前作『flask』から約1年4カ月ぶり。今年1月20日に最新ミニ・アルバム『theory』をリリースした、おいしくるメロンパン。タイトルには「抗うことのできない、とてつもなく大きな力というニュアンス」があり「それを当たり前のように受け入れてしまえる不気味さについて、このアルバムでは語っています」とナカシマ（Vo,Gt）は言う。

予定されていたライヴのほとんどが白紙となった2020年春。「ただただやるせなかった」峯岸翔雪（Ba）、「この状態がいつまで続くのかという不安があった」原駿太郎（Dr）同様、「驚きと喪失感を覚えた」というナカシマ。だが一方で「それまでの“業界の過剰な忙しさ”に翻弄されていた自分としては、心身ともにリセットし、落ち着いて“新しい一歩”を踏み出せるいいタイミングになった」（ナカシマ）とも。例えば「コロナの前と後で、作曲に対する意識としての変化はありませんでしたが、曲と向き合い、試行錯誤する時間を多く取れたことで、“大衆音楽”として必要な部分と“芸術”として表現したい部分の“バランス”を微調整できたこと、そして、実験的なことに取り組めたことは良かったです」（ナカシマ）。

ところで、今作には、抗いようもない自然の摂理の中で繰り返される命の儚さ・力強さを描いた『獣』ほか、疾走感あふれる『透明造花』、ゆったりとしたテンポで心地良いサビメロを歌い上げる『亡き王女のための水域』など全5曲が収録されている。なかでも、禍中のムードを思い切り吸いあげたような世界観、今作の肝とも言える『架空船』は圧巻だ。

「この曲はコロナによる1度目の緊急事態宣言真っ只中に作った曲で、その時期に感じていた孤独感や、とてつもなく大きな力に流されることしかできない無力感といったものが反映されていると思います。ギターの同じアルペジオがずっと続く間奏では、時間が経過することそのものの持つ意味合いや、曲に及ぼす影響に着目して、セクションの長さを決めました」（ナカシマ）。
「機械的なベースラインを有機的に弾いています。終盤はエモーショナルに振っていますね。エフェクターを随所で踏んで、各セクションのイメージを強く打ち出しています。ライヴでさらに、めちゃくちゃカッコよくなる曲」（峯岸）。
「かなり疾走感のある曲です。でも、雰囲気としては決して明るい感じではなく、冷たく孤独な雰囲気の漂う曲になりました。基本的に8ビートが続く箇所が多いですが、焦燥感を出したいと思って演奏しました。聴いた人の心にズシンと何かが残るようなパワーのある曲だと思います」（原）。

それこそ、タイム的には5分超えの大作。だが、体感としては本当にアッと言う間。3人の音のかけひき、ポエトリーリーディング前後の緩急のつけ方など、細かいアレンジも絶妙で心地いいので、是非、聴いてみてほしい。

そんな彼らのレコ発ワンマンツアーが4月に福岡・熊本にて開催される。

「福岡は僕の出身地であり、熊本は祖父の家がある。2つともとても思い入れがあるので一生懸命がんばります」（ナカシマ）。
「久しぶりに福岡でワンマンをやれることが純粋に楽しみです。去年の春に行くはずだった熊本初ワンマンのリベンジにも息巻いていますし、『theory』の曲たちは、ライヴでさらに良くなる曲ばかりなので、聴いてもらうのがすごく楽しみです」（峯岸）。
「本当に久しぶりのワンマンなので、ただただ楽しみです。『theory』の曲たちも、ライヴだと、どんな風になるか楽しみにしていてほしいし、新曲が入ったセットリストでライヴがどのように変わるか楽しみにしてほしいなと思います」（原）。

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