の中の奇跡”に向かって、<br>僕らは僕ららしく、行く。

高らかに響くシンバルの3カウント。コロナ禍前後に抱えた日々の、苦悩と葛藤を一気に蹴散らすような始まりの合図。あの日、あの時、あの場所へ──戻れないなら、その先へ。
これまで彼らが耕し撒いた、色とりどりの種(しゅ)の結実。前作『SOIL』以来、約4年ぶり。フル・アルバムとしては4枚目となる最新アルバム『Harvest』に込めた想いを04 Limited SazabysのGEN(Vo,Ba)に訊いた。


──2020年に配信されたドキュメンタリー番組”Terminal”の中でも描かれていましたが、もともとGENさんの突発性難聴の治療もあって、その年のYON FESが終わったら一時活動を休止することが決まっていたんですよね?

04 Limited Sazabys Documentary “Terminal” SPOT(2020年)

──ただ、それがコロナ禍となり、全世界の活動が休止になって。皆さんたちとしても、いろんな苦悩や葛藤があったにもかかわらず、そのことをポジティヴに捉えて、YON EXPOの開催だったり、ユニークなリリース音源の届け方だったりを企画されていたのが印象的でした。

「Yon Expressメンバー宅配サービス!密着ドキュメント!前編」(2021年)

GEN:ありがとうございます。ろくにアルバムも出してないのに、そういった話題性だけで、なんとか食い繋いでいたという(笑)。でも、やるからには楽しませたいし、そのためには何をやったら面白いかな?ということだけは常に考えていますね。


──そんな期間を経て、リリースされた今回のアルバムですが、2019年以降にリリースした5thシングル『SEED』、配信限定シングル『Jumper』、6thシングル『fade / Just』からのナンバー含む全14曲(CDはボーナス・トラック含む全15曲)が収録されています。フル・アルバムとしては4年ぶりということで、制作にあたっては、どのような気持ちで臨まれましたか?


GEN:やっぱり、コロナ禍でライヴができない時も、いちばんに支えてくれていたのはファンの方々でした。なので、そういうファンの方々、僕らのことを待ってくれている人たちがちゃんと喜んでくれる楽曲、作品を作りたいなというのはありました。ただ、それ以外はわりと衝動的に…たしか4月のYON FESが終わってからなので、5〜6月?で一気に作って、録っていったものがほとんどなので。逆に、”勢いだけで作っちゃったけど、大丈夫かな?”という不安もありました。


──でも、そういう曲の持つ“鮮度の高さ”が、アルバム全体の勢いだったり、発想や構成におけるユニークさだったりに繋がってますよね。とくにド頭『Every』から7曲目『Jumper』辺りまでの前半部分は、息つく間も無く駆け抜けていく、フォーリミ王道の疾走感にあふれてますし、後半部分にあるポップで甘い感じとか、遊び心に満ちた一面…表情は違えど、どこをとっても“フォーリミらしい”そんなアルバムになっているなぁと感じました。

04th Full Album “Harvest” trailer(2022年)

GEN:ありがとうございます。最近は“イントロが要らない”“ギターソロが要らない”、そんなサブスク的な音楽の聴き方をしている人が、めちゃくちゃ多くて。作り手側もなんとなく、それに合わせて最初から“TikTok映え”?みたいなものを狙って作る…って人も多いっぽいんですけど。僕らはそれができるほど器用じゃないし、世の中四方八方に広げたい(万人の気持ちを)刺したいというよりは、わりとストレートに、“僕らは僕ららしくあることが正解だ”って感じで。(フォーリミ)“節(ぶし)”全開でやらせてもらいました。


──いやもう最高だと思います。それこそ、『Every』には<観戦同志 行こうぜ><歓声上げて 行こうぜ>というフレーズもあって。今はまだ叶わないライヴの景色だからこそ、そこをファンに届けたいという、みなさんの熱い想いが、めちゃくちゃ伝わってきます。


GEN:やっぱり僕らは、“ライヴハウスのものすごい熱狂”ってやつを何度も体験してますし、他のものでは替えが効かない、もう抜け出すことができない依存症みたいなものだと思うんですよ。もちろん、それはお客さんにとってもきっと同じだろうし、そこを何としてでも取り戻したい。でも、ちょっとずつ徐々にしか進めないから、その“もどかしさ”も含めて歌ってる感じはあります。ただ、ツアーを回る頃には、声も出せるようになってるかなぁという希望的観測も込めて、一緒に歌えるパートを作ってみたり、 “歓声”って言葉を(歌詞に)入れてみたりはしました。


──コロナ禍を経て、歌詞における言葉選びも変わってきたりしたんでしょうか?


