音楽で台湾と日本を繋ぐ「未来の窓」を開けて。

ゲシュタルト乙女

取材/文:前田亜礼

音楽で台湾と日本を繋ぐ「未来の窓」を開けて。

台湾と日本で主に活動中の、日本語で歌う台湾バンド「ゲシュタルト乙女」。5月に海の中道海浜公園野外劇場で開催された“CIRCLE ’23”では、バンドの主軸を担うヴォーカルのMikan HayashiがKOAGARI STAGEに弾き語りで登場。台日の音楽シーンを繋ぐ彼女の魅力に迫った。

──最初に湧く疑問ですが、台湾出身のMikanさんがなぜ日本語で歌詞を創作して歌うようになったんですか?

「歌詞を書き始めたのは高校生のときでした。最初は恥ずかしさから、周囲に自分の気持ちがばれないように日本語で歌詞を書き始めたんです。書き続けているうちに、日本語って自分の性格と合うなって思ってきて。私の表現したいことをいちばん形にできる言語だと思ったんです」

──“CIRCLE ’23”では、8曲を披露されました。これまでにリリースしている『視力検査』(2019)、『Amoeba』(2022)の2枚のアルバムとEP『Nice to 密 you.』からバランスよく構成され、ソロ名義の楽曲、ZAZEN BOYSの『KIMOCHI』のカヴァーも飛び出しました!ギターを片手に、浮遊感のあるヴォーカルが伸びやかに野外フィールドに広がって、新緑や風のざわめきと混ざり合うステージは、ピースフルで心に残る素敵なひとときでした。

「一言でいうと最高でした!セットリストは、名刺みたいな感じで“はじめまして”の思いも込めて選びました。好きなアーティストさんたちと同じステージに立てたこと、スタッフさんやみんなの力でここに立つことができたから、この思い出を大事に、またみんなと会えるように頑張りたいなって」

──台南出身のMikanさんですが、小さい頃から音楽に親しんでいたんですか?

「母が音楽好きで、プロというわけではなかったんですけど、レストランでギターの弾き語りを披露したりしていたんです。台湾では“民歌”という歌謡曲みたいなジャンルがあって、母親世代は当時みんな歌っていました。日本の曲も好きで日本語で歌ってもいましたから、その影響で自分も聴くようになったのがルーツです。

曲作りを始めたのは高校生の頃から。専攻していた観光学科で日本語の能力試験を受けるのをきっかけに、日本語を勉強して、高3からギターで本格的に曲作りを始めていきました。日本語を上達させるツールとして活用したのは、YouTube。日本のポップミュージックとの出会いもたくさんありました。同級生の影響で、椎名林檎さんを好きになって、当時はまだサブスクとかそんなに流行ってない時期だったんですね。とにかくYouTubeでいろいろ調べて聴いていました。それで、おすすめにスピッツが出てきて、あ、バンドかな?って聴いてみたらすごく好きになって。初めて弾き語りしたのが『空も飛べるはず』だったんです」

──当時は台湾でもK-POPが流行り始めた時期だったそうですが、その中で日本語に惹かれたのは、どういう理由からだったんでしょう?

「言語って、いろいろ性格というか違いがあるじゃないですか。 私も、台湾華語を喋る時と日本語を喋る時とでは全然違う性格になるみたいなんです(笑)。台湾華語の方がもっと強い感じ。だけど、自分の性格上、直球で表現する感じにしたくない部分もあって、曖昧でいて繊細な日本語の表現が性に合ったんです。なんか、いい意味の遠回りみたいな表現ができるから」

──なるほど。ゲシュタルト乙女の楽曲を聴いていると、韻の踏み方や言葉選びに、独学とは思えない語感のセンスを感じるんです。そこにMikanさんの気持ちが込められているからこそ、改めて日本語のよさにも気づかされるんですね。そこから大学時代、ギターのKaiakiさんと意気投合して、2016年にゲシュタルト乙女を結成されるわけですが、今年1月にKaiakiさんが体調不良のため脱退されました。現在はサポートメンバーとともに再スタートを切られたそうですが、今の心境は?

