「今」出来るライヴの
最高到達地点をあなたに──

高橋優

取材/文:なかしまさおり

「今」出来るライヴの<br>最高到達地点をあなたに──

昨年7月にデビュー10周年を迎えた高橋優。コロナ禍での制作&リリースとなった最新アルバム『PERSONALITY』に込めた思い、また、同作を引っ提げ現在開催中の全国ツアー“THIS IS MY PERSONALITY”について、インタビューに答えてくれた。


──昨年は新型コロナウイルスの影響により、“LIVE TOUR 2019-2020「free style stroke」”が開催半ばで中止となるなど、悔しい思いをされたことも多かったかと思うのですが、あの非常事態宣言下で優さんご自身は、どのような日々を過ごされていましたか?


良くも悪くも、曲を書くことしかやることがない日々を過ごしておりました。デビュー10年目をライヴなどで、皆さんと一緒に楽しく盛り上がることは叶いませんでしたが、そのぶん、ゆっくりと今までの日々を振り返る時間をいただき、こんなにもマイペースに考えたり、製作だけに打ち込めるのもまた“10年ぶりかもしれないと思いつつ、期日も制約もない自由過ぎる曲作りをライフ・ワークとしていました。


──そんな中で環境も新たにデビュー10周年を迎えられ、まずは10月リリースのアルバムに先駆け、『one stroke』と『room』、『自由が丘』の3曲を3カ月連続で配信シングルとしてリリースされました。中でも『one stroke』は、先述のツアーにおいて、“未発表曲”として歌いながら、その都度、歌詞を書き換えていく…という新たな試みにもチャレンジされていたわけですが、この3曲には、それぞれどのような思いを込めてリリースされたのでしょうか?


まず『one stroke』については、“前回のツアーの続き…という気持ちが強く、(完成したら)いち早く皆さんにお届けしたいと思っていました。ツアーの完走こそ叶わなかったので、この曲にもまだ続きがあるよ…という意味も含めて、あえてMVは“未完成”のまま、曲と一緒に届けられたらな…と思って、一番初めにリリースしました。

『one stroke』(アレンジ by 蔦谷好位置)

──そういった意味では『one stroke』には“2019年から2020年のリアルな記憶”が詰め込まれている、と言えるかもしれませんね。優さんから見て、実際の歌詞以外の部分で、この曲を歌い始めた2019年時点とリリースした2020年時点で、何か“変わったな”と思うところはありますか?


そうですね…例えば「聞こえるよ 聞こえるよ」という歌詞を唄うと泣きそうになります。前回のツアーでは当たり前に聴こえていた声が、今は全く聴こえません。ただ…それでもライヴで届け合えるものが、“声以外にもこんなに沢山あるんだなぁ”ということをこの曲を歌うたびに、強く感じるようになりました。


また、『room』と『自由が丘』については、スタッフ票が強かったというのがリリースにいたるキッカケだったように思います。3カ月連続でリリースさせていただく上で、『room』はアレンジや歌詞の世界観含め、“良い意味で予想を裏切れる曲になるんじゃないかということで、決定したように思います。ケンカイヨシくんにアレンジをお願いしたのも反響が大きかったですし。毒を吐くのでなく、自分の中にあえて毒を注入するような経験……って、ありますよね?ないですかどうですか…ウフフ(笑)…。

READ MORE
『room』(アレンジ by ケンカイヨシ) 

『自由が丘』のアレンジは、はっちゃん(平畑徹也)です。こちらは“高橋としては希少なラヴ・ソングに仕上がっていることがスタッフ票が強かった理由ではないかなと思います。最初に届いたプリプロ音源は、なんとはっちゃんご自身が歌われた『自由が丘』でしたが、“これが世に出ることはないのだなぁ…”と思いつつ、いつか…はっちゃんのピアノ弾き語りによる『自由が丘』も皆さんに聴いてほしいなーと思っています。

『自由が丘』(アレンジ by 平畑徹也)

──そういえば、今回のアルバムでは、他にも曲ごとに異なるアレンジャーの方々にアレンジを依頼されていますね。ふだんから“人見知り”を公言する優さんにとっては、かなりチャレンジングな出来事だったのではないかと思いますが、よろしければ、それらにまつわるエピソードなどもお伺いできますか?


まずは『八卦良』ですかね。アレンジは、ベーシストの小島剛広さんにお願いしました。真っ直ぐなんだけど、落ち着くのでなく、不穏なままで曲が進む。そんなリクエストをさせていただきましたが、自分でも(曲を)書きながら、「あぁ、これはラジオではかけてもらえないだろうなぁ」とも思いましたね(笑)。


──ただ、テーマとしては『素晴らしき日常』以来、ずっと優さんが歌にしてきていることでもありますよね。それこそ『CANDY』、『TOKYO DREAM』、『Mr.Complex Man』、『ルポルタージュ』、『ストローマン』といった曲の系譜に連なるナンバー。目の前にいる人の心の傷さえ思いやれない社会の危うさ、“八卦良”という潔い響きに重なる“FUCK YOU”の叫びが、全体を通して刻まれるノイズと共に聴き手の心に強く刺さります!

