グッドメロディー&高熱量のアンサンブル全開!
豊潤なポップネスと吹き荒れるロックイズムが呼んだ歓喜
家主
文:山崎聡美
撮影:勝村祐紀
LIVE REPORT

YANUSHI LIVE TOUR 2025
2025年8月9日(土)FUKUOKA BEAT STATION
時折の豪雨に見舞われた真夏の一夜、約1年ぶりとなる家主の来福ライヴが開催された。着実にコアな音楽リスナーの心を摑み続けている家主。この夜も盛大な拍手で迎えられるも派手なパフォもコールもせず、観客に見守られながら各人がキッチリとサウンドチェックに勤しむあたりがもうマスター職人の佇まい。
「こんばんは、どうも~。1年ぶりぐらいに来たんですけど、貴重なお休みの中、雨もそぼ降る福岡、こんなにいっぱい来てくれるとは…嬉しいな。ありがとうございます。よろしくお願いします、家主でーす」

ゆるっと歓びにじむ挨拶を終えると同時に谷江俊岳のギターがかき鳴らされ、フィードバックから田中ヤコブのギターが小気味よく滑り込み、絶妙のコーラスワークを熾火に幕開けを飾ったのは、『SHOZEN』。続いて、振りかぶって唸りを上げる『きかいにおまかせ』と、憂いと輝きを併せ持つグッドメロディー、快活で豪胆なアンサンブルが全開。アルバム『石のような自由』の冒頭を再現する流れながら、さらに猛々しい躍動感と瞬発力を以て、みるみるうちに“YANUSHI”というヴァイブスは会場を満たしてしまう。『きかいにおまかせ』の間奏では、ステージの前面に飛び出た田中ヤコブの、Tシャツ(respect for牧のうどん)に短パン、サンダルという真夏の日常感あふれるいでたちから繰り出される熱量高くメタリックなギタープレイに、「待ってました!」と言わんばかりの歓声がどよめく。思わずグッとくるような音のコール&レスポンスが、とてもすこやかで、また家主らしい気がする。



「田中さんは、新しいベースを買いました」と紹介を受けたMCを挟んで、白いボディのプレシジョンベースが眩しい田中悠平の詞曲・ボーカルによる『カメラ』。朴訥としてなお伸びやかな歌を浴びると同時に、ザラついたバンド感や存外に重いうねりが身体にジワジワと染み渡ってくる。

「ここで、この間創った新曲を」と、徐に披露されたのは『YOU』(6月に配信リリースされ、8/20配信・9/24CDリリースのEP『NORM』にも収録)。青空へと伸びる、見えぬレールを駆け上っていくようなドライヴ感と、アウトロに向かって激しく展開していく、やりすぎなほどにハードなギターの咆哮。まさに《淀みの中で震える 僕らの魂》を体現するアンサンブルが、こちらの心も震わす。こんな序盤に組み込まれるとは思っていなかったが、《歌ってほしい いつまでも/歌ってほしい あなたに》の希いとともに脳裏に焼き付いたワンシーンだった。そして、ドラムス・岡本成央が刻むイントロのリズムに嬌声が上がった『茗荷谷』から、家主の十八番にして真骨頂を究める『家主のテーマへ』へ、さらに谷江ボーカルによる鮮やかにして烈しくアッパーな『庭と雨』と、会場中に漲るテンションをさらに高めていく。豊潤なポップネス、吹き荒れるロックイズムの嵐の中で歓喜するオーディエンスも美しい。


前半の終わりに披露されたのは、新曲『FEARS FOR FEARS』(EP『NORM』収録)。オルタナ感満載、装甲車のようなヘヴィネスに圧倒される歓びを噛み締める。家主の多彩なアンサンブルの中でもひと際のタフネスさを持つこの楽曲は、福岡オルタナの雄・SACOYANSのからの影響を強く受けたものであることが田中ヤコブの口から明かされ、フロアには納得の嘆息がもれまくるという景色が尊い。おまけに、田中ヤコブの牧のうどんおよび牧のうどんTシャツへの愛着ダダもれ話もたっぷり。ひとしきり会場をあたためて、「わしが牧のうどん的な精神で創った曲を…イントロがクソ難しいというところに牧のうどん性を感じてほしい」と、爆笑と喝采の中で“ブチかまし”たのは『歩き方から』。福岡が誇るローカルフードのマイナー性とスペシャリティ度に確かに相通ずるかもしれない名曲の名演に、拍手喝采が沸き起こる。「昨日牧のうどん食べたんで、すごい上手く弾けました。ありがとう牧のうどん!」と、締めのうどん愛も抜かりなく、続くハード&メロウな『近づく』まで含め、家主のオルタナティヴ感とポピュラリティーとの抜群のバランスを堪能させてくれた。なお、『近づく』の際、岡本のブレない体幹と無駄のない叩きっぷり、黒タンクトップから覗く美しい上腕二頭筋と斜角筋に、見惚れてしまうのを止められなかったことも、白状しておこう。




後半戦は田中悠平のスピッツ愛とともに『オープンエンド』でスタートし、『お湯の中にナイフ』や『生活の礎』といった、バンドの根源的なポップネスが輝き縦横無尽に広がっていくエバーグリーンなセットを、茫漠たる大海原に漕ぎ出していく舟のような緊張感と逞しさを孕んだアンサンブルで駆け抜けた。リズム隊の推進力、絡み合うギターの求心力、メロディーの芳醇さが一体となったグルーヴが、オーディエンスを昂揚と幸福の頂点へと導く。そして、『p.u.n.k』の反骨性から『NFP』の爆発的な解放感へとつなぎ、ガレージ感満タン、超絶ポップ&アグレッシヴな『にちおわ』で、ヤコブ独壇場の壮絶な速弾きでも魅せながら、本編をフィニッシュ。アンコールの手拍子に応えて「僭越ながら…」と披露したのが、3人のソングライター&シンガーがそれぞれの持ち味を聴かせる鉄板の3曲だったのが心憎い。充実の選曲と全く隙のないアンサンブルによる約1時間半。ツボを心得た達人の指圧は優れて心地よく、胸のすくような痛快さを伴って身体だけでなく心まで軽やかに解き放つ。その瞬間、わが身に感じるのは、ドクドクと体内を巡る血と、ムクムクと湧き上がるエネルギー。この夜、家主がもたらしてくれたのは、そんな得難い快さだった。
【SET LIST】
M1.SHOZEN
M2.きかいにおまかせ
M3.カメラ
M4.YOU
M5.茗荷谷
M6.家主のテーマ
M7.庭と雨
M8.FEARS FOR FEARS
M9.歩き方から
M10.近づく
M11.オープンエンド
M12.お湯の中にナイフ
M13.生活の礎
M14.それだけ
M15.マイグラント
M16.p.u.n.k
M17.NFP
M18.にちおわ
EN1.Dreamy
EN2.陽気者
EN3.オープンカー









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