アルバム『火星』は全部シングルA面のよう。
今回のツアーでは昭和歌謡も飛び出す!

クレイジーケンバンド

取材/文:荒木英喜

アルバム『火星』は全部シングルA面のよう。<br>今回のツアーでは昭和歌謡も飛び出す!

この季節の恒例となったクレイジーケンバンドのアルバムリリース。9月18日にリリースされた24枚目のアルバム『火星』は、彼らにしては珍しく約47分という短めな収録時間となっている。だが、全16曲にはこれまでになかった感覚の曲を含め、CKBの魅力が凝縮されている。今作、さらには9月末からスタートする全国ツアーについて、横山剣に話を聞いた。


──9月18日にニューアルバム『火星』がリリースされました。前作は『世界』でしたが、ついに宇宙に飛び出したと思いました。


横山:アルバムやツアーのタイトルを決めなきゃいけない頃に、ちょうどBEGINの(島袋)優さんの『太平洋音頭』という曲に参加しました。そのMVを横浜の沖縄タウンで撮影したんですよ。その撮影が終わって、近くの焼肉屋の「火星」に行ったら、そこがもう閉店していてショックで。京浜工業地帯の夜は近未来感やスペイシー感があるんです。でもそこに「火星」っていう名前の店があったのが不思議だし、焼肉屋さんなのになんで?って名前の理由を聞こうと思っていたのになくっちゃって……。店の前を通った人の目を引くネオンがあったんですよ。タイトルは毎回迷う中、昨年は『世界』、その前は喫茶店の『樹影』、今回は焼肉屋さん。お店シリーズは、『イタリアンガーデン』、『フライングソーサー』、『樹影』に続いて4回目ですね(笑)。

島袋優(BEGIN)「太平洋音頭」MV

──今作は前半にアッパーな曲が多いせいか、カラッとした空気感ですね。


横山:最近は夏が長くなってて、9月でも暑い。夏に発表したい曲が夏に浮かぶので、どうしてもこうなりますね。それにサブスクの時代になって、作ったらすぐにリリースできる。M3『ハマのビート』やM5『Percolation』などがそうですね。『Percolation』は、クラシックカーのイベントで、トラブルがあったことを元にそれを擬人化しました。車の温度計とか油温計とかを見てハラハラする状況を、うまく行くかわからない恋愛のハラハラドキドキや恋の終わりと始まりの情緒不安定な状況に見立てて、それと今の地球にピンチが迫っていることなどについてもさりげなく歌っています。

クレイジーケンバンド / Percolation (Lyric Video)

──『Percolation』は、そんなに深い曲だったんですね。M8『おお!マイガール』は、以前から頭の中で鳴っていた音をベースにしたということですが。


横山:『おお!マイガール』はデモ楽曲集「自宅録音シリーズ」に入っていて、CKBのアルバムを作る度に入れようと思ってもやめていた曲です。曲調的に照れ臭さがあったので。以前は恥ずかしかったけど、今は図々しくなって、恥ずかしくてもいいじゃないかと(笑)。今回、やっと入りました。それとパーク君(gurasanpark)と一緒にやるようになって、いろんな意見を受け入れるようになりました。古い曲なりのトレンドを彼と共有できますし。


──ラストを飾るM16『Sha na na na na』は、これまでのCKBの曲とはずいぶん雰囲気が違いますが。


横山:以前の僕では絶対に浮かばない曲でしたね。この曲はある程度コードを入れたトラックをパーク君が事前に作ってくれました。それによって、僕のメロディが押し出されてきた。こうした曲作りも定番のひとつではあるんですが、トラック先行にはそうした魅力がありますね。自分でトラックを作ると好きなコードばかりになるんですが、パーク君が作ってくれたことでこれまでになかったメロディが浮かんだ。最後の大団円は、これまでこんな発想自体がなかった。コーラスの前、“一緒に”って自然と言いたくなったんですよ。レコーディングでもライヴのような気分で言っちゃいました。


──今回は約47分とCKBのアルバムとしてはかなり短いですね。


横山:かなり我慢した(笑)。それ(短くまとめること)も今回の目標でした。いつも60分以上なので、短い中でバランスを取るのが大変でした。曲数が多ければ箸休めになる曲などグラデーションをつけられますが、今回は全部がシングルA面のような気分だったので疲れましたね(笑)。曲数を少なくすれば、制作時間を短縮できるかと思いきや、1曲に対する作業が長くなりました。特にM4『Rainbow Drive』は初期の初期に作り始めたのに、こねくり回しすぎて一瞬やめようかと思いましたが(笑)、やっぱりビートが気持ちいいので、時間はかかりましたが完成してよかったです。

クレイジーケンバンド / Rainbow Drive(Lyric Video)

──9月末から“⽕星ツアー”がスタートして、福岡は10月27日(日)、鹿児島でも11月25日(月)に決まっています。


横山:福岡国際会議場はやりやすいですね。2階席、3階席がなく、フロアがつながっているせいか、曲がみんなに届いている感覚があります。それでこっちも興奮しますね。フロアからのみなさんの声を聞いて「これだな。これが欲しくてライヴをやっているんだ」と感じています。

クレイジーケンバンド / ハマのビート(MUSIC VIDEO)

──今ツアーでの特別な演出などはありますか?


横山:照明に今回は特化しています。あ、音響が一番ですよ。次に照明に凝っています。新作から11曲くらい練習して、実際には7〜8曲くらいやる予定です。それと日替わり曲を何曲かやりますし、今のメンバーがやっていない曲などをディグしてやろうかなと。デッドストックですね。それと昭和歌謡を3曲。ヴォーカルが3人いるので、それぞれの歌いたい曲をやります。何をやるかはお楽しみに。ある年代の人たちしかわからないかもしれませんが、ビビビッとくるような曲を。ありえない選曲かもしれません(笑)。今、80年代の曲が盛り上がっていますが、70年代、その世界観もぜひ楽しんでほしいですね。

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LIVE INFORMATION

クレイジーケンバンド
⽕星ツアー 2024-2025 Presented by TATSUYA BUSSAN

2024年10月27日(日)
福岡国際会議場メインホール
2024年11月25日(月)
鹿児島CAPARVO HALL

PROFILE

クレイジーケンバンド

1997年、リーダーの横山剣を中心に結成。翌年にアルバム『PUNCH! PUNCH! PUNCH!』でデビュー。ファンク、ジャズ、ロック、ボサノバ、さらには歌謡曲や演歌まで横山が取り込んだ音楽をCKB流のサウンドへと昇華させて表現するさまは、東洋一のサウンドマシーンとよばれる。そのサウンドにのる、喜怒哀楽や愛憎、人に知られたくない感情など人間臭さにあふれる歌詞で聴く者を魅了。その力が最も発揮されるのがライヴ。新たな魅力を加えたCKBが昭和歌謡も含めてどんなパフォーマンスを見せるのか?乞うご期待!