つばきファクトリーでの活動を経て、ソロ・デビューを果たし約2年半。小片リサが2ndシングル『映画の趣味が合うだけ / ちいさな世界』をリリース。同世代の女性が抱く恋心を等身大の目線で歌い上げるシネマティックな展開が魅力の『映画の趣味が合うだけ』、異国的な旋律で内的世界へと誘う異色作『ちいさな世界』、2作品のコントラストからソロになって深めてきた音楽性の幅広さ、小片リサという個性の確立が感じとれる。多種多彩な楽曲を昇華し、2024年へ向けて輝きが増す彼女の活躍に注目したい。

──2ndシングル『映画の趣味が合うだけ』のリリース日は、さっそくオリコンデイリーチャートで2位を獲得されました。各地でリリースミニライヴを開催されていますが、福岡での反応はいかがですか？

小片：本作で個人としては初めて全国を回ってイベントをさせていただいて、今回は例えば北海道や福岡など、なかなか普段のライヴやコンサートで行かせていただく機会の少ない場所に来られました。ようやく会えた、というような方々も結構多くて、すごく嬉しく感じています。今回はMCなど生で皆さんとお話できるタイミングで「こういう風にこう曲を作って…」という過程を知っていただけるように意識していて、すごくいいリリースイベントが実現できています。福岡に来たのは今年2回目。テンションを高く、熱を持って盛り上がってくださる方が多い印象です！

──最初に楽曲を受け取られてから解釈していくまでのプロセスを聞かせてください。

小片：曲をいただいた時は、まず何もわからない状態なのでインスピレーションを大事に、歌詞を見ずにどんな感じの歌なんだろうという雰囲気を確かめるところから始めていきます。そこから歌詞カードを見たり、仮歌を外してインストだけで聴いてみたり、細部まで分析していく感じです。『映画の趣味が合うだけ』という曲は、歌詞を読むだけで景色が思い浮かべられるようなストーリー性のある楽曲だと思いました。ですから、その歌詞の表現に寄り添えたら…という気持ちで、歌のピッチを正確に合わせるというより、台詞のような感覚で流れるように展開を表現していくことをイメージしました。

──出だしから「最近若者が恋しない ってため息のメディア」というフレーズが印象的ですが、でも歌の主人公には気になる彼がいて、共通点は映画だけ。どうすれば？という気持ちをわかってほしい切ない女心から、現代の若者のドライに見えて、そうでもないリアルな恋愛観も見えてくるような楽曲です。感情移入や共感できる部分は多かったですか？

小片：グループにいた時代から、私の声はアンニュイというか落ち着いた楽曲が似合うと言われることが多かったんです。それと、自分自身もそうなんですけど、ストレートに気持ちを伝えられないところがあるんですね。そこは若者世代の人たちにも寄り添えるような、気持ちを表現できる歌声なのかなと分析したりしました。

例えば、この楽曲は、その最初の1行があるから、その後に続く「強気と弱気」が同居してるみたいな恋の苦しさが伝わるのかなと思うんです。割と切ない中にもちょっと強がってる部分を出したいと思って、その感じもたぶん今の若者世代に馴染むのかなって思いながら歌っています。

──このふたりの距離感だったり、どんなジャンルの映画を観に行ったのかとか、いろいろと想像がふくらむ楽曲ですね。

小片：映画の趣味が合うだけっていうことは、おそらくそうじゃない何かがある、というような裏をちょっと読んでみてもらえたら。実際、趣味が合うだけで、2人で遊びに行くことってなかなかないしリアルな部分だと思うので、そこで女の子が気持ちをどういう風に察してほしいのかっていうのを読み取ってほしいというか。男女で感じ方が違うから理解しづらいとは思うんですけど、女の子の苦しんでる様子を伝えられたらとすごく思ったので、歌詞に書いていない、見えない部分まで読み取ってもらえたらなって思います。

──『ちいさな世界』は、1stシングル『どっち』の収録曲『Kitty』のように大胆で異色の楽曲ですね。小片さんの異なる魅力を発見できました。

小片：対極というか、逆の位置にある楽曲だなって思います。『映画の趣味が合うだけ』は、お話したように、すごく景色が想像しやすい楽曲。でも『ちいさな世界』は、最初「とおい国で また悲劇が起きたらしい」という歌詞から、次に繋がって「一昨日 消えたあの子の話は もう誰もしていない」って全然別次元の話じゃないですか。その2行だけでも、大小まったく違う出来事への気持ちの表現がどういう風にできるのか。最初は全然わからなくて、「すごく難しいです」っていうところから始まりました。

