変わらぬ衝動と憧憬、揺るぎない現在
鮮やかに映して月が昇る

04 Limited Sazabys

取材/文:山崎聡美

変わらぬ衝動と憧憬、揺るぎない現在<br> 鮮やかに映して月が昇る

新作としては約2年半ぶり、初のカヴァー曲を含む全4曲入りのEP盤『MOON』をリリースした04 Limited Sazabys(以下、フォーリミ)。純然たるバンド感と天性のハイトーンヴォーカルをもって、現在地でのアティテュード、そしてそこに至る憧憬や衝動をもコンパイルした堂々の一枚だ。論より証拠、このインタビュー後にチケット発売となった《04》並びのツアー福岡公演は見事に即完。その勢い、彼らが生み出すライヴハウスの熱狂は、メジャーデビューから10年、結成から17年を経てもリスナー一人一人の心を衝き動かしているのだ。


──昨日はフェス(『FUKUOKA MUSIC FES.』 みずほPayPayドーム福岡)でドームのステージに立たれたんですよね。新曲も披露されたんですか?


GEN:いえ、昨日はやりませんでした。ツアーにとっておこうと思って(笑)。懐かしい曲を多めにやったんですけど、わりといろいろなジャンルの出演者がいらっしゃったので、あんまり“ぶっ壊す”感じのセットリストにはしなかったですね(笑)。モッシュやダイブが禁止だったというのもあって、ゴリゴリすぎず、バランス良くやりました。


──フォーリミはライヴハウスを原点とするバンドですけど、近年は、昨日のようなドームクラスでの大型イベント、野外での主宰フェス、Zeppクラスの全国ツアーと、アリーナクラスでのライヴを維持されている状況です。そういった活動の中でバンドとしての指針に変化はありますか?


GEN:いや……やっぱり、ライヴハウスシーンにいる感覚っていうのは、変わらず大切にしていると思いますね。僕らは一昨年(日本)武道館でやったり、これまでにもさいたまスーパーアリーナでやったりとかもあるんですけど、ライヴハウスでツアーを廻るっていうのがあくまで基本です。だから、どんどんとにかくデカいところでやりたいっていうのは、正直そんなになくて。やっぱり僕は、ライヴハウスに行くようになって、ライヴハウスに熱気を生んでるバンドに憧れていたので、自分たちもライヴハウスシーンを盛り上げる存在でありたいなというところで……やっぱり今もライヴハウスに片脚、いや、両脚突っ込んでる状態だと思います。


──両脚、ズブズブと(笑)。今作『MOON』にもそんなムードは満ちているように感じました。オリジナルの新作としては約2年半ぶりですが、あらためてバンドとしてのテーマをもって臨んだようなところはあります?


GEN:『Re-Birth』(セルフカヴァー・アルバム/2023年)がアコースティックでチルな作品で、前作『Harvest』(4thアルバム/2022年)も個人的には歌の部分をやれた作品だったので、次の作品はかなりメロディックで、バンドサウンドで、ライヴハウス映えする作品にしようっていうのは決めてて、メンバーともシェアしていましたね。

04 Limited Sazabys「Re-swim」(Official Music Video)

──メロディック、まさにその引力の強さが1曲目『magnet』から放たれていますね。


GEN:ありがとうございます。


──3曲とも、すんなりできたような感じですか。


GEN:そうですね、今回の制作時は行き詰まることもなく、かなり順調にできたかなという感じはしますね。


──制作は、まず曲とサウンドを固めて、歌詞という順序で?


GEN:うん、歌詞は最後ですね。でも今回の『magnet』に関しては、歌メロをつけた段階からけっこう歌詞もついてたかも……。


──あ、メロディーに引き出される形で?


GEN:そうですね。


──なるほど、そうだからこそのサウンド、メロディー、歌が一体となった疾走感。イントロから一転するバンド感の高まり、開け方も快いです。あと、所謂メロコアという表現としては肩の力が抜けたというか非常にしなやかなヴォーカルスタイルであるのも印象的でした。


GEN:あ~、ここ数年の変化として、若手として先輩バンドとやる機会と同じくらい、下の世代のバンドとやる機会が、ライヴでもどんどん増えてきて。気付いたら僕らが“先輩”と言われる立場になってきて。キャリア的にも中堅と呼ばれるようになってきたので、ここ数年ライヴにおいての余裕のようなものを意識しているんです。とにかく一生懸命にやる、気合い入れてやるというよりも、ドンと構えてやる、というのが自分の中のテーマだった。なんていうか、貫禄感?(笑)みたいなものを出したかったんですけど、それが歌にも表れているのかもしれないです。以前はすごく力んでいたんですけど、最近は脱力することを心がけてるから、そう仰っていただけたのかも。

04 Limited Sazabys「magnet」(Official Music Video)

──2曲目『GATE』は、陰影を含んだ流麗なギターサウンドでこちらもフォーリミの得意とするところだと思いますが。


GEN:そうですね、得意だと思います。バンドサウンドとしては僕らの王道なんですけど、歌のフロウ的な音符の乗せ方は、ちょっと新しいのかな、って。いつもの感じだと普通になりすぎちゃうなというところで、サビのメロディーもこの曲に関しては何パターンか作って、これが一番面白いかなと。面白さ、オリジナリティーというか、これは僕らならではかなという部分は、いつも探ってますね。


──初のカヴァー曲も今作の一翼を担っています。JUDY AND MARYの『motto』をセレクトされたのは、フェイバリットだから?


