見えない明日を信じ、ブーツを鳴らし、
この日のために準備してきたWE ARE THE MODS。

THE MODS

文:なかしまさおり
写真:福島啓和

見えない明日を信じ、ブーツを鳴らし、<br>この日のために準備してきたWE ARE THE MODS。

THE MODS 40TH ANNIVERSARY LIVE ENCORE「続・約束の夜」

2022年6月25日(土)Zepp Fukuoka

WEB上にはそろそろ7月9日の日比谷野外大音楽堂でのライヴレポートが上がり始めている頃だろうか。いまや伝説となった“雨の野音”から丸40年。その光景を目撃した方々からはすでに、ド派手なスパークラーによるステージ演出があったこと、いつもとは違ったメンバー紹介が行われたこと…などワクワクするような話も聞いてはいるが、ここでは、その夜から遡ること2週間前。6月25日、THE MODSのホームタウン・福岡で繰り広げられた“続・約束の夜”をレポートする。

デビューから41年。ヨーロッパでThe Rolling Stonesが、結成60周年を記念したツアーをスタートさせたのとほぼ時を同じくして始まったTHE MODSの全国ツアー“続・約束の夜”。昨年同様、マスク着用、声出し禁止、その他さまざまな制約を設けての開催ではあったが、全国津々浦々から、歴代ツアーTシャツや特注のレザージャケット、その他お気に入りのロック・アイテムに身を包んだ紳士淑女が続々と集結。デッキ通路はもちろん、ドーム側大階段あたりまで、まるでティーンエイジャーのようなキラキラとした笑顔を弾けさせている。


友人・知人と再会を喜び合う人、他会場での様子を喜々として報告する人、なかには家族旅行も兼ね、関東地方から来福、奥さんとお子さんが天神の街を楽しんでいる間、ご主人だけがライヴに参戦!という方もいて、少しずつではあるが、人の移動やライヴハウスを取り巻く状況といったものが変化してきているのがわかる。

にしても、驚くなかれ。その長い歴史の中で、実はTHE MODS×Zepp Fukuokaという組み合わせでのライヴは、かなりレア。Zepp自体が一時期閉館、2018年に新装オープンしたという経緯もあるが、それ以前を含めてみても、おそらく3回(2002年に開催されたイベント「J+ / LIVE」と「MUSIC CITY TENJIN」、そして2008年の「SPEAKEASY TOUR」)だったと記憶。しかも、そのうち1回はTHE MODSではなく“ROCKAHOLIC”として出演していたので、今回の写真も貴重なものになるかも。

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会場内では、影アナ終了を合図に、客席のいたるところからメンバーを呼び込む拍手の波が巻き起こる。本来なら怒涛のモッズコールが上がる場面ではあるが、見えない明日を信じ、ブーツを鳴らし、サビた羽を研いてこの日の準備をしてきたオーディエンスたち。その“約束”の続きを果たそうと、熱き想いをそれぞれの平手に込めて、高く、強く、打ち鳴らす。

オープニング・ナンバーは「S・O・S」。ファンにとっては言うまでもない1989年『NAPALM ROCK』からの1曲だ。だが、40数年という長い歴史の中で、世界中から聞こえてくるニュースはいつも、シビアで笑えないものばかり。


天安門事件、ベルリンの壁崩壊、湾岸戦争、9.11、ジョー・ストラマーの死、メンバー脱退、3.11、未曾有のウイルス・パンデミック。そして───2022年の今もロシアのウクライナ侵攻、元総理大臣銃撃事件…と、次から次へと非情な現実が押し寄せてくる。一体、世界はどこへ向かおうとしているのか?

<もしもこの歌が武器になるのなら / 歪んだ世界の真ん中でロックしてやるぜ>とシャウトする「F.T.W. “Fuck The World”(Shock and Awe Version)」。<口だけのボスが / シケた名声のために / 名も無き声達を殺す>と歌う「MAYDAY MAYDAY」。けたたましいサイレンの音色とともに、ステージ上のコーションランプがスリリングに点滅したファースト・アンコールの「UNDER THE GUN〜市街戦〜」、「いつの日か…Doomsday War」、「READY TO ROCK」のメッセージ性も含めて、だからこそ僕らには、そんな<時代の鏡を激しく打ち抜く4人の騎士>(「BOOGIE BOMB」)が必要なんだと強く思う。

「READY TO ROCK」<for JLODlive2>

思えば2001年以降、新作リリースやアニバーサリーツアー、ライヴレポートといったタイミングで、何度も彼らの取材をしてきた。もちろん、その道行きにおいては幾度かの天国と地獄が当然あり、周囲のバンドが次々と“解散”という名の“死”を選びゆく中、THE MODSだけは常に──“生きる”──その一点にのみ賭けてきた。