GEN:メジャーに行ってからは、多くの人に刺さるようなメッセージ性のあるものを書こうとしていた時期があって、真っ当なことを言おうとしてる自分がいたりもしたんですけど、今回に関してはわりと昔っぽい作り方をしているんじゃないかなと思いますね。語感をリズムとして遊べた曲が多いというか…聴いた時に、その聴こえてくる単語だけでイメージしてもらえたらいいかなというニュアンスで作った曲も多いですね。


──フォーリミの曲っていつも、耳で聴いて楽しいのはもちろんですが、目で(歌詞を)確認しながら聴くと、思いもよらない“真意”に気づいたりして、いろんな楽しみ方ができますよね。今作でも『Finder』とか『Galapagos II』とか、攻めてますよね。

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GEN:そうなんです(笑)。(歌詞見て)“あ!こっちの字だったんだ?!”みたいこともありますしね。


──この『Galapagos II』は前作『SOIL』収録の『Galapagos』の続編と考えていいんでしょうか?前回とはまた違った手法の、独特のコラージュ感があってめちゃくちゃユニークな曲になってます。こうした一連のアイディアは一体、誰発信で始まったものなんですか?

『Galapagos』MV(2018年)
『Galapagos Ⅱ』MV(2022年)

GEN:前回、声を入れたりして、ふざけたいって言ったのは僕ですかね。当時、社会とかに対して思ってることがあるけど言えない、でも、それをポップな感じで言えたらいいなということで、ああいうセリフとか、後ろで喋ってる声とかに、いろんな不平不満を乗せました。でも、もともと社会情勢とかに関しては、あんまり(曲の中では)発信したくないタイプなんです。でも、やっぱりコロナとかもあったし、『Galapagos II』という形なら、若干突っ込んだ発言もしていいのかなと。なので、前回からの関連性も含めて楽しんでもらえたらなと思います。


──今後もシリーズ化していく感じなんでしょうか?


GEN:いや〜、もう“II”で(終わりで)いいんじゃないですかね。映画とかでも、大体、“2”がいちばんおもしろくて、“3”以降、尻すぼみになることが多いので(笑)。まぁ、そのうちまた“Galapagos”でしか言えないようなことがあったらやるかもしれないですけどね。


──しかし、フォーリミのいいところは、こうした曲の合間にポーンと『Honey』みたいな曲を放り込んでくるところで。ファンの心をどこまでもくすぐりますよね。個人的には『fade』とか『kiki』のポジションなんかもエモくていなぁと思うんですけど、今回の構成については?


GEN:アルバムは毎回、バランスで考えてるんですけど、今回は、僕らが持ってるメロディック的な速い部分だったり、まっすぐなギターロックっぽい部分、あと、ちょっと重いラウドっぽいアプローチとか、キュートめなパワーポップっぽいもの…そういう持ってる顔は全部見せよう!というところはありましたね。なので、曲順については結構、悩んでました。とくに、9曲目『Cycle』に関しては、そもそも、このアルバムに入れるかどうかでみんな迷ってたんですけど、最終的には僕が“どうしても入れたい!”とゴネて説得しました。というのも、実は他に入れようとしていた曲が1曲あって、録ったんですけど、いわゆる、バンドマンが好きそうな渋めのオルタナっぽい曲だったんですよ。もちろん、カッコいいし、アルバムなんで、そういう曲があってもいいかなとは思ったんですけど、『Cycle』を入れた方が全体の印象がポップになるし、コロナ前に書いた歌詞なんですけど、1周、2周して、今、欲しいパーツがある、というか。この曲があると(アルバムの)ピースが揃う気がしたんですよね。

『Cycle』LIVE(YON EXPO @2019.9.29 さいたまスーパーアリーナ)
アニメ×パラスポーツ「アニ×パラ」第7弾“パラサイクリング”テーマ曲(2019年)

──なるほど。私はてっきり、このアルバムを前半7曲、後半7曲というバランスで分けた際に、2曲目の『Keep going』とちょうど、(タイアップでも)自転車競技で共通してるし、対になるポジションとしてふさわしいからなのかなと思っていました。でも、確かに今、GENさんがおっしゃったように、歌詞の意味的にも、すごく“今”このアルバムにふさわしい曲になっていますね。

