春爛漫の未来を予感させるみずみずしき萌芽
衝動と普遍性を湛えた1stミニアルバムDrop!
《憎たらしいくらいのこの日々に祝福を》

爛漫天国

取材/文:山崎聡美
Artist Photo撮影:朝岡英輔

春爛漫の未来を予感させるみずみずしき萌芽<br>衝動と普遍性を湛えた1stミニアルバムDrop!<br>《憎たらしいくらいのこの日々に祝福を》

福岡を拠点に活動する4ピース・バンド、爛漫天国が、初のミニアルバム『日々、折り返すごとに』をリリースする。全7曲(+ボーナストラック1曲※CD限定)を収録した本作は、初期衝動を記録したバンドの萌芽的作品。同時に、ロックバンドのダイナミズムに、幅広い歌の表現、豊かな詩情と反骨性、メロディーの普遍性を湛えた快作である。昨年9月、初のフィジカル作品である両A面シングル『天使/風化した街』をリリースした際にも紹介した注目株だが、その動向からいよいよ目が離せなくなってきた。


爛漫天国は、ヴォーカル・ギターのモモノマナトを中心とし、2024年に結成された。現在のメンバーは、モモノのずば抜けたソングライティング力と歌の求心力に惚れ込んで参加を申し出たという清大納言(Dr.)、miyamo(Gt.)、サポートメンバーの魅惑(Ba.)。モモノを除く3人はJULARK.(ジュラーク)というバンドで活動しており、大納言とモモノの出会いによって爛漫天国に関わることになったそう。JULARK.でVo.&Gt.だったキヨハラヒデキ(爛漫天国では別名義の清大納言として参加)は、モモノをサポートするためにDr.にシフトしたというからその惚れ込み様は想像に難くない。


モモノマナト:僕は高校生の頃からずっと弾き語りをやっていて。16歳ぐらいからライヴハウスに通って、オリジナル曲を創って、他県に(ライヴをやるために)遠征して、東京まで行ったりもしていました。フォークが好きなので、それに連なるような曲ばっかり創ってましたね。同時にバンドをやりたい気持ちもずっとあって。高校が福岡の音楽学校だったので、校内でコピーバンドを組んで文化祭とかでやったことはありましたが、本気でバンドをやろうと決めてメンバーをかき集めたのは高校卒業ぐらいのタイミングで。単純にバンドを組みたいというだけじゃなく、自分の曲をバンドで表現するのが一番しっくりくる気がした。実際、バンドで自分の曲をアレンジして演奏して、それはけっこう衝撃でした、こんなに輝いてくれるのか、と(笑)。曲の解像度が上がったというか…だからこそ人の耳に届いたり目に留まったりすることが多くなっていったんだと思います。


そのスピード感が凄まじい。結成からわずか1年で、配信リリースされた『天使』『風化した街』というたった2曲の音源とそのMVがSNSや口コミ等を通じて拡散、その名はインディーロックファンに瞬く間に知れ渡った。それこそ筆者も、東京の知人に「爛漫天国ってバンド、知ってる?」と訊かれたことで彼らを知り、その後すぐにライヴを観に行った。昨年5月のことだ。野性味と躍動感、際立ったみずみずしさはバンドを観る歓びを満たして余りあるもので、小手先ではない、バンドとしての有機的なグルーヴがすでにあった。同時に、演奏の粗さに比べて楽曲の完成度が異様に高く、ヴォーカルの抜けの良さと歌の求心力の高さに驚きがかすめたことを、弾き語りというモモノマナトの原点を聞いてありありと思い出し膝を打った。彼はシンガーソングライターとして、明確なテーマをもって創作に臨み、メロディーと言葉において物語の骨子をしっかりと組み上げ、こぼれ落ちる自身の抒情を誠実に汲み取っている。それをロックバンドという無限の可能性を秘めた有機体にのせているから、バンドの完成度よりも楽曲の熟成度が高いのだ。

爛漫天国「天使」Music Video

モモノ:弾き語りは、声とギター、声とピアノとかしかなくて、それで伝えるしかないじゃないですか。バンドなら他の楽器でできる表現も歌とメロディーに凝縮しないと、弾き語りではやれない。僕の曲、爛漫天国の曲はそれが根源にあるから、(バンドサウンドの中でも)歌詞が伝わりやすいというか、文脈がわかるように書けているんじゃないかなと思います。そこが自分のコアで、誇りでもある。曲の創り方は最初から変わってなくて、ギター弾きながら、歌詞、メロディーが同時に出てくる感じです。で、後から日本語としておかしくないか、文脈が通っているかとか、考えながら曲として仕上げていく。現代的なやり方ではないですよね。今はPC上で創る人も多いだろうし、バンドのアレンジありきで創る人も多いですし。でも僕の曲創りは、思いつきでやっている節も多くあるので、そういう意味で(創作の過程を)人には伝えづらいものではあります。

