粘りに粘って、限界突破で120点。メンバーが「100点以上を目指して、レコーディング前夜まで楽曲と向き合った」と語る、4thアルバム『TORCH』がついに完成した。バンド史上最長の制作時間を費やした本作は、緻密に練られたサウンドと、“ある偶然”が噛み合った神業的な一枚に。彼らの新たな可能性を感じさせる楽曲群、5月から始まる全国ツアーについて、朝日（Gt）ともっさ（Vo,Gt）に話を訊いた。

──待ちに待ったニュー・アルバムの登場です。フル・アルバムとしては、『FREAK』から2年9ヶ月ものブランクがあるんですね。

朝日：メジャー・デビューアルバム『ZOO!!』を、数ヶ月という短期間で完成させないといけなかったので、次の『FREAK』では、もう少し時間をくださいってお願いしていたんです。結局、1年くらい制作に充てることができたけど、それでもまだ足りなくて。だから今回はさらにお願いして、1年半くらい時間をいただきました。

もっさ：おかげでメンバー5人が顔を突き合わせて、どんな手順でどう作れば曲が良くなるかなど、一曲一曲とじっくり向き合うことができました。試行錯誤して、いろんな選択肢を出して、余計に散らかっちゃうけど、そこからまた整理していくという。その結果、音の長さなど細かいところまで決めることができたし、自分のギターのフレーズもしっかり考えることができました。

──確かにドラムのリズムやシンセの音色、ギターの鳴らし方など、サウンドの一つ一つに、かなりこだわっている印象を受けました。

もっさ：今回初めてドラムテックの方にサポートしてもらいました。以前から、外部の方に入ってもらいたいよねっていう話をしていたんです。今回、どの楽器からにする？となった時に、やっぱり土台のドラムからだろうって。今までは、タケちゃん（カズマ・タケイ）が今までの経験と感覚で音作りしてくれていたけど、ドラムテックの方がいたことで、すんなりと音に落とし込めました。タケちゃんにとっても、すごくいい経験になったと思います。

朝日：土台の音がスパッと決まると、曲の道筋がはっきりしてくるし、それ以外のことにじっくり向き合えるんですよね。例えば自分のギターでいくと、今までのように思うままに弾くんじゃなくて、フレーズをしっかり決め込んでからレコーディングに臨むことができました。

──これまでは、ライヴ感やスタジオの乗りに重点を置いていましたよね。

朝日：今回は、ちょっとその気持ちを抑えてみようかなと。

──実際に試してみていかがでした？

朝日：ひとつの音源としてみると、間違いなく良くなっていると思います。バラエティに富んでいるけど、どの曲にもネクライトーキーらしさがあって、散らかっていないんですよね。編曲にはメンバーしか携わっていないので、純度が高くて、ネクライトーキーのまま進めたという実感があります。

──もっささんのヴォーカルは、これまで以上に多彩な表情を見せてくれますね。

もっさ：確かに1stアルバム『ONE!』やデビューアルバム『ZOO!!』の頃は、かわいらしい感じの声が多かったと思います。たたライヴでは、もうちょっと激しい歌い方もしていたんですよ。今回は、いろんなタイプの曲がそろっているので、がなるような歌い方をしたりキーを下げたりと、歌い分けることを意識して、今までライヴで培ってきたことを活かすことができました。

──さて、そんなアルバムのタイトルは、『TORCH』と名付けられました。どんな想いが込められているのでしょうか。

朝日：コロナ禍の影響もあってか、『FREAK』が内に籠った作品になったので、次は外に向けた明るいアルバムにしたいなと思っていたんです。だからタイトルは“光”をイメージさせるものにしたくて、温かみや安心感のある言葉の響きから、わりと最初の段階から『TORCH』という案が頭にありました。そこから収録曲が半分くらいそろったところでみんなに話すと、『bloom』をはじめ、これだけ周りを照らす曲があるんだから『TORCH』がいいよねって。

──オープニングから心地よい疾走感があって、“光”のイメージにぴったりですね。

朝日：真っ直ぐ進むような曲を作ってみたかったんです。タイトルは『ちょうぐにゃぐにゃ』ですけど（笑）。2曲目『bloom』が、何も気にせずに転びながら全力疾走する曲だとしたら、こっちはマラソンのようにペースを考えながら走るイメージ。疾走感と腰を据えた感じが両立する、ギリギリのテンポになったと思います。

──今お話に出た『bloom』は、Netflixアニメ「スコット・ピルグリム テイクス・オフ」のオープニングテーマとして書き下ろされた曲だそうですね。捻くれながらも突き進むという曲のイメージが、アニメの世界観とすごくマッチしていると感じました。

