“正解は自分で決める”
一音必殺、鋭く研ぎ澄ましたポップネスで
Nikoんが切り拓くミライ──前編──

Nikoん

取材/文:山崎聡美

“正解は自分で決める”<br>一音必殺、鋭く研ぎ澄ましたポップネスで<br>Nikoんが切り拓くミライ──前編──

今、その活動から目を離したくない、できるだけ多くのライヴを観たいと、心底願うバンドがいる。ギター・ボーカルのオオスカと、ベース・ボーカルのマナミオーガキによる、Nikoん。結成は2023年だが、それぞれに濃密なバンド人生を追求してきた二人は、ステージにおいて異様なまでの凄味と揺るぎない核をもって、他を圧倒する。オルタナティヴ~ポストロックの感触をもってソウル / R&B~ヒップホップと邂逅し、極めて高い強度のポップネスを開花させる、凄烈なロック。鋭くアジテイトなギターとアグレッシヴかつたおやかなベース、陰影に富み抜群の瞬発力を備えたアンサンブルは焦燥、衝動、情動の一切を込めながらそれら全てに抗うほどの強烈な反骨を秘めている。2024年に発表された1stフルアルバム『public melodies』は、現状サブスクなし、ライヴ会場での販売とデジタルダウンロード販売のみながら、順調にセールスを伸ばしており、オオスカ曰く「ソリッドという言い方はカッコ良すぎる、速くて、強い、みたいな感じの音」は少しずつ、だが確実に、胸を衝くような昂揚を各地で生んでいる。


「RE:place public tour」と題し、7月1日から16日まで、13本に及ぶ九州ツアーを敢行し、8月には関西にて13本、ほか関東でのライヴやイベント出演を含め、ファイナルの8月27日渋谷クラブクアトロ公演まで2か月間で全30公演という灼熱の猛烈ロードを、今まさに走り抜けようとしているNikoん。九州での全行程を終えたばかりの二人に行ったインタビューを、前・後編の2回にわたってお届けする。同ツアーや9月24日にリリースされる2ndアルバム『fragile Report』の話を通じ、Nikoんのバンド感や音楽観、その業がわずかでも伝わって、彼らのライヴへ足を運んでもらえたなら幸いである。




──今日はお時間いただきありがとうございます。まずは九州ツアー全13公演、おつかれさまでした。拝見した2本のライヴが素晴らしく凄まじく、特に昨夜のファイナルは筆舌に尽くせぬものでした。それでほとんど衝動的にインタビューをお願いした次第です。


オオスカマナミオーガキ:あぁ、いや、ありがとうございます。


──そもそもはYouTube等でのライヴ動画を観ていて面白いバンドだなあ、観たいなあと思っていたところに、九州に移住してツアーします情報が入ってきて(笑)。


オオスカ:移住(笑)。まぁ、大人がいいように、面白いように言ってるだけです(笑)。だって、3週間かけて九州廻るなんて、みんなやってることやん、って。


──みんなはやってないですけどね(笑)。


オオスカ:ははははは!同期っていうか、それこそウチの荒屋さん(マネージャー)が制作していたバンドに「突然少年」がいて、彼らなんかは、東京のバンドでしたけど東京にいる時間のほうが少ないくらい、各地へのライヴに行きっ放しで。事務所にも所属せず、現地で日雇いのバイト探してやってたんです、どのライヴもそんなにギャラをもらえるわけじゃないんで。ただ、やりたいからやる、みたいな。そんなふうに、ライヴに呼ばれれば行きたい、出たいっていう思いだけで行ってるバンドも知ってるんで…。


──Nikoんが今回やったようなツアーも特別なことじゃない、という。


オオスカ:うん、まぁ今はどうなんですかね…俺もぺやんぐ(※マナミオーガキの呼称)も、コロナ下になる前の時期にバンドをガッツリやっていて。


マナミオーガキ:うん。


オオスカ:その後もずっとやってますけど、若い時の学びとかメカニズムみたいなのはけっこう大事だったりするじゃないですか。そういうのはやっぱりコロナ前のほうが圧倒的に多いんで。21から22歳ぐらいの時期…その頃はそういう動き方をするバンドがすごく多かったと思う。ツアー廻るんだったらそういうもんちゃう?みたいなイメージはあったし、My Hair is BadとかTHE NINTH APOLLO(レーベル)周りのバンドはそんなふうに見えてたしね。それが、コロナで全員できなくなって、そこから徐々に戻っていく中で、結局、ライヴやツアーはやりたいヤツしかやらなくなった。やらなくてもいいものになった。そこは、良い悪いじゃなくて、変わったなって思います。今は、音源だけ創りたいってバンドもいればライヴだけしてたいバンドもいて。それぞれのピュアさはあっていいと思うし、俺らのやり方が正解とも思わないですしね。


