涙の数だけ思い出を歌って、
reGretGirlは、大人になった。

reGretGirl

取材/文:なかしまさおり

涙の数だけ思い出を歌って、<br> reGretGirlは、大人になった。

“失恋”を歌うロックバンドとして、シーンに登場して早5年。切なくも共感度の高い歌詞とキャッチーなメロディで、多くのファンから支持を得ているreGretGirl。2021年のメジャー1stフルアルバム『カーテンコール』と、続くEP『生活e.p.』を経て、辿り着いた最新フルアルバム『tear』で聴かせた“進化”はいかに?平部雅洋(Vo,Gt)と前田将司(Dr)に話を訊いた。

Major 2nd Full Album『tear』全曲Trailer

──フルアルバムとしては約2年ぶりの作品となる『tear』ですが、かなりお忙しい中での制作だったとお聞きしました。


平部:はい。2021年末に『生活e.p.』を出した時点で、もう次(のアルバム)は2023年の頭に出す…ということだけは決まっていたので、そこを見据えての1年になるなとは思っていました。ただ、ありがたいことに(さまざまな規制が徐々に緩和され)ライヴの状況、本数なども想像以上に戻ってきまして。蓋を開けてみれば、全国ツアーを回りながらレコーディングして、曲も作って…という“怒涛の1年”になっていました。


──そんな中で、どのように制作を進められていったんでしょうか?


平部:実は今回のアルバム全12曲中、半分はデジタル・シングルとして先に出すと決まっていたので、まずはそこから録っていきました。

順番としては『best answer』を一番最初に録っていて。前のアルバムでもご一緒させて頂いた(柿澤)秀吉さんにアレンジをお願いしました。reGretGirlの場合、アレンジは僕が作ったデモに乗っかってもらう形が多いんですけど、この曲に関しては、一から秀吉さんにお願いしたので、自分たちでは生まれてこないリズムだったり、フレーズだったり、秀吉さんカラーが全開の曲になっています。もちろん、それなりに難しいところもあったんですけど、そこにチャンレンジしていくことで、自分たちの幅も広がった、そんな曲になったと思います。

『best answer』Official Music Video

──デジタル・シングルは4、5、6月の3ヶ月連続と、9、10、11月の3ヶ月連続の2回に分けてリリースされました。しかも9月からの楽曲では、映像との連動企画(「Music Video & Story “煙の行方”」)もあり、その仕掛け自体が大きな話題となりました。

Music Video & Story “煙の行方”再生リスト ※9〜11月に3ヶ月連続で配信された楽曲の歌詞ストーリーを約1分のショート・ドラマとMVで表現。
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平部:はい。例えば、前回のフルアルバム(『カーテンコール』)では、“失恋”以外のテーマで曲を書いたり、アレンジャーを立てたり、これまでになかった挑戦をいろいろとやったんです。けど、次のシングル『生活e.p.』では、その反動からか原点回帰…今までreGretGirlがやってきたことをもう1回、ふり返ってみようということで、かなりコンセプチュアルな表現を突き詰めました。なので今回は、その両方の“いいとこどり”、いわゆる“掛け合わせ”が出来たらいいなと思って、そういう意味では、3ヶ月連続でのデジタル・シングル配信も含めて、鍛えられた部分は大きく、非常にタフなアルバムになったんじゃないかなと思ってます。

Major 1st Full Album『カーテンコール』 全曲trailer
Major 1st EP『生活e.p.』全曲Trailer

──例えば、恋愛の歌詞ではないというところで言うと、12月に先行シングルとして配信された『サムデイルーザー』なども、サウンドと言葉のバランスが良く、“いいとこどり”の心地良さが感じられます。


平部:ライヴとかでも常々言っているんですけど、reGretGirlは“みんなに寄り添えるバンドでありたい”と思っているんです。やっぱり辛い時っていうのは、失恋だけじゃないし、そういう気持ちにも寄り添えるような曲が作りたいなと思って曲にしました。この曲は自分たちでアレンジをしたんですけど、さっき言ってた秀吉さんにアレンジをしてもらうという経験を得て、獲得したものを自分たちで発揮できたのかなと思う曲になりましたね。

