『Live Tour 2022 “A revolution”
at SHOWA WOMEN’S UNIVERSITY
HITOMI MEMORIAL HALL』
[DISC REVIEW]

LOVE PSYCHEDELICO

『Live Tour 2022 “A revolution”<br>at SHOWA WOMEN’S UNIVERSITY<br>HITOMI MEMORIAL HALL』<br>[DISC REVIEW]

新たな風を呼び込み起こした”A revolution”
バンドの軌跡に満ちる音楽の奇跡

昨秋、通算8枚目となるオリジナルアルバム『A revolution』を携え全国12都市を巡るリリースツアーを開催したLOVE PSYCHEDELICO。本作は、その東京公演である昭和女子大学 人見記念講堂におけるライヴをほぼ全編収録し、映像・音源化した記録作品だ。リリースはBlu-ray・DVD・CDの3形態、ケチな商売っ気無しで収録楽曲(内容)はすべて同じである。(※本稿ではライヴCDをもとにレビュー)

このツアーでは、KUMI(Vo,Gt)、NAOKI(Gt)、深沼元昭(Gt)、高桑圭(Ba)、松本圭司(Key)という前回ツアーから継続する編成に、ドラムスとして伊藤大地が加わった。これはバンドにとって大きなトピックであったと思う。片やルーツを明確に打ち出しながらなお現代的なアップデートを仕掛けつづけるデリコと、片やSAKEROCK、グッドラックヘイワ、サンフジンズ、細野晴臣バンドといった世代もジャンルも実に幅広く活動しオルタナティヴでミクスチャー感の強い伊藤大地……大いに興味を掻き立てられながら観た福岡公演(’22年10月22日@福岡国際会議場メインホール)は想像以上の面白さで、抜群の相性と、各楽曲の発展的な景色とを見せてくれたのだった。クセも味もあるのに的確で、聴く者の胸を否応なく弾ませるアグレッシヴな、常に進行形のビートを刻む伊藤は、確実にバンドに新たな風を吹き込んでいた。考えてみればデリコのふたりも、若い頃から非凡なプレイと幅広い音楽性でフュージョンやクラシックの著名ミュージシャンたちと渡り合ってきた松本も、混沌としたオルタナ界隈で無比の個性を発揮してきた深沼、高桑も、パイオニアであった。そんなメンバーの化学反応は面白いに決まってるし、20周年を超えてもなお失われないデリコのオーガニックなサウンドの豊潤さをますます増幅させないわけがないのだ。

また、2015年に開催されたデビュー15周年記念ツアーに高橋幸宏氏がドラマーとして迎えられたことを覚えている方も多いだろう。現在、細野晴臣バンド(The Eight Beat Combo)の一翼を担う伊藤大地が、LOVE PSYCHEDELICOという創造の場を通しても氏とまみえているような感慨を覚え、音楽のバトンを感じずにはいられない。音楽の歴史が重なって生まれる分厚いハーモニーと、脈々と受け継がれていくミュージシャンシップ。それは、継承と創造を繰り返してきたLOVE PSYCHEDELICOの在り方そのものでもある。

ちなみに本作と同じく、人見記念講堂での15周年ライヴは映像化・CD化されているので、聴き(観)比べてみるのも乙である。

そして、重要なトピックはもうひとつ。高音質で繊細な音の解像度を標準化したことだ。2019年のアコースティックツアー”TWO OF US” の際にNAOKIが設計から関わり製作した会場用スピーカーシステムを、2021年の20周年アニバーサリーツアーに続き、今回のツアーにも帯同。そのヴィヴィッドな音像を、本作では心ゆくまで味わい楽しむことができる。全国各地でこのツアー公演を体感したひとはもちろん”あの景色”が眼前に立ち上がるだろうし、残念ながら足を運べなかったひとも『A revolution』というアルバムに凝縮されていたダイナミズムや、各プレイヤーが奏で鳴らす音ーー多彩の音色と多層の響きを生むエレクトリック&アコースティック&12弦ギター、ブズーキ、マンドリンや、メロディ楽器のように歌うベース、絹地のようなしなやかさで彩るシンセ、煌めく音粒を零す鍵盤ーーのエッジ、豊かな情感、バンドの凄まじいグルーヴ感とダイナミクス、音が心身に届くスピード感、またその瞬間に身体の中で跳ねて弾ける快活さを、この上ない臨場感で味わうことができるはずだ。

何より、ハンドメイドな滋味に満ちる『A revolution』というアルバムが、ひっそりと抱えられたままの誰かの(あなたの)憂いに寄り添い、慈しみのなかで未来へ向かって紡がれた作品であることを、いまあらためて痛感している。KUMIのヴォーカルをはじめ、明度の高さ、みずみずしさ、ニュートラルさは只事でなく、ライヴのたびにその時代を突き抜けるようなタフさを発揮する代表曲たちと併せ、ひとりひとりが各々の路を見失わないよう照らしてくれているようだ。

來る5月には【LOVE PSYCHEDELICO Live House Tour “LIVE PSYCHEDELICO 2023″】の開催が決定。5月14日(日)福岡DRUM LOGOSを皮切りに全国5カ所を、『A revolution』ツアーと同じメンバーで廻る。『LOVE YOUR LOVE』リリースツアー以来となるライヴハウス公演、本作を視聴後はその日がますます待ち遠しくなることを請け合おう。(山崎聡美)

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LIVE INFORMATION

LOVE PSYCHEDELICO Live House Tour "LIVE PSYCHEDELICO 2023"

2023年5月14日(日)
福岡 DRUM LOGOS

PROFILE

LOVE PSYCHEDELICO