そうやってレコーディングしていく中で納得のいかなかった部分について、今回は思いきってディレクターさんに伝えてみたんです。それをきっかけに意見交換できるようになって、アレンジとか少しずつ変わっていきました。そのうちに、メロディーが盛り上がる熱い楽曲だからこそ、歌詞は全体的にもっと淡々とストレートに伝えたほうがいいなって思って、そこに寄り添って歌詞を馴染ませていきました。自分の色と対比するような曲を作っていただけているのがすごく嬉しくて、個人的には「挑戦」と「自分らしさ」という対比が出せているのがいいなと感じています。

──そういう意味で、アディショナル・トラックの収録曲3曲もまた、それぞれに対比が楽しめる楽曲揃いですね。

小片：今回自分でやってみたいと思って選んだ楽曲もありますし、推薦いただいた楽曲もあるんですけど、 それも1曲ずつ、自分だけじゃなく作り手の皆さんと共通認識を持って、意見を取り入れながら、多彩な楽曲をつくっていけました。

『裸の“Mew”』は、メロディーがすごく綺麗でしっとりとした楽曲です。歌詞カードを見ていただくと、「恋」っていう言葉は、失恋という漢字にルビが振ってあったりするんですね。なので、聴くだけじゃ伝わりにくい仕掛け的な部分も実はいっぱいあります。自分が失敗してしまった恋についての気持ちを温かいメロディーで歌っているんですが、いろんな解釈ができる楽曲なので、想像しながら楽しんでもらいたいです。

『虹を超える』は、みんなで盛り上がれる楽曲を歌えたらいいなって、お願いして歌わせてもらった楽曲です。どちらかというと挑戦に近い方の楽曲で、ライヴ向きだなとも思います。歌詞の内容は背中を押すというより、一緒に走ってくれるような感じ。盛り上がりつつ、歌詞もじっくりと聴いていただきたいです。

『Happyを止めないで』はメロディーもなかなかない雰囲気なので、歌ってみてすごく楽しかったです。「Happyを止めないで」っていうワンフレーズを繰り返し淡々と歌う、一見簡単に見える歌詞なんですけど、2番のAメロの部分は割と重めで、『ちいさな世界』みたいに世界の大きな問題もあれば、普段の日常でもいろんな悲しい出来事があったりするわけで、でも、サビではみんなの抱えるそんな気持ちを吹き飛ばせるようなキャッチーな楽曲です。ぜひ、たくさん聴いていただいて覚えてもらえたらなと思ってます。

──1曲1曲多様な楽曲が増えていって、2024年が始まります。どんな一年にしたいですか。

小片：ソロで歌うことになって思っていたのが、自分の色を出しつつ、だけどもっといろんなことに挑戦したいということだったんです。それを少しずつ叶えながら、これからもっと自分の強みを生かせるような楽曲をつくっていきたいですね。それと、ライヴで盛り上がる楽曲もたくさんあったらいいなと思っていて、その土地土地に馴染めるようないろんなジャンルの楽曲も歌いたいです。今、オリジナルの楽曲は全部で10曲なので、ライヴ1本が全部、自分の楽曲で成立するぐらい、新しい曲にもっともっと挑んでいきます！

──挑戦といえば、松原健之さんとのフューチャリング曲『風のブーケ』（2021年）では、ミュージカルの素質も感じられました。舞台出演などにも関心はありますか？

小片：ありがとうございます。メインはもちろん歌手が軸ですが、他の表現活動にもすごく興味があります。それこそ小さい頃、ダンススクールに通っていた時も、舞台好きな母に連れられて頻繁にミュージカルを観に行ってたんですよ。「ステージに立ちたい」って最初に思ったきっかけがミュージカルだったので、いつかそういうお仕事に挑戦させてもらえたら嬉しく思います。表現することもそうですし、いろんなメディアで顔を覚えてもらえるように、できることには何でも挑戦していきたいです。

──最後に、『映画の趣味が合うだけ』のMVで主人公をキュートに演じていらっしゃいますが、映画にちなんで、好きな映画作品を1本挙げるとしたら何ですか？

小片：私、レオナルド・ディカプリオの大ファンなんです。『タイタニック』とか有名な作品がありますけど、挙げるならディカプリオが演じているバージョンの『ロミオ＆ジュリエット』です。作品の内容は誰しも知っているその内容なんですけど、表情や表現の美しさだったりが際立つ作品だなと思います。映像的には若干暗めなシーンも多かったりするんですけど、それがほんとに似合うんですね。携帯でもたまに振り返って好きなシーンを見たりするぐらい、いつでも何度でも繰り返し観たくなるお気に入りです。

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