『サムデイルーザー』Official Music Video

──なるほど。個人的には、歌詞世界におけるフィクション / ノンフィクションの配分バランスだったり、コーラスのアレンジ、ギターや鍵盤の音色の重ね方やリズム隊とヴォーカルのコントラストなどにも心惹かれる部分が多くありました。


平部:ありがとうございます。歌詞については、ずっと実体験を元に書いてきて、自分でも少し“変わってきたのかな?”というところを感じています。もちろん、曲によっては実体験を元に書いているんですけど、より俯瞰で物事を見れるようになったというか、その実体験とフィクションとの整合性が、自分の中でしっかりと取れるようになってきたのかなと。たぶん…大人になったんじゃないかなぁと思います(笑)。


──そんな平部さんの変化を他のメンバーはどんな風に見てらっしゃるんでしょうか?


前田:僕は…あんまり気づいてないですね。というより気にしてないから、平部に言われて“あ、そうなんや?”みたいな感じで分かってない(笑)。


平部:もともと歌詞を書くのがすごく遅いんですよね、僕。だから、レコーディングのいつも最後の最後…下手したら(音も全部)録り終えた後でメンバーは、初めて歌詞を見る、みたいなことも結構あるので。それでも、そんな僕についてきてくれるメンバーにはホント、感謝しかありませんね。


──ただ、そんなふうにギリギリまで粘って出てきた歌詞だからこそのカタルシスもありますよね。例えば他楽曲とのつながりの中で張り巡らされた伏線などが、作品をまたいで回収されることもあったりして、その手腕の見事さには本当に驚かされます。

例えば1曲目の『ギブとテイク』などは、イントロや間奏で鳴らされる骨太なロックサウンドに対して、主人公の弱気な心情が見え隠れするユニークな歌詞で、思わずクスリとしてしまいます。


平部:もともと、オアシスとか、洋楽のロックっぽいものがすごく好きで、音楽もその影響を受けてる部分があるんですけど、『ギブとテイク』の冒頭ではとくに、そういうバンドをオマージュしつつ…でも、サビは自分たちっぽくしたいなというところで組んで行ったので、その“ロックさ”と“歌詞の情けなさ”が、面白い対比になってるんじゃないでしょうか。

実はここ2年ぐらいで大阪から東京に引っ越したんですけど、ちょうど引っ越しの時期が真夏で、その頃に作ってた曲だったんですよね。僕は結構、地元とか住んでるところ、馴染みのある場所なんかの名前を曲の中で出したりとかもするんですけど、この曲にも“八月”“東横”“多摩川”みたいな言葉が出てきて、自分の生活の変化がダイレクトに曲に反映されているんだなということを実感しますね。

『黒鳥山公園』 Official Music Video(2018年『take』収録) 黒鳥山公園は平部の地元・大阪府和泉市を代表する公園。他にも『イズミフチュウ』(2018年『take』収録)、『二色浜』(2017年『my』収録)、『ロードイン』(2021年『生活e.p.』収録 / 和泉府中駅前商店街「ロードインいずみ」)、『ルート26』(2021年『カーテンコール』収録)など、地名や地元の固有名詞などをタイトルに使ったものが数多くある。

──5曲目の『KAWAII』も、言葉のチョイスや載せ方に平部さんのセンスがあふれまくってます。


平部:これは本当に、歌詞を書いてて一番楽しかったですね。reGretGirlって結構、情けない歌詞の曲が多いじゃないですか。でも、これはそんな中でも男らしいというか、“俺についてこい!”みたいな歌詞になっていて。自分の中の、いろんな平部の中でも、堂々とした平部が出たという感じで書きました(笑)。


──<イエベとかブルベとかはわからねえけど / 俺はヒラベだ気にすんな>は本当に最高のキラー・フレーズですよ(笑)。


平部:いや、本当に平部で良かったなと思いましたね(笑)。しかも、自分の名前を歌詞に出して、自分で歌うというのも、すごく面白いなと思っていたので。それをサラッとできる曲調で、本当にこのアルバムの中で一つのフックになっています。


──ライヴとかでも盛り上がりそうですもんね。やっぱり、こいうイエベ、ブルベみたいな言葉を耳にした時は“使えそう!”と思ってメモしたりするんですか?