あれは確か、満身創痍で駆け抜けた35周年ツアーの後の言葉だったと思う。もともと自身の身体におけるアクシデントから始まったセットリストだったが「結果として“これからのTHE MODSのライヴ”の“新たな可能性の一つ”に気付けたことは良かった」と森山は言った。以降、スピードだけで押すのではない、心の奥を掻き立てるようなメロディアスなナンバーが、新旧含めて数多くリストアップされていくようになった。


“本編”に限って言えば「STORY」「涙のワンウェイ」「バラッドをお前に」といった辺りか。中でも、最新シングル『READY TO ROCK』のセカンド・トラック「涙のワンウェイ」のエモさといったら!!<溢れる言葉より / 一つの歌がこの胸を突き動かす>まさにそのまんまの歌で、コロナ禍でなければ、全オーディエンス、大合唱&大号泣の1曲となったに違いない。

▲ 本日の“JOKER TIME”はピンクのエドワードジャケット着用。過去にはブルー、レッド、ホワイトだったツアーもあり、一体全部で何着、持ってらっしゃるのか?!ちなみに「クラレンス+アラバマ」の元ネタでもある映画『トゥルー・ロマンス』。若い世代には、未見の方も多いと聞くので、是非、THE MODSの曲をきっかけに観てみて欲しいです!

また、「バラッドをお前に」のMCでは、最近『HANDS UP』のビデオを観て、当時の自分の若さと今とのギャップに落ち込んだという話から「でも、これが“生きてる”ってことなのかな」「ロックンロールは何歳になっても最高です」と笑顔を見せた森山。つまりは、“メメント・モリ”、“カルペ・ディエム”──“死を思え”、“時を摘め”=人はいつか死ぬ。だから、今を懸命に生きて楽しめ、人生とはそういうことなのだと改めて思う。なにしろ、齢78を超えても、“老い”を“進化だ”と言い切る海外の先達なんかもいらっしゃいますしね(笑)。まだまだ現役で、いくつになっても“ロックンロール最高!”と叫びながら、ロールしていく姿をファンもきっと見たいはず。

鳴り止まない拍手に導かれ、三たび登場したダブル・アンコールでは、この2年半にわたるコロナ禍を通じ、改めて“音楽の素晴らしさ”を知ったと語った森山。「すげえ落ち込んでヘコんでても、好きなミュージシャンの音楽を聴くと本当に力になった。きっと、みんなにとっては、それがTHE MODSなんだろうと信じてる」とも。「あと何年…どうなるか分かんないけど、とりあえず、もうちょっと俺たちも粘って頑張っていこうと思ってるんで、みんなもそれまで体に気をつけて待っててください」と告げた後で、一言一句、愛おしむように歌い上げた「STAY CRAZY」の輝き。ラスト2曲の熱狂は言わずもがな、最後の最後までゴキゲンなロックンロールと、その力強き未来を見せつけ、この日のライヴは幕を閉じた。

「STAY CRAZY」
▲ 40年分の歴史を綴った公式ヒストリー本『Bye Bye Stardom,Hello Rock’n’Roll』(全国の書店にて発売中)

とはいえ、そうこうしているうちに、早くも冬のアコースティック・ツアーが決定!配信ライヴとしては昨年の『BRIGADE JAM 〜ACOUSTIC SESSION〜』などもあったが、全国ツアーとしては約3年ぶり。しかも、会場がこれまたレアな(!)スカラエスパシオでの2DAYS。

「不良少年の詩」(from BRIGADE JAM)

さらに、忘れてはいけないのが7月末よりスタート予定の、苣木寛之ソロプロジェクト【DUDE TONE】のアコースティック・スタイルによる全国ツアー。シリーズ・タイトル“Walkin’ Blues”としては第7弾、こちらも約3年ぶりの開催となるため、心待ちにしている人も多いと思う。九州は7/30(土)熊本、7/31(日)福岡にて。


どちらもお見逃がしなく!




【SET LIST】
M1. S・O・S
M2. F.T.W.
M3. MAYDAY MAYDAY
M4. STORY
M5. BOOGIE BOMB
M6. SHE’S THE C
M7. ハートに火をつけて
M8. 涙のワンウェイ
M9. クラレンス+アラバマ
M10. GO-STOP BOOGIE
M11. バラッドをお前に
M12. JOHNNY COME BACK
M13. ゴキゲンRADIO
M14. パズル・シティを塗りつぶせ

EN-1
M15. UNDER THE GUN〜市街戦〜
M16. いつの日か…Doomsday War
M17. READY TO ROCK

EN-2
M18. STAY CRAZY
M19. KILL THE NIGHT
M20. LET’S GO GARAGE

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LIVE INFORMATION

THE MODS
Premium Acoustic Tour 2022 “DRIVE WAY JIVE”

2022年12月10日(土)
福岡スカラエスパシオ
2022年12月11日(日)
福岡スカラエスパシオ

DUDE TONE(苣⽊寛之)
LIVE 2022 "Walkin' Blues"vol.7

2022年7月30日(土)
熊本ONE DROP
2022年7月31日(日)
福岡LIVE HOUSE CB

PROFILE

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