『Keep going』MV(2022年)
TVアニメシリーズ第5期「弱虫ペダル LIMIT BREAK」オープニング・テーマ

GEN:僕、この曲すごい好きなんですよね。もちろんライヴでもやっているんですけど、まだまだ育て甲斐があるというか。今度のツアーにも連れて行きたいし、今後もずっとやっていきたいなと思う曲なんですよね。それに、今回のアルバム『Harvest』っていうタイトルなんですけど、僕の中では“循環”みたいなものもテーマにしてて。この“Cycle”っていう言葉と、歌詞がすごくしっくりきたんですよね。


──確かに。<ちゃんと 撒いた種 芽吹いたね>って歌ってますもんね。つまり、前作『SOIL』(土壌)、シングル『SEED』(種)、今作『Harvest』(収穫)というタイトルのシークエンスだけではなくて、ちゃんと(『SEED』収録曲であった)『Cycle』の“循環”があって“今”に還ってきた、という?


GEN:そうですね。この、なんともいえない“芳醇な感じ”がいいなと思って。だから、みんなにとっても大事な曲になってほしいですね。


──あと、構成で言うと、実はこのアルバムって13曲目の『Harvest』で終わるという手もあったんじゃないのかなと。でも、あえて最後に『Just』を持ってきた。


GEN:そうなんですよ!そこは結構、悩みました。

『Just』MV(2021年)

──やっぱり、そうなんですね。でも、この終わり方こそフォーリミらしくて、めちゃくちゃイイなと思いました。


GEN:ありがとうございます。悩んだ甲斐がありました。最初は『Just』を4曲目ぐらいにしてもいいんじゃないかっていう案もあったんですよね。でも、やっぱり、この歌詞が一番、腑に落ちるということと、(アルバム全体を)ループして聴いて、1曲目の『Every』に戻る時、(『Harvest』と『Just』)どっちがしっくりくるかなと考えたら『Just』だったんですよね。特に、この<歓声の中の奇跡なら カレンダーの中で待っていて>っていうフレーズが気に入っているんですけど、そのカレンダーの日付は(アルバム・リリース日の)10月12日なのかもしれないし、ツアーに来てくれる人にとっては、ライヴに行く日なのかもしれないっていう、それぞれの人にとっての希望もちゃんと込めれているんじゃないのかなと。


──ちなみにCDだと、この後にボーナス・トラックとして『F.A.L』(エフ・エー・エル)が入っています。


GEN:これはCD限定のRYU-TA(Gt,Cho)がヴォーカルの曲ですね。RYU-TAはX JAPANが大好きなのもあって、こういう曲を作って、CD限定で入れて、MVを作ろうっていう企画から始まりました。でも、言ってしまえば“遊び”ではあるんですけど、結構、僕が真剣に取り組んでたんで、メンバーからは「GEN、これに力入れすぎじゃない?」って言われるくらいで。仮歌も僕が作ったんですけど、ギャグなのに、なんか普通にカッコ良くなってたんで、RYU-TAにはクセ全開の歌い方で歌ってもらって(笑)。すごく面白い曲になりましたね。
※『F.A.L』のMVは、初回盤(Blu-ray / DVD)の特典として付属


──そんなアルバムを引っさげてのツアー「Harvest tour」は10月18日よりスタート。年内23公演が対バンシリーズで、年明け1月16日以降の13公演がワンマンシリーズとなっています。対バンに関しては一時、GENさんのツイートに対するリプライが、全国各地のバンドから多数寄せられたことも話題になりました。


GEN:はい。ツイッターで…別に今回、対バン相手を募集したわけじゃないんですけど(笑)、いろんな連絡をいろんなバンドから頂いて、単純に嬉しかったですね。
コロナを受けて、いろんな人たちがバンドで夢を見れなくなってるような気がして。この後、どんどんバンドがいなくなって、どんどん僕らが好きだったライヴハウスがなくなってしまうんじゃないかって思ってた時もあったんですけど。僕らの知らないところで、新しいバンドはたくさん生まれてたんだなと。しかも、そのバンドが僕たちだったり、僕たちの周りの世代のバンドに影響されてるんだなというのも分かって、すごく嬉しくなりましたね。僕はずっと、誰かがバンドをやりたくなるような存在のバンドになりたいと思っていたので、その夢みたいなものも、ある意味叶ってたんだなって。


──そこも含めて「撒いてきた種が芽吹いてる」って感じですよね。


GEN:ですね。そうやって新しい芽がどんどん出てくることで、バンドシーンは続いていくし、僕らもずっとバンドをやり続けられると思うので、楽しみですね。


──今回発表された対バン相手に関しては、どういうところをポイントに選んでいきましたか?