平部:しますね。思いついた言葉は全部、ケータイにバーッとメモしていきます。


──さきほど、歌詞はあんまり聞いていないとおっしゃってた前田さんですが、この曲を聴いた時は、どう思われましたか?他の曲とは毛色もずいぶん違うと思うんですけれども。


前田:そうですねぇ…普段から(平部とは)一緒にいる時間が長いんで、そういう(“俺についてこい!”みたいな)面の平部も知っているし、とくに違和感は…なかったですね。いつもおちゃらけているというか、陽気でポンコツな平部しか知らないので(笑)。


平部:うん。あと、十九川も意外とポンコツやからなぁ…。


──といっても、平部さんの先輩ですよね?


平部:はい。でも、もうね、この年になってくると年齢は関係ないなというか。もちろん、すごく真面目な熱い男ではあるんですけど、 多分なんやかんやで、1番気を遣えないのは彼やったりするので(笑)。そんなポンコツ2人を、一歩ひいたところから冷静に見て、フォローしてくれるのが前田なんです。


──なるほど、皆さん、持ちつ持たれつの絶妙なバランスで保たれているわけですね。

では『ダレヨリ』や『winter』といった曲で鳴っている鍵盤の音色はについては、いかがでしょうか。

『ダレヨリ』Official Music Video

平部:2曲とも、ライヴ・サポートなどでお世話になっている重永亮介さんにアレンジをお願いしています。重永さんは、reGretGirlの好みをすごく分かってくれてて、僕たちに寄り添うアレンジをいつもしてくれるんです。『ダレヨリ』ではストリングスだったり、ピアノアレンジだったり、我々だけではできない部分を一緒に考えてくださっているんですけど、どちらの曲も“基本はギターロックのスリーピース・バンドだ”ということをちゃんと踏まえた上で、レンジの広い曲に仕上げてくださっている。

『winter』Official Music VIdeo

あと、『winter』は4年ぐらい前からデモがあったんですけど、それを温めて温めて、やっとこの“冬”というタイミングで出せたことが自分的には嬉しくて(笑)。僕ら的には、もう“バラードといったら、安定の重永さん”という感じでいるので、この曲も素晴らしいバラードに仕上げていただいています。


──また『ルックバック』『車の中から』『サンシャワー』は配信段階から(映像も含めて)ストーリーとして一連の流れがあって。なるほど、3曲かけて、こうなっていくのかという感じが面白かったです。車や車内の景色がモチーフとして繋がっていて、最後にはちゃんと回収されていくという、その手法にもすごく感動しました。

『ルックバック』Official Music Video
『車の中から』Official Music Video
『サンシャワー』Official Music Video

平部:ありがとうございます。この3曲はもともと1つの物語として書いたんですけど、さっきも言ったみたいに、これまでは自分の経験を元に、自分のことを書きまくるという歌詞が多かったんですね。でも、本当にこの辺りから一歩引いて、“1つのフィクションとして書く”ということをやり始めたので、自分でもなんか“物書き”っぽくなってきたなと感じていて。自分の経験を踏まえつつ、言いたいことも伝えつつ…という点では新境地に入ってきたのかなと思います。


──たとえば、毎年じゃなくてもいいので、こういう3曲かけてストーリーを紡ぐようなシリーズは他にはないので、今後も続けていってほしいです。


平部:確かに。これが「2(ツー)」とか「3(スリー)」になっていくのも面白いかもしれないですね。ちなみに『サンシャワー』のアレンジも重永さんがやってくれています。


──『ハングオーバー』『remind』『tear』というラスト3曲もキャラが立っていて、非常に魅力的な楽曲でした。とくにエロティックな歌詞をポップなサウンドで聴かせてしまう『ハングオーバー』では、途中に入ってくるドラムのフレーズが、ちょっとしたアクアセントになっていて心地良かったです。


平部:『ハングオーバー』に関してはthe band apartの木暮(栄一)さんにアレンジをしていただいたので、ドラムのリズムであったりそういう部分には結構、木暮節が出ているかもしれません。