──でも今回のようなツアーやライヴが今Nikoんのやりたいことには違いない?

https://youtu.be/nWz9WBaTqrA?si=ZeBW717yI8opRR4o
Nikoん – さまpake(Live Video at THREE 2025.06.12)

オオスカ:やりたい、っていうか…Nikoんはサブスクをやってないんでね。それでも自分が思っている以上に知ってもらってるなとは思うんですけど…ただ、目の前に数字を並べられて、再生回数はこれぐらいですとか言われても、実感は持てないじゃないですか。でも初めて行った土地でライヴすると、どれくらいのお客さんが来てくれたとか、物販がどれだけ売れたとか、単純にわかりやすいんです。あと、去年カナダツアーをやったんですよ、日本から5バンドくらい連れていくツアーに参加して。俺ら以外はみんなサブスクやってるから、観に来たお客さんは先に彼らの物販を買うんです。事前に聴いてるし、どんなバンドか知ってるから。でも俺らのことは誰も知らない。“誰?”ぐらいの感じだったんだけど、ライヴのあとに音源がすごい売れて。ダイレクトに、良いライヴすれば音源が売れるっていうのを、外国に行って実感して。顔もキャリアも知らない、言葉も通じない中で、単純に、観たものに対してのリアクションをくれてることが、顕著に感じられたんですよね。自分たちのやってきたことが間違ってないって思えた感じもあったかな。


──ライヴがカッコ良ければ盛り上がる、音源買うって、これ以上のわかりやすさはないですよね。そういう感覚を得たから、今回は未開の九州から集中的にやることにしたんですか?


オオスカ:最初から九州って決めてたわけじゃないんですけど、ぺやんぐの地元が鹿児島なんで。それで、荒屋さんの力を借りて。荒屋さんはNikoんのマネージャーだけど事務所の人間じゃなくて業務委託で俺らと活動を共にしてくれているんだけど、各地のライヴハウスに精通してるんです。結果的に、どの場所でも歓迎してくれてる感じになってて…俺はてっきりお客さんなんて全然いないと思ってたんだけど。


──逆に言えば、その状況でNikoんを知ってライヴハウスに足を運んだ人たちの熱量は、その場所を選んでるっていう時点でものすごく高いということでもありますよね。


オオスカ:そうですよね。だから今回、九州でこんなにいるんだなって思いました。


──私は2日のUTEROと16日ファイナルの四次元で観て、どちらのライヴにも違う点でやられたんですが、一番驚いたのはUTEROで最初は様子見していたお客さんたちがどんどん熱を帯びていったこと、で、四次元ではもはや頭からフロアが爆発状態だったことです。


オオスカ:まあまあ、イベント自体がそういう雰囲気を作ってくれてたんですよ。


──だとしても、Nikoんへの期待度、それからNikoんが実際にこのツアーで生んだ昂りは相当に凄かったんだと思いました。お二人は、この16日間で13本というツアーの中でバンドや手応えが変わり続けていくような感覚はなかったですか。


オオスカ:(マナミオーガキに向かって)どうですか?


マナミオーガキ:私は会場とかイベントとか関係なく、自分的に一つ越えないといけないな、みたいなものが、浮き彫りになったタイミングはあって。バンドマンとして、一段上がらないと、ここをこのツアーで越えないと、もう次とかないな、みたいな。


オオスカ:ないんかい(笑)。


──それは、プレイ的なことですか?


マナミオーガキ:わりと…メンタル的な部分ですね。


オオスカ:次のアルバムは彼女が全部歌ってるんで、それもあるんじゃないですかね。フロントですからね、歌ってる瞬間は。


マナミオーガキ:そう…そこをどう越えようか、ああでもない、こうでもない、それ違うんじゃない?みたいなことを繰り返して…ラスト1、2本ぐらいでギリギリ、ちょっと道が開けて。それでライヴ中のお客さんとの感覚、反応というか、そこも自分では変化したと思うところはありました。

https://youtu.be/yYCdDnvnF4s?si=dd7q7GLAUG2xA3xo
Nikoん – ghost _ bend _ step by step(Live Video at 大阪/南堀江 SOCORE FACTORY_2025.8.14)