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まず、モモノのリリックにある、歌詞である前に韻律をもった詩としての心地好さ。何気ないフレーズの繊細なニュアンス──たとえば《笑ってくれないかい》ではなく《笑ってはくれないかい》と、諦念の滲む《は》を忍ばせて歌う『月の話』や、ただ過ぎゆくだけでない時間の重さを《日々を折り返すごとに 錆びついていきました》と歌う『風化した街』──を研ぎ澄ました表現は、すでに爛漫天国の大いなる武器となっている。


モモノ:詞のあり方として僕が一番思っているのは、物語にしたいということで。一曲を通してこことそこで文脈が違うとかいうのが嫌いなんですよ。本を読むのが好きっていうのもあって、物語として一曲をちゃんと完結させたいという思いが強いし、詞を書くうえで一番意識しているところですね。元々は…鬱屈とした気持ち、苛立ちとかを、その時々に曲にしていかないとやれなかったというのはあるかもしれないです。そうしないと自分が保てないというか何もできなくなってしまうんで。大きな出来事じゃなくて些細なことなんだけど、曲にして全部消化しちゃった感覚はありますね。だからもう、書き続けないと生活できない(苦笑)。

爛漫天国「月の話」Music Video

苛立ちや満たされなさ、日々の小さな違和感が、爛漫天国の通奏低音であることは確かだ。そうでありつつアンサンブルとして明度と強度の高いポップネスを宿す。さらに、自身を鼓舞し聴く者の心を掻き立てるような、ダイナミズムあふれるギターリフも真骨頂だ。


モモノ:ギターリフに関してはキャッチーさが一番だと思っていて、それはメンバー間でも一貫してますね。だから、曲創りの段階で僕が決めているものやバンドでアレンジするときにメンバーから出てくるもの、ギタリストに一任している部分もある。キャッチーさというか…歌えないリフが駄目なんですよね。歌えるリフじゃないと、人は口ずさめないから。それこそ『ワルツ』なんて変拍子もありますけど、あのギターリフがあるから聴きやすい、とか。メンバーそれぞれに好きな音楽のジャンルはバラバラでもそういう一貫性があるのは、爛漫天国としてこういう音楽を創りたいっていうところでは同じ方向を見ている証拠なのかなと思います。


そしてもう一つ、爛漫天国の“聴きやすさ”の理由は、メロディーの普遍的な聴き心地の好さである。ノスタルジィだけでなく、視界が開けるような新鮮な眩さがあり、かといって突拍子がないということでなく脈絡はある。和音の美しさは無論、言葉のリズムやアクセントも損なわない絶妙なメロディーラインなのだ。


モモノ:“このメロディーは〇〇だよね”みたいな、ネットやサブスクのおかげでそういう指摘がされやすい時代じゃないですか。僕、そういうのがけっこう心に刺さるので…(笑)。独自でありつつルーツも感じさせるメロディーラインでありたいというのは思っていて。たとえばandymoriっぽさがあったとしても、自分独自の色を出すことで爛漫天国らしさは生まれると思うので。聴きやすさプラスの何か、とかはやっぱり意識してますね。僕、幼稚園の時からクラシックピアノをやっていたんですよ。元を辿れば0歳児のリトミック教室から始まってて(笑)。ピアノで培った音感が、今のメロディーラインに一番生かされてるのかなとは思います。コードに沿ったメロディーがすぐ出てくるし、キャッチーだけど独特っていうようなメロディーラインがつけられる。だから他のバンドの曲を聴いてて、サウンドとメロディーのズレが気になることはけっこうありますね。


現在のストック曲の有無を尋ねると「たくさんあります。もうリリースしきれないぐらい、ものすごくあります(笑)」と即答。その数はこちらの想像を遥かに超えていた。


モモノ:僕自身の曲創りでいえば、1日1曲ぐらいのペースで書けちゃうというか…書きたいと思ったらすぐに取り掛からないといけないという感覚があって…そう、自分の中に切迫感があるんです(笑)。“ああ、これ書かなきゃいけない”と思ったところですぐに書くから、今までの曲はほとんど、1曲に1時間かかってないですね。だから僕の弾き語りのストックだったら300~400曲はありますし、バンドでアレンジした曲も、あと2作品は今すぐレコーディングして出せるぐらいは余裕であります。