『ハングオーバー』Official Music Video

平部:ただ、基本は各パートのメンバーにお任せしていて。


前田:だいたい全曲、好きなように叩いてます(笑)。


──メロコアチックな『remind』は、2分にも満たない超速ナンバーで、え?こういうタイプの曲もやるんだ?!と驚きでした。


平部:もともと2ビートの曲をやりたいなとは思ってたんですけど、今までは“reGretGirlっぽくないからやめとこう”と避けてたところがあったんです。でも、これだけバンドも歴が長くなって、少しずつですが自信もついてきたので、 “何をやってもreGretGirlになるんじゃねえか?”と思って、今回、思いっきり行くことにしました(笑)。


──確かに、意外ではありましたけど、平部さんならではの韻の踏み方とか、めちゃくちゃハマってて、何よりもライヴでかなり盛り上がりそうだと感じました。

ラストを飾る『tear』は、タイトルに直結していることはもちろん、メインのリード・ナンバーとして、すべての想いを集約してくれる懐の深い曲になっています。それこそ、歌詞には平部さんのプロフィール資料に書かれている「座右の銘:誇り高く、腰は低く。」も入っていますし、現時点での集大成的な楽曲になったのではないかと感じました。


平部:そうですね。これは本当にタイトル・チューンにもなっているぐらいで、『サムデイルーザー』同様、辛いことって、失恋だけじゃないよねという想いで書きました。それこそ僕も、もう30手前で大人になってきたということもあって、新しい気づき、きっかけとかで、自分を見つめ直すことが本当に多くなってきたんです。それで、歌詞の中にもあるように、いつからか“懐かしくて涙を流す”ようにもなってきて。これって、美しいことやなと思えるようにもなってきた。だから、そういう部分も踏まえて、昔、亡くなってしまった友達のこととかも、こうして思い出して、美しい涙に変えることで、乗り越えていけたらなと、思って作ったのが、この曲なんです。


──なるほど。そうやってつらい想いを涙に変えて、その涙を今度はreGretGirlが歌にして、みんなで歌っていい思い出に変えていけたらいいですよね。

『tear』Official Music Video

さて、そんなアルバム『tear』を引っさげ、2月18日から待望の全国ツアーがいよいよスタートします。九州は3月17日(金)福岡DRUM LOGOSにて。今回はワンマン・ツアーということで、その日を楽しみにしているファンへ、最後に一言ずつ、メッセージをお願いします。


平部:福岡には何度も足を運んでいますが、ここ数年、コロナで(ライヴに)来れなかったよ、というような方も結構いらっしゃると聞きました。今回はアルバム『tear』を引っさげての、久しぶりのワンマン。そういう方々含めて、最初から最後までreGretGirlを全身で楽しんでもらいたいなと思っていますので、会場に会いに来てくれたら嬉しいです。


前田:2022年は、めっちゃライヴとめっちゃレコーディングをしまくっていたので、きっと自分らの“地の力”も上がっていると思うんですね。なので、それを是非、見に来てもらえたら嬉しいなと思います。


──ありがとうございました。

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RELEASE

tear

Album

2023年2月1日発売
日本コロムビア

1.ギブとテイク
2.best answer
3.サムデイルーザー
4.ダレヨリ(Album Ver.)
5.KAWAII
6.winter
7.ルックバック
8.車の中から
9.サンシャワー
10.ハングオーバー
11.remind
12.tear

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LIVE INFORMATION

reGretGirl presents winter oneman tour 2023 “tear”

2023年3月17日(金)
福岡DRUM LOGOS

PROFILE

reGretGirl

平部雅洋(Vo,Gt)、十九川宗裕(Ba)、 前田将司(Dr)。2015年大阪にて結成。2017年12月に初の全国流通盤『my』をリリースして以降、ミニアルバム、配信限定シングルなど、コンスタントに作品を重ね、2021年1月1stフルアルバム『カーテンコール』でメジャー・デビュー。バンド名は、平部が当時の彼女にフラれた際に「いつか有名になってフッたことを後悔させてやる」と思ったことに由来。その名の通り、切なくも共感度の高い歌詞とキャッチーなメロディで多くのファンを獲得している。ちなみに彼らの人気に火をつけた代表作『ホワイトアウト』(2017年『my』収録)はMVの再生回数が(2023年2月現在で)3400万回を突破。根強い人気を誇っている。