──“越えないと次はない”というのはかなりの切迫感ですね。


オオスカ:まぁ、めちゃめちゃ言ったんです(笑)。


マナミオーガキ:本当です。もう、めちゃめちゃ(笑)。


──その“めちゃめちゃ”から厳しさが伝わります…。


オオスカ:俺はずっと、前のバンドでもギター・ボーカルやってて、彼女は自分のバンドでここまでメインでボーカルを張る機会はなかったから。…演奏って、こなしちゃうじゃないですか。こなしちゃうっていう言い方も変だけど、弾くフレーズはある程度決まっていて、慣れでできちゃう。でも慣れでやって70点を合格ラインとして、合格ラインのライヴを誰が見たいんだ?っていう。それだったら別に0点でもいいじゃん、って俺は思っちゃう。雑にやればいいとかいう話じゃなくてね。リスナーは(バンドに対して)“コイツラ、どういう人間なんだ?”みたいな部分を知りたいから、ライヴに行くわけじゃないですか。音楽を聴くなら音源とか映像だけでいいわけで。そこと対峙するなら、自分がどうしたいかを考えて、こうしたいと思ったことをもっと表したほうがいいんじゃないの?って。


マナミオーガキ:うん、うん、そうです。


オオスカ:こういうパフォーマンスしろよとかこういうMCしろよとかじゃなくて、まず、自分がどうしたいか考えろと。そこを9月までにやっておかないと、いざ2ndアルバムをリリースして、ぺやんぐの歌唱で9曲入ってる作品のリリースツアーをしても、何もわかんないまま始まって何もわかんないまま終わってしまう。そうなったら勿体ないじゃないですか。どれだけ廻ったとかどれだけ動員が伸びたってこと以前に、ツアーやる意味がない。


マナミオーガキ:(大きく頷いて)うん。


──バンドとして、意味がないということですか。


オオスカ:いや、バンドとしてっていうより、人生?…他の人がどう思ってるかわからないけど、俺は基本的に何をやるにしても、何かをやる時に何か意味がないと嫌なんですよ。これまで、なんとなくでやるということを、選択してこなかったっていうか…。まぁ、これは「言ったほうがいいんじゃないか」って荒屋さんに言われたから話しますけど(笑)…俺の両親は、芸術家だったんです。踊りで、ちゃんと金を稼いでる人たちだったんです、会社もつくって。ただ、もう高齢で80歳近いんで、今27歳の俺が生まれた時には50歳近かったんですよ。それで身体を悪くして働けなくなって、厚生年金とか払ってなかったし貯蓄もなくて、生活保護を受けるしかなかった。で、俺は大学に行かなかったから、当時の自治体としては「(学生ではなくなった)あなたが家主になるから、自分で稼いで両親を養ってくださいね」という方針で。まぁ言ってることに間違いはないですよね。でも、普通にそんなの無理じゃないですか、俺一人の収入で全部賄えよっていうのは。俺も親に対してそこまで頑張れなくて、世帯分離とかいろいろな仕組みを使ってそれから逃げた。その時点で、自分のやりたいことを見つけないと、自分のやることに意味を見いださないと、生きようがなかった。なんとなくで見つかるとか、与えられるなんてことはなかったから。あ、親の愛情とかはもらってますよ(笑)。ただ、やりたいことは自分で探して見つけていかないと…というか、俺自身もそっちのほうが楽しかったんです。元々、お金がある家でもなかったから、金のかからない遊びをするならその遊びを創っていく過程も楽しくないと、浪費するだけじゃ楽しくないんですよ。ダラダラとプチプチ(緩衝材)を潰しててもいつかは飽きる。けど、プチプチを潰すことに意味があったら潰す行為自体がめちゃくちゃ面白くなったりするんです。そこを、今もつい考えちゃう…“これ、意味あんのかな”と。それが良くない場合もあるんですけどね、考えすぎちゃう時もあるんで。それでも、やるんだったら、自分の中に納得した何かが欲しい、意味というか、付加価値というか。今回のツアーも、ライヴ毎にライヴをやった意味がついてきたな、って。考えてたより全然面白いものが、いろいろついてきた…いや、ついてきてもらったっていう感じに近いですね。俺らは今回、各地のイベントに混ぜてもらってるだけなんで。俺らを快く受け入れてくれた13か所があったということですね。


