Life goes on ──新たなる旅路へ

LOVE PSYCHEDELICO

文:山崎聡美
撮影:勝村祐紀

Life goes on ──新たなる旅路へ

LOVE PSYCHEDELICO 25th Anniversary Tour
2026年3月29日(日)福岡国際会議場 メインホール


デビュー25周年のアニバーサリーツアーにして、活動休止を告げるフェアウェルツアー全14公演(追加公演含む)を完遂したLOVE PSYCHEDELICO。四半世紀以上に及ぶ活動において数多の普遍的な楽曲を生み出し、エナジーとミラクル、ロック・ミュージックへの敬意と歓喜に満ちたライヴバンドとしての本領を守り続けた稀代のバンドの旅が終わり、それぞれの新たな旅路が始まろうとしている。


筆者が観たのはツアー7本目の福岡公演。開演直前の会場BGMはジョニ・ミッチェルの『All I Want』(たぶんLive ver.)だった。あたたかな弦の響きと澄み切った歌に心を鎮められ、あらためて場内を見渡せば、ステージには機材や楽器が所狭しと並び、町から町へと世界中を巡る移動遊園地のようなノスタルジックな電飾が“LOVE PSYCHEDELICO”の名を灯している。客席を埋め尽くしたオーディエンスがバンドの登場を待ちわびている。ラストツアーの特別な感慨がないと言えば嘘になるが、それ以上に彼らがこの25年間心血を注いで創り上げてきた“音楽の奇跡が起こる場所”がいつものようにあった。

幕開けは『Shadow behind』。バンドを迎えた盛大な拍手がごく自然に手拍子となり、吸い込まれるように曲の一部となっていく。一音一音が際立ちながらもなめらかで贅沢なアンサンブル、閃光のように闇を切り裂いて耳に届く艶やかな歌。その感触がいかに特別で無二のものであるかを、早くも噛み締めてしまう。


「今日は来てくれてありがとう!最後まで楽しんでいってね! …『Free World』!」(KUMI)

オーディエンスの心身にあまりに馴染んだリフに、足元に波を感じるほどに客席全体がうねり熱狂が迸る。冴えて弾むピアノ、ドライヴ感たっぷりのギター、躍動感をもってなおたおやかなリズム隊。現在のLOVE PSYCHEDELICOにとって不可欠、盤石のメンバーである深沼元昭(Gt.)、高桑圭(Ba.)、松本圭司(Key.)、伊藤大地(Dr.)とともに構築するタフなグルーヴと強烈な磁場がみるみるうちに広がる。続けて、オーセンティックな慈しみに満ちた『I saw you in the rainbow』、抒情豊かな楽曲を多彩な弦の音色で彩った『Hello』のあと、NAOKIによる極上のウイスキーのごとく芳醇なギターの調べが導く『Wasting』、さらにNAOKI、深沼、KUMIという名手によるギターリフの交錯と応酬に酔いしれ昂る『No Reason』まで、序盤のわずか6曲だけでも実に多様。曲によって持ち替えるギターやベースの音色、響きも驚くほどに豊かだ。陰影を孕んだメロディーを紡ぐ、愁いを帯びて輝く伸びやかなヴォーカルにも(当然ながら)衰えなど微塵もない。

メンバー紹介を挟んでの中盤では、軽やかなステップ&ダンスを誘う『Swingin’』から、成熟してなおみずみずしい『life goes on』、サイケデリックで心地よい『fantastic world』と、ルーツを見事に昇華した豊潤な3曲を披露。人生の煌めきも翳りも讃えるような包容力で会場もろともオーディエンスを包み込んだ。

後半は恒例のNAOKIパートでスタート。ここでNAOKIが活動休止について触れた。


「最初はね、アルバム一枚作れればいいなって思ってたんだよね。だからそれから25年も経ってこんなたくさんの人たちの前でギターを弾いてること自体が不思議な感じなんだ。今も変わらないんだけど、曲を創るときには、10年後に残るのは自分じゃなくて曲だと思ってて。だから、25年経ってもたくさんの人が自分たちの曲を聴いてくれているのはホンットに嬉しい。・・・なあんてね! そんな湿っぽい感じは生前葬みたいで嫌なんで(笑)。やっぱり音楽は楽しくなくちゃ。自分もKUMIも絶対音楽続けていくから。始まりのタイミングだから。今日はみんなを笑顔にして帰りたいと思ってます」

示すのは、理由ではなく、音楽家として望む在り方。それが彼の矜持なのだ。そして「大学のサークルみたいな感じで、ブルースやっていいですか?」と、濃密なバンドセッションによる至福のブルースメドレーを披露。技巧と情熱を存分に織り込んだフリーキーなプレイでオーディエンスを引き込んでいく。そのまま、「もうちょっと、みんなに手伝ってもらおうかな」と、『Mind across the universe』のイントロとハンズクラップが鳴り響く中、客席へ下りてのプレイでさらにアジテイトし、そこからのめくるめくような壮大なサウンドスケープ、『LADY MADONNA』に至ってのバンドのダイナミクスの爆発は、エキサイティングこの上なし。深沼のギターソロからNAOKIのギターソロへとつないだ一瞬もあまりに流麗だった。

刹那的な旋律と歌を縦糸に、全ての音やフレーズ、リズム、コーラスを横糸として編み上げたタペストリーのような圧倒的な美しさと荘厳さを湛えた『Last Smile』を聴かせてくれたあと、終盤はビートをフル装填した圧巻のロックンロール・ショー。エモーショナルな疾走感、完璧なコーラスワークで駆けた『Calling You』、イントロの色気溢れるギターリフだけで魅せさらにエネルギッシュにしてダンサブルに沸点へと導いた『Everybody needs somebody』、なお限界へと超えていくようなハイテンポ感を伊藤大地の咆哮のような野性的なビートで締めた『”O”』。そしてラストは「最高の夜をどうもありがとう!みんなで一緒に行こう!」というKUMIのシャウトとともに『Freedom』のエバーグリーンな輝き、躍動の中へとなだれ込む。25周年を締め括るにふさわしい、パッション漲る本編フィナーレだった。


「今日は本当にどうもありがとう。LOVE PSYCHEDELICOの旅は終わっても、私の、NAOKIの、みんなの旅はまだまだ終わらないから。またいつかきっとどこかで、会えたらいいね」(KUMI)


2度にわたるアンコールに応え、未来への願いを込めて奏でられた3曲。『All the best to you』の降り注ぐ星のようなマンドリンの音粒の感触や、アコースティックギターをメインとした玄妙なアレンジとより原初的なアンサンブルで奏でられた『Your Song』の澄んだ歌がいまだこの手にあるように、NAOKIが願うよりずっと長くLOVE PSYCHEDELICOの楽曲たちは輝き続けるのだろう。

【SET LIST】
M1.Shadow behind
M2.Free World
M3.I saw you in the rainbow
M4.Hello
M5.Wasting
M6.No Reason
M7.Swingin’
M8.life goes on
M9.fantastic world
M10.Bad Bad Whiskey〜Mannish Boy
M11.Mind across the universe
M12.LADY MADONNA~憂鬱なるスパイダー~
M13.Last Smile
M14.Calling You
M15.Everybody needs somebody
M16.”O”
M17.Freedom

EN1-1.Standing Bird
EN1-2.All the best to you

EN2-1.Your Song

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