朝日：主人公がバンドをやっている作品なので、曲をイメージしやすく、作っていて本当に楽しかったですね。

──アルバムの前半は、そのままテンポよく進んでいき、折り返しの7曲目『幕間』でひと息つきます。曲ではなく、食器を洗うという何気ない日常の音が収められていますね。

朝日：何気ない音に聞こえて、実は4音くらい重ねているんですよ。自分が洗い物をしている音とか、もっさの鼻歌とか、子どもたちの遊ぶ声とか。

──洗い物をしているのは、もっささんじゃないんですか？

もっさ：私はあんな乱暴にお皿を置かないです（笑）。

朝日：普通に洗っているだけなんだけどな…。

──失礼しました（笑）。このトラックには、どんな意図があるのですか？

朝日：もともと収録する予定はなかったけど、1曲目から13曲目まで並べた時に、徐々に朝の明るい時間帯から夜の暗い時間帯に変わっていく感じがしたんです。だからアルバムの真ん中に、お昼を食べた後に洗い物をしているトラックをもってきたら、もっと良い流れになるんじゃないかなと思って。それと、情報量の多い曲が続くので、一旦、頭の中を整理するという意味でもぜひ入れたいなと思ったんです。

──1日の流れというのは、意図的ではないんですね。

朝日：本当に偶然で。『幕間』までは外が明るくて、続く8曲目『あべこべ』が夕方くらい。9曲目『わっしょいまっしょい』が仕事帰りの時間帯で、これから飲みに行きますかと。その後は徐々に夜、深夜へと変わっていき、ラスト『石ころの気持ち』で朝の光が見えてくるという。何となく流れの気持ち良さがあったから、みんなもこの曲順がいいじゃんって、すんなりと決まりました。

──流れでいくと、9曲目『わっしょいまっしょい』で「明日も仕事を頑張りまっしょい」と歌っておきながら、次の『ねぇ、今どんな気分？』では「最低な一日になっちゃった」で始まるという繋がりが、ネクライトーキーっぽくて印象的でした（笑）。

朝日：積み上げたものを、全部ぶっ壊すみたいなね（笑）。比較的、アルバムの後半に落ち着いた曲が並ぶので、フックになる曲があればいいなと思ってここに置きました。

もっさ：この『ねぇ、今どんな気分？』は、アルバムに入れる予定はなかったんですよ。もっと優しい感じの曲があったけど、レコーディング前日の夜に、朝日さんが「こっちの曲に変えたい」って…。

朝日：「この曲いけます？」って、みんなに謝りながらお願いしました（笑）。

もっさ：そして12時間後くらいには、もうその曲をレコーディングしているという（笑）。

朝日：予定していた曲も良かったけど、アルバム全体の流れを考えた時に、ネクライトーキーでやったことのないような曲が、この位置にあったらいいなと思ったんです。予定どおりに進めようとも考えたけど、前日の夜に「できたな、曲」ってなって。メンバーも、もしこの曲がアルバムに必要ないと判断していたら、きっと苦言を呈していたはずです。

もっさ：私たち全員に、こんな曲が欲しかったという共通認識があったんですよ。だからレコーディングの直前だけど、アルバムが良くなるほうを選択しました。

──かなりぎりぎりまで粘ったんですね。

朝日：アルバムをもっと良くするには、どうすればいいかを考え続けた1年半でした。今までも100点を目指してきたけど、今回はそこからプラス20点に目を向けることができました。もうこれ以上は無理だっていうところから、ぎりぎり20点が加わったという感じですね。

──その120点のアルバムを携えて、5月から「TORCH」リリースツアー 「ゴーゴートーキーズ! 2024」をスタートさせます。どんなツアーにしたいですか？

朝日：先行配信した曲を既にライヴで披露しているけど、会場の熱気がすごいんですよ。だから今回も、エネルギーに満ちたツアーになりそうですね。それはもう、ライヴが終わって帰る頃には、お客さんの肌がツヤッツヤになっているくらいに（笑）。特に福岡のお客さんは、毎回メンバー内で「エネルギーすげえな」という話が出るほど、全力でぶつかってきてくれます。そして鹿児島は、待望の初ワンマン。こちらも今からすごく楽しみです。

もっさ：これまでのツアーで、味わえなかった体験ができるんじゃないかという期待があります。『TORCH』にはライヴ映えする曲がたくさん入っているし、『悪態なんかついちまうぜ』『わっしょいまっしょい』『ねぇ、今どんな気分？』『紫』あたりは、ライヴでどう化けるのかとワクワクしています。ライヴハウスでの体験は、ほかに代わりがありません。ぜひみんなで盛り上がりましょう。

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