──16日の四次元ではMCで、ツアーでの感慨を思わずというかあふれるような感じで口に出していましたよね。2日のUTEROではほとんど喋らなかったのに。あれは言わずにはいられないような感覚だったんですか。


オオスカ:いや…別に大それた理由もないんですけど、この後九州にはどれくらいの期間戻れないんだっけと考えた時に…観に来てくれた人たちにちゃんと、こういうツアーだったよと報告しときたいところはありました。…まぁやっぱりみんな、期待をしてくれるんですよ。東京から来ててちょっとは名前も知られてるようなバンドだからいいライヴしてくれるだろうとか、自信があるんだろうとか、そういうふうに思ってくれてる向きもあって…でもそんな大それたバンド、人間ではないっていうか…まぁ、自分はちっぽけな人間だよねっていうことが、わかってよかったな、と。だから、ただその話をした、という感じではあったかなぁ。


──好きなものを確かめるための場所としてのライヴハウスの存在の大きさとか、非日常が日常にっていうような話もあったと思うんですけど、それも実感として得たもの。


オオスカ:ああ、そうですね。だって…こんな短い期間でこんなにライヴハウスにいること、ないですからね(笑)。非日常だ、って距離を置こうにも置き切れない。12時間前にいたような場所に、12時間後も同じようにいて、起きてる時間の半分以上はライヴハウスにいた。そういう状況だから、お互いにマインド面での変化は大きかったですね。あと、今回のツアーで特に、ライヴしてる時の感覚として、自分の感情を素直に表現できるってことを感じられた気がして。それは本当にすごいよかったな、って思いました。



➤➤続きは後編へ

SHARE

RELEASE

fragile Report

2nd Album

2025年9月24日発売
cutting edge / MAXIMUM10

1.fragile report
2.bend
3.nai-わ
4.靴
5.dried
6.さまpake
7.とぅ~ばっど
8.グバマイ!!
9.(^。^)// ハイ

「(^。^)// ハイ」
福岡県:FM FUKUOKA「9月度 パワープレイ」
佐賀県:FM 佐賀「9月度 MonthlyLoop」
長崎県:FM 長崎「9月度 Smile Cuts」
熊本県:FM 熊本「9月度 POWER WAVE」
宮崎県:FM 宮崎「9月度 パワープレイ」
鹿児島県:FM 鹿児島「9月度 BranμSong」
※ 総務省による都道府県表記順にて

LIVE INFORMATION

Nikoん「Re:TOUR」

2026年2月5日(木)
鹿児島 Speed King
対バン:The Jobs/debris.
2026年2月6日(金)
福岡 UTERO
対バン:SACOYANS

Nikoん
47都道府県ツアー
「アウトストアで47」

New Album「fragile Report」をご購入頂いた方は無料で入場できる前代未聞の47都道府県ツアー。

【九州シリーズ】
2026年1月25日(日)
長崎県 / 長崎 STUDIO DO!
2026年1月26日(月)
佐賀県 / 佐賀 RIDE
2026年1月28日(水)
福岡県 / 福岡 public space 四次元
2026年1月29日(木)
熊本県 / 熊本 NAVARO
2026年1月30日(金)
大分県 / 大分 AT HALL
2026年1月31日(土)
宮崎県 / 宮崎 LAZARUS
2026年2月1日(日)
鹿児島県 / 鹿児島 WORD UP STUDIO

PROFILE

Nikoん

オオスカ(Vo,Gt)、マナミオーガキ(Vo,Ba)。2023年結成。徹底的にインディペンデントな活動にもかかわらず、尖鋭的なポップ感と一音必殺のオルタナ感に満ちた楽曲、圧倒的なライヴパフォーマンスが評判を呼んで『FUJI ROCK FESTIVAL '24』の「ROOKIE A GO-GO」への出演を早々に果たし、後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)主宰、新進気鋭のミュージシャンの作品を選出する「APPLE VINEGAR -Music Award- 2025」において1stアルバム『public melodies』が特別賞を受賞するなど、多様なジャンル・シーンを跨いで注目される存在となっている。2025年1月には渋谷クラブクアトロにて、Hedigan's、小林祐介とケンゴマツモト(from The Novembers)をゲストに迎え、「Nikoん presents 『謝罪会見』 」を敢行。先ごろ、The Prodigy、Sigur Rós、MUSE、FACTなどを国内で輩出してきたレーベル「maximum10」との契約を発表、同レーベルより2ndアルバム『fragile Report』を9月24日にリリースする。