「最近、台北に引っ越したこともあって、未知な自分を探り出すような時期だなと感じています。急いでメンバーを決めるより、ジャンルやバンドに限られることなく、プロジェクトみたいな感じでいろんな人とコラボしたり、音楽の変化を感じながらやっていきたいなと思っていて。

バンド名の「ゲシュタルト乙女」もそんな理由からなんです。バンドは1つの集合体だけど、メンバー1人ひとりが違う音楽の影響受けて、 違う構成で形成されていますよね。その意味で、ゲシュタルト(=個々の要素の総和以上のまとまりを持ち、変化を通じて維持されるすがたかたち)と、さらに、音楽を幼い自分からだんだんと成長していく変化を得られる“乙女“に例えて付けました。

今回の新曲『窓』もまさにそう。前から一緒に何か作りたいと思っていた colormalのイエナガさんにアレンジをお願いしました。リフの感じや拍子の変化とかすごくかっこよくなって、理想の形にしてくれました」

──最新作の『窓』は、ギターの歪みが際立つイントロの重みに、Mikanさんの気だるく甘やかなヴォーカルが調和するミディアム・テンポのナンバー。“CIRCLE ’23”で見せたソロの顔とは違って、バンド体としての刺激的でディープなサウンドが味わえますね。さらに、ジャケットのアートワークは2ndアルバム『Amoeba』と同様、イラストレーターの我喜屋位瑳務さん(ドラマ「大豆田とわ子と三人の元夫」主題歌『Presence』アルバムのアートワーク制作を担当)が手がけた作品。パステルカラーが爽やかで、少し大人になったMikanさん自身をイメージさせる女の子のビジュアルも合わせ、今作の世界観を感じられる1枚になっています。

「メンバーの脱退だったり、さまざまな変化がある中で、台北でいろんなミュージシャン仲間が精鋭的に自分の音楽と向き合う様を見て、自分もそうしようと思ったんですね。その前向きな気持ちを曲にしたいなと思って作った楽曲です。歌詞も誰かと会話しているようで、過去の自分と今の自分、未来の自分へと繋げていく内容になっていて、ここからがまた始まりです」

──6月、7月は台湾と日本でツアー「未来の窓」が決定しています。6月23日は福岡でクレナズムと対バンのライヴですが、バンドでの出演になりそうですか?

「はい、バンド・メンバーは『moshimo』などソロの作品に携わってくれているアーティストと一緒に演る予定です(Gt. 鄭大刀(from小熊乖乖) Ba. omoi (from P!SCO、GOTA、閃閃閃閃) Dr. 小潘(from 粉紅噪音))。フル・バンドでのステージも感じてほしいという気持ちがあるので、今回のツアーでみなさんとお会いできるのを楽しみにしています!オフィシャルサイトでは、旅の相談窓口も開設しているんですよ。台湾でのライヴも機会があれば、ぜひ来てみてほしいですし、日台の架け橋みたいな存在になれたら嬉しいです」

──福岡からはツアーの開催地である台北や高雄にも直行便が出ていて、フライトも2時間ほど。台湾は身近に感じますし、ライヴを目当てに旅を計画するのもいいですね!そして日本でも、ゲシュタルト乙女の進化、活躍を楽しみにしています。

最後に、Mikanさんが台湾の食べ物の中で最も好きな「水餃子」とお気に入りのバー情報を教えていただきました。謝謝!

■水餃子店
「皇家水餃」(台北市信義區和平東路三段421號)

「巧之味手工水餃」(台北市濟南路二段6號)

■バー
「Yoi酔」(台北市大同區南京西路185巷8號)

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RELEASE

Digital Single

2023.5.31 Release

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LIVE INFORMATION

先行あり

ゲシュタルト乙女 7周年台日記念ツアーライブ 「未来の窓」
Gestalt Girl 7th Anniversary Tour Live “Window of the Future”

2023年6月23日(金)
福岡 Queblick
※ゲスト:クレナズム

PROFILE

ゲシュタルト乙女

2016年1月に結成した台湾のロックバンド。実験的でジャンルレスなサウンドと日本語で描く独自の世界観を放つ歌詞が、台日の音楽ファンの心を掴む。初期の作品はマスロック、デジタルロックなどの要素が特徴的だったが、2019年以降の作品はより広がりのある空間系サウンドやシューゲイザーの要素が深まっている。代表作『生まれ変わったら』がSpotifyバイラルTOP50にて初登場7位を獲得、またJ-WAVE TOKIO HOTにて80位にランクイン。Spotify Japanでは最も注目すべきバンド「Early Noise2020」に選出され、同年4月には台北にて開催されたワンマン・ライヴで約700人の動員を記録。2023年5月、最新作『窓』をリリースした。Mikan Hayashiのネーミングは、自身の苗字(林)とアニメ「あたしンち」の主人公「みかん」から。