GEN:はい、大好きな曲ですね。当時小学生だったんですけど、CDをレンタルしてカセットテープに入れて、リアルタイムですごく聴いていました。その頃から楽器には興味があってアコースティックギターを弾いてみたりはしていたんですが、ジュディマリはさすがに難しすぎて、手が出せなかったですね(笑)。


──原曲の持つポップさ、カラフルさはストレートに表現されつつ、サビ始まりというある種大胆な展開にもなっていますね。


GEN:いや~、やっぱりギターがかなり特殊なんですよね、JUDY AND MARYは。TAKUYAさんのギターをどう捉えるかっていうところはけっこう悩みました。そのまま真似しても、合ってるようで合ってないというか……そこをどう自分たち流に落とし込むかっていうところをすごく考えました。シンプルにしすぎてもつまらないし、フレーズの独特さも入れたいなって。原曲はイントロからAメロで始まるけど、そのイントロをどうするかってなって、サビから始めるようにアレンジしました(笑)。


──このタイミングでカヴァーというのは、何か理由があったんですか。


GEN:僕は以前からカヴァーをやりたい気持ちはあったんですけど、メンバーがけっこう嫌がってて。やっぱりシンプルにオリジナルで勝負したいというところと……そのカヴァー曲が独り歩きしたら嫌だなというのが強くあったんだと思います。たまにあるじゃないですか、カヴァーした曲が代表曲みたいになるパターン。でも、僕らは自分たちでこれだけやってきたんだから、もうそうなることはないでしょ、と。あと、ここ数年でトリビュート作品に参加することがけっこうありまして。アジカン、モンパチ、スカパラ、Dragon Ash、dustbox……そう、けっこう多いんですよ(笑)。だから上手にもなったし、それで自分たちなりに好いカヴァーができたなと思ってセットリストに組み込むと、意外と僕らのお客さんでも(トリビュート作品の音源を)ちゃんと聴いてくれていない、浸透していないってことがわかって(笑)。で、自分たちの作品に直接カヴァーを入れたいな、と。


──フォーリミの曲であるような馴染みっぷりもあって、3曲+カヴァーではなく4曲入りの4曲目という感じがします。で、こういったフィジカルなEPに《MOON》というとても情緒的なタイトルが付けられているのはちょっと驚きでした。


GEN:EPは毎回、文字のバランス的になんとなくシンメトリーなものにしようとしてて。そういう意味で字面がいいなっていうところから、今回は《MOON》にしました。そのうえで、『magnet』の歌詞とかも、死別した人を星に見立てて、思いを馳せて、その存在を感じる楽曲なので、ぴったりだなと思って。


──そうでしたか。『Kick it』で歌われている《life goes on》というフレーズから、満ち欠けを繰り返して続いていく人生の投影と解釈していました。


GEN:なんかこう、自分の内省的なことを歌うときに僕は《月》が出てくることが多いんです。僕自身はわりと昔からクラスのお調子者みたいなタイプで、所謂“陽キャ”というか。太陽みたいな存在になりたいっていう思いがずっとある。で、月は、太陽に照らされて見つけられる存在なので、自分自身の内面が映し出されているという考え方もできるなと思って。もうひとつ言うと、『magnet』は、『ぼっち・ざ・ろっく!』に提供する楽曲と並行して作っていた曲で、そのキャラクターの背景にある母親との死別をテーマにしているんです。で、僕自身はここ数年ミュージシャンの友人らとの死別が毎年のようにあって。そういうことが起こるたびに、自分の中でどう着地させるのかみたいなことを考えていて……それを描いている感じもありましたね。


※アニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』に登場する劇中バンド「結束バンド」によるミニアルバム『We will』に収録された『UNITE』。GENが作詞・作曲を手がけた。


──大切な人の死をどう受け入れるかという自問から、自分はどう生きるのかというアティテュードを示していく、ということでしょうか。


GEN:そうですね。年を重ねてきて、そういうところはより切実になっていってると思います。


──そんなスピリッツも携えて、3月からはリリースツアーがスタートします。なんと福岡公演は《04》並びで。


GEN:そうなんです、フォーリミの日です~。福岡大好きなので、狙いましたね(笑)。 ツアーって毎回そうなんですけど、新曲はレコーディングして完成じゃなくて、かわいい子には旅をさせろみたいな感じでいろいろなところに連れ出して、いろいろなところで鳴らして、自分たちも曲への理解が深まっていって、やっと完成するものだと思ってるんです。だから今回はこの4曲を完成させに行くツアーで、福岡のときにはもうかなり仕上がってる状態、音源とは一味も二味も違ったものを聴いてもらえるかなと思います。あと、演出的な部分でもアイデアがあって、普段やらないようなこともやってみようと考えていますので、そこもお楽しみに、という感じですね。

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LIVE INFORMATION

04 Limited Sazabys
「MOON tour 2025」

2025年4月4日(金)
Zepp Fukuoka
SOLD OUT!

PROFILE

04 Limited Sazabys

GEN(Ba,Vo)、HIROKAZ(Gt)、RYU-TA(Gt,Cho)、KOUHEI(Dr,Cho)による4ピース。2008年名古屋にて結成。2015年に1stフルアルバム『CAVU』をリリースしメジャー進出。2016年からは毎年、地元・愛知県の愛・地球博記念公園(モリコロパーク)にて、バンド主宰の野外ロックフェス“YON FES”を開催している。結成10周年を迎えた2018年には東名阪アリーナツアーを敢行し、翌2019年にはさいたまスーパーアリーナで単独公演“YON EXPO”を初開催。さらにバンド結成15周年を迎えた2023年、日本武道館ワンマンライヴを開催。ライヴバンドとしてのポテンシャルを常に高めながら、シングル・EP・アルバム・映像作品と精力的なリリースを続け、ライヴハウスシーンの最前線を邁進中。2025年は1月29日にEP『MOON』をドロップし、3月よりリリースツアー「MOON tour 2025」をスタート。6月21日・22日には恒例の“YON FES 2025”を開催予定。