僕たちが守らなければならない道がある。
音楽を、未来に繋げるために。

NEIGHBORS COMPLAIN

取材/文:山崎聡美

僕たちが守らなければならない道がある。<br>音楽を、未来に繋げるために。


 大阪を拠点に活動するNEIGHBORS COMPLAIN。ブラックミュージックを多面的に解釈し、時代を捉えたサウンドとグルーヴィーかつソウルフルなライヴで、多くのリスナー、オーディエンスを魅了している。ストリートやライヴハウス等を主戦場としてきた彼らにとっても無論、2020年は困難の連続。打ちのめされそうになりながら、それでも活動を止めることなく立ち向かい続け、今年6月には九州ツアーを開催予定だ。今回、Gotti(Gt,Cho)へ書面にてインタビューを敢行。まず、この1年の状況や心境の変化を教えてもらった。


Gotti「バンドを支えてくれている方々と打ち合わせをするなかで、2020年の夏頃までは“なんとか頑張ろう”と前向きな会話ができていたのですが、夏以降はネガティブな会話が増えてきました。この状況はいつ終わるのか……終わりが見えない、全くわからないことで、精神的に追い込まれてしまっている方が多くなっているように感じたんです。自分もその1人でしたね。その時は、“ファンの方のために(なんとか頑張ろう)”と言える余裕すらなくなって、音楽カルチャー自体が衰退していく危機感も抱きましたし。自分はなんとか生きていけるとしても、ライヴハウスの人はどうだ?イベンターの人は?CD屋、レコード屋の人はどうなんだろう?自分に何かできることがないかを考えても、良い案がなかなか出てこない状態で……それが現状でもあります」

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大阪を中心に、関西では早くからアーティストやライヴハウス、ひいては音楽の文化そのものを守ろうという独自の動きが大きかったように思う。現地で彼らは実際、どんなことを感じていたのだろう。


Gotti「どうでしょうか……。関西は行動力がある人が多いのか……。でも、逆境に負けたくないという人は多いのかもしれないと思います。ただ、関西以外の人ともやりとりをしましたが、皆さんたくさん考え、行動していて、刺激をもらいました。こういう情況ではあるけど、音楽の文化を守ろうという気持ちを、多くの人が抱いています。その気持ちが崩れると、音楽をファンの方に届けることができなくなりますから。それに、未来のミュージシャンが活躍できる場所を残してあげたいという想いも強くあります。偉大なミュージシャンが作り上げた道を僕たちは歩いていて、その道を未来の子供たちへと繋げなくてはならないと思っています」


正解どころか道筋すら見えない情況下、自分になにができる?
誰もが深く逡巡し、葛藤を突きつけられるなか、彼らはライヴツアーの再開を念頭に置いて様々な手段を講じながら、制作物としては結成当初にストリートで演奏していたという『What’s Going On』など洋楽カヴァー曲を収録した『Made in Street(Live Covers)』を、昨年10月にまずリリースした


Gotti「あれは、昔懐かしい気持ちで楽しくレコーディングしたかっただけですね。楽しさがなくなっていく日々が怖かったんです」


「恥ずかしながら」とGottiは言うが、ミュージシャンにとって演奏する歓び、バンドで音を出すことの楽しさを持ち続けることは、最大のモチベーションである。そのピュアネスが聴く者の心に火を灯すことも大いにある。その意で同作の意義は大きい。そして12月には、4枚目のオリジナル・アルバム『Destruction』をリリース。よりアナログなサウンドを追求し、ソフトはカセットテープを選択した。


Gotti「音楽業界に何かしらの刺激を与えたかったんですよね。レコード屋さんに行って、カセットテープだけで新作が展開されてたら面白いかなと。CDショップやレコード屋さんはワクワクする場所であるべきだと思いますし、“ナンだコレは?”と感じてもらえたら、そのお店にまた行きたくなると思うんです」


メンバー合致でネオソウルを欲したという『Destruction』は、一発録りによる『Made in Street』にも通ずるニュートラル感とスムースさが身体に残る。普遍性を求め、何もかも不確かな世界だからこそ自らの核を臆さず築こうという意志とも受け取れるアルバムとなった。


Gotti「僕たちけっこう、新曲を作るときにいろいろ考えてしまうんですよ。今何が流行ってるんだろうとか、こんな曲調、こんな歌詞が時勢に合ってるんじゃないか、とか。でも今回、『Destruction』は、そんなことを1ミリも考えずに、“これがやりたい”という気持ちだけで作った作品だと断言できます。なので、賛否両論すごかったですよ。“これは売れないよ”とかね(笑)。でも、それでもいいやと思ったんです。だから、これまで自分たちが縛られていたそういう意識を破壊するという意味で、“Destruction”と名付けました。完成後の作品を聴いても、やりたいことができたという達成感があって。いつか、世界のどこかの国のDJが“日本にこんなバンドがいるよ、いいね!”と面白がってくれたら嬉しいですね。それが世界平和に繋がると本気で思っています」

待望の九州ツアーは、6月15日大分公演から23日福岡公演まで、昨年6月の振替公演として6カ所をぐるりと廻る。新曲と、これまでにも増して強くなったというオーディエンスへの想いを携え、NEIGHBORS COMPLAINはステージに臨む。


Gotti「こんな僕らのためにライヴに来てくれる人がいるって、とても有難いです。“絶対喜んでもらうぞ”と意気込んでおります。この1年で応援してくれている人の大切さに、あらためて気づくことができました。だからこそ、感謝の気持ちを言葉ではなく、ライヴで表現したいですね。僕たちのその想いを受け止めにライヴ会場へ足を運んでいただけたら嬉しいです」

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LIVE INFORMATION

NEIGHBORS COMPLAIN「Pitch441」振替公演

2021年6月15日(火)
大分BRICK BLOCK
2021年6月17日(木)
鹿児島Live HEAVEN
2021年6月19日(土)
熊本Restaurant Bar CIB
2021年6月20日(日)
佐賀 浪漫座
2021年6月22日(火)
長崎県美術館エントランスロビー
2021年6月23日(水)
福岡Gate's7

PROFILE

NEIGHBORS COMPLAIN

2014年、大阪にて結成。Oto(Vo,Key)、Gotti(Gt,Cho)、Kash(Ba,Cho)、Taka(Dr,Cho)による4人編成。ミニ・アルバムやシングルのリリースを経て、2017年に1stアルバム『NBCP』を発表。以降、2nd『BRIDGE』(2019年)、3rd『WAVE』(2020年)とコンスタントにアルバムをリリースしながら、精力的なライヴ活動を展開している。