日々の営みと地続きの創作スタイルによる、膨大な曲数と圧倒的なアウトプットのスピード感。それは、豊かな伏流水を持つ大地とそこからあふれしみ出す湧水を思わせる。初々しさとは別物の、豊潤さである。


モモノ:今回の8曲のうちの半分、『天使』『風化した街』『死ぬまでポップに』『思い通りに』は、実はもう1年以上前にレコーディングしていて。バンドを組んで1カ月もしないうちに録ったものなんです。個人的に、『死ぬまでポップに』と『思い通りに』はあんまり納得いってないところもあるんだけど、でもせっかく録ったし、『天使』と『風化した街』のように出したい気持ちもあって。だから直近のライヴでやってる曲も数曲入れて、どうせならアルバムで出そうと。全く同じ時期ではないけど、どれもバンド結成後の1年半くらいの期間に創った曲ということになりますね。それでも、自分の曲の変化はやっぱり感じます。特に歌詞は…曲を創り始めた頃のものは、稚拙だなと思う部分が多い(苦笑)。初めて書いた曲なんて、今はとてもじゃないけど自分では歌えないし。ただ、自分の青春時代というか17~18歳の頃に書いた曲、その青さを、(作品にして)とどめておきたいという思いもあるんです。『思い通りに』なんて、今なら絶対書かないし書けないけど、まさにその瞬間の衝動を音楽にとどめてるんですよね。で、8曲すべてを聴くと、サウンドも含めて変化してるし、バンドとしてどんどん成長し続けてるのが感じられる。自分がやりたい方向に幅が広がっていっているのがわかるんです。

爛漫天国「風化した街」Music Video

「売れたいし、たくさんの人に聴いてほしいっていうのは、エゴとしてある。自分たちが好きなバンドのように大きくなりたいし、追いつきたい、追い抜きたいっていう気持ちも」と、モモノは臆面なく口にする。決然とした言葉は、自信があるからというより、爛漫天国というバンドを牽引しまだ見ぬ景色を見るための大いなる覚悟をもって放たれているように感じられる。


モモノ:爛漫天国を、自分が背負っているという覚悟はあります。他の3人はJULARK.というバンド活動の歴史があるうえで今爛漫天国として一緒に活動してくれているわけだから、やっぱりメンバーにはちゃんといい思いさせなきゃな、というか(笑)。みんなに、このバンドでやりたいことをやらせたい。感謝の気持ちが大きいんですよ、メンバーには。独りでやってる時間も長かったから、今4人で音楽できていることがめちゃくちゃ嬉しくて。あと最近は、衝動だけじゃなく、ちゃんと曲を構築していくことの重要さとか面白さとかも感じていて。細かいところをバンドでもっと詰めていこうっていう意識でアレンジをしてますね。


本作でいえば、ラストの『ワルツ』、そしてボーナストラックの『憎たらしいくらいのこの日々に』へと続いていくダイナミクスが、文字通りクライマックスであり未来への布石でもある。バンドの磁場が大きくなりエネルギーが解放されていくような昂りを感じるにつけ、爛漫天国の往く道そのものが楽しみで仕方なくなる。
本作リリースの翌日2月26日にはレコ発自主企画「純風爛漫 Vol.1」を開催。その音やライヴ、考え方に刺激を受けたという3組を招聘し、縁の深い四次元にて敢行する。爛漫天国にはライヴでしか味わえない即発的なバンドの魔法があり、見続けることで感じられる有機体としてのバンドの蠢きがある。その萌芽の美しさを、ぜひあなたの胸に焼き付けてほしい。

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LIVE INFORMATION

レコ発自主企画「純風爛漫 Vol.1」

2026年2月26日(木)
福岡 public space四次元
w/ ザ・ダービーズ(from名古屋)/ BIG MOUSE GLORY(from東京)/ Pixie Monster(from田川)

PROFILE

爛漫天国

2024年春、福岡にて結成。現在のメンバーはモモノマナト(Vo.,Gt.)、清大納言(Dr.)、miyamo(Gt.)、サポートメンバーの魅惑(Ba.)。2024年末に公開したMV『天使』『風化した街』が反響を呼び、2025年9月には初のフィジカル作品としてシングル『天使/風化した街』を限定リリース。また、各地イベントへの招聘も活発となり、2025年には「BAYFES2025」「TOKYO CALLING」に出演。今年もすでに複数の大型サーキットイベント等への出演が決定している。