その揺るぎなきスタンダードが響く、新世界。
中田裕二
取材/文:なかしまさおり
INTERVIEW
<<この記事は、BEA VOICE2020年12月号に掲載したものです>>
前作『DOUBLE STANDARD』から、わずか7ヵ月。11月18日に最新アルバム『PORTAS』(ポルタス)をリリースした中田裕二。
ポルトガル語で“門、ドア”の意味を持つタイトルは「良くも悪くも、人生はいろんな門をくぐっていくようなものだ」との考えから付けたという。まさに1年前の今頃は想像もしていなかったポスト・コロナの新世界。その中で、多くの人がそうであるように中田自身もまた、新たな価値観、新たな生活様式の下、さまざまな門(それも“初めて”の門)を日々くぐり続けている。もちろん、本作におけるリモート・レコーディングへのチャレンジもその一つだろう。これまでとは違ったオンラインでのやりとりに、戸惑いはなかったのか?
「スタジオで直接コミュニケーションを取るのに比べると、細かい部分のやりとりなどはさすがに面倒でしたが、今回参加して頂いた皆さんとは信頼関係ができていたので、特にバラード曲のパートごとのアレンジなど、各自にお任せする部分も多かったです。しかも、皆さん2〜3日で録り終えてすぐにデータを返してくださったので、思いの外スムーズに進めることができました」。
歌詞についても「本作のテーマが、まさに“コロナ禍のこの時代を人はどう生きていくか”だったので、最初から“メッセージ性は強くなるだろうな”とは思っていました。ただ、押し付けがましくなく、ナチュラルに響く言葉。リアリティも比喩もありつつ、ただただフラットに自分の立ち位置において素直に表現する。計算、というよりは、自分の皮膚感覚に近い部分で作っていこうと思って書きました」と軽やかな口調で振り返る。
そんな中田にとっても“待望の”全国ツアー振替公演がいよいよ来年1月、福岡を皮切りにスタートする。
「まだまだ心配の尽きないこのご時世ですが、少しずつでも皆さんに音楽を届けていくことが僕の仕事なので、一緒に楽しい時間を過ごせたらなと思っております。もちろん(新型コロナウイルスに対する)感染対策もしっかり行いますので、是非、お越しください!」。
ただし、今回はバンド編成ではなく、単独での弾き語り仕様。それだけにソロデビュー10周年にふさわしい“濃厚な時間”が味わえそうだ。是非、期待して待っていてほしい。
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