GEN:シンプルにピンときたってことですね。あとは、レコード会社が決まってたり事務所が決まってたりとかではない“自力でやってる”ようなアーティスト。やっぱり自力でやってるバンドの、“1発のライヴで掴んでやるぞ!”って気持ちは、すごく強いと思うので、そういう若いバンドの野心とか、根拠のない自信、パッションに触れたいなと思ってます。特に今回は、ほとんどのバンドが“初めまして”なんですよ。だから、ホントにどんな感じになるのか想像できないし、“やべえな!”って思うライヴがたくさん見られるんじゃないかと楽しみにしています。


──最初の方で「希望的観測も込めて一緒に歌えるパートを作ってみた」っておっしゃっていましたが、今回のツアー中に、少しでも叶えられるといいですね。


GEN:そうですね。今、ほんの少しずつですけど、ハコやイベントによっては声出しオッケーのガイドラインでやっているところもあると聞きました。もちろん、ライヴハウスごとにいろんな考え方があると思うし、地域によっても差があったりはすると思いますので、その辺りは僕ら自身も勉強しながら、まずは“僕らのライヴに来てくれるお客さんが今、どう思っているんだろう?”ということを一番の目安に、やっていけたらなとは思ってます。


──では最後に、ライヴを心待ちにしている九州のファンの皆さんにメッセージをお願いします。


GEN:4年も待たせてしまったのに、みんな忘れずに待ってくれてただけで嬉しいです。特に、福岡に来る頃にはもうワンマン・シリーズの終盤、セミ・ファイナルになっているので、きっと、この新しい曲たちの使い方、この曲たちへの理解度もずっと増してると思います。繋ぎ、曲振り…きっと仕上がった状態で迎えられると思うし、このアルバムを音源で聴く以上の“輝き”を放てるんじゃないかと思うので、ぜひ、現場でまた再会しましょう!!


──ありがとうございました。

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RELEASE

Harvest

Album

2022年10月12日発売
日本コロムビア

通常盤 / 初回盤 収録曲
1.Every
2.Keep going
3.Glowing
4.fade
5.Finder
6.Predator
7.Jumper
8.Honey
9.Cycle
10.hug
11.Galapagos II
12.kiki
13.Harvest
14.Just
15.F.A.L(Bonus track)※CDのみ収録

初回盤DVD / Blu-ray収録
1.YON FES 2022 Live & Documentary
2.Harvest 完成記念慰安旅行? 〜大収穫!?キャンプ編〜
3.「F.A.L」MUSIC VIDEO(Bonus track)

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LIVE INFORMATION

04 Limited Sazabys
「Harvest tour 2022」

2022年12月1日(木)
鹿児島CAPARVOホール
【SOLD OUT】
ゲスト:ネクライトーキー
2022年12月2日(金)
熊本B.9 V1
【SOLD OUT】
ゲスト:ネクライトーキー
2022年12月4日(日)
長崎 DRUM Be-7
【SOLD OUT】
ゲスト:ジ・エンプティ

先行あり

04 Limited Sazabys
「Harvest tour 2023 one man series」

2023年2月8日(水)
Zepp Fukuoka

PROFILE

04 Limited Sazabys

GEN(Vo,Ba)、HIROKAZ(Gt)、RYU-TA(Gt,Cho)、KOUHEI(Dr,Cho)。2008年、愛知県名古屋市にて結成。2015年4月に1stフルアルバム『CAVU』にてメジャー・デビュー。2017年2月には初の日本武道館公演を、2019年9月には、さいたまスーパーアリーナで単独公演「YON EXPO」を開催。2016年4月からスタートさせた地元・愛知県“愛・地球博記念公園”(通称・モリコロパーク)での主催フェス「YON FES」は、コロナ禍中の2年を除き、歴年開催。出演するバンドのラインナップも含め、毎年大きな話題を呼んでいる。