『八卦良』(アレンジ by 小島剛広)

──『RUN』と『LIFE』については、どうでしょうか。池窪(浩一)さんと優さんの共同アレンジですが、どちらも軽快なサウンドで、この先に待つ“未来”が楽しみになるような曲だなぁと思いました。


『RUN』は、毎日走ってて感じることをそのまま書き出すところから始まった楽曲です。これは『LIFE』のテーマにも通じますが、やらない理由とか、もうやめちゃう理由というのは世の中に溢れていて。例えば、頑張ることをやめても、楽して良い気持ちになれるものって今、いくらでもある気がするんです。だから、辛けりゃ、やめちゃえばすぐ楽になれるのに、なんで諦めたくないんだろう?…そんな自問自答から言葉を紡いだように思います。


──他にも、河野圭さんアレンジによる『CLOSE CONTACT』、石崎光さんアレンジによる『ABC』&『本命』、鈴木Daichi秀行さんによる『DANCE WITH ME』、『アスファルトのワニ』、『ORION』…など、曲調もテーマも異なる曲がズラリ、収録されています。そんな中でラストを飾る『PERSONALITY』は宗像仁志さんによるアレンジ。アルバム・タイトルにも重なっていて、優さんにとって大切な場所である“ラジオ”に情景を借りつつ、メッセージとしては冒頭1曲目の『八卦良』にもつながるテーマが描かれるなど、本当に大事なことだからもう1度言っておくんだという、優さんの強い思いを感じる曲となっていました。この曲、このタイトルに込めた思いなどあれば是非、お聞かせください。


ラジオで話す人が“パーソナリティなら、それを受け取る人もまた“パーソナリティ”。それぞれの日常がそこにあるだけで、どちらがどうだと優劣をつけるものでもありません。互いのパーソナリティを貶し合うのでなく照らし合えたら、今よりほんの少し素敵な未来が待っている気がして、その思いを歌に込めました。

『PERSONALITY』(アレンジ by 宗像仁志) 

──宗像仁志さんとは、今年4月の配信シングル『ever since』でも、ご一緒されていますね。


『PERSONALITY』のアレンジがとても素敵だったので、またいつかご一緒したいと思っていたところ、『ever since』のデモが完成したので、自分の方からお願いしました。『ever since』自体は、ドラマ「生きるとか死ぬとか父親とか」のオープニングテーマとして書き下ろしたもので、家族がモチーフとなっています。相手に対する“好き。”とか、“大切。”とか…もちろん、それもあるんだけど、そういう一言だけでは済ませられない人間関係があるような気がして。温もりがあるんだけどドライだったり、ギスギスしているような会話が案外、固い絆の証だったり…。そこにある“心の有り様”を唄いたいなと思って書きました。

『ever since』(アレンジ by 宗像仁志) 

──9月17日には最新配信シングル『Piece』もリリースされました。こちらは、JICA海外協力隊のCMソングとして流れていた曲のフルサイズver.ということですが、優さんと同じく秋田出身のha-jさんがアレンジャーとして関わってらっしゃいます。


そうなんです。しかも、コーラスをしてくれた方も秋田出身のシンガー・塚本タカセさんで。“実はチーム秋田ソングになったね”と3人で話しました。パズルは本来、あらかじめ決められた絵や景色を完成させるためにカケラ(piece)を組み合わせていくものですが、僕らの日々になぞらえると、少しルールの違うパズルの方がワクワクしそうに思えます。誰も経験したことのない“今”に僕らは立っているのだとしたら、まだ誰も観たことのない景色を見つけるためのカケラを組み合わせていきたい。1日1日を自分の意志でクリエイトしていきたい。ときにデタラメに見えてもいい。ワクワクする未来を一緒に見つけたいですね。

『Piece』(アレンジ by ha-j) 

──さて、現在はそんなアルバムや新曲を携えて、全国26会場・29公演を巡るツアー“LIVE TOUR 2021-2022「THIS IS MY PERSONALITY」”を開催中かと思います。九州は10月23日(土) 鹿児島・宝山ホール、10月24日(日)福岡サンパレスホテル&ホールで開催されますが、今回のツアーで優さん自身が楽しみにされていること、ライヴにおける展望や、楽しみに待っているファンへメッセージなどあれば、ぜひお聞かせください!


今回はタイトル通り、「これぞぼくのパーソナリティ」という要素をふんだんに盛り込んだステージです。デビューして11年が経ちますが、改めて、“高橋優という音楽を存分に楽しんでいただけるライヴにしたいと考えています。このようなご時世であるからこそ、「今」出来るライヴの最高到達地点をあなたに、ご覧いただければと思います。万全の体制で会いに行きます。あなたに会える日を、心から楽しみにしています!


──ありがとうございました。

SHARE

LIVE INFORMATION

高橋優
LIVE TOUR 2021-2022
「THIS IS MY PERSONALITY」

2021年10月23日(土)
宝山ホール(鹿児島県文化センター)
2021年10月24日(日)
福岡サンパレスホテル&ホール

PROFILE

高橋優

1983年12月26日生まれ。秋田県横手市出身。シンガー・ソングライター。2008年より活動の拠点を東京へと移し、2010年7月にシングル『素晴らしき日常』でメジャー・デビュー。2016年からは地元・秋田の魅力を全国へと発信するための野外音楽フェス「秋田CARAVAN MUSIC FES」をスタートさせるなど、オーガナイザーとしての手腕も発揮中。今年9月17日には最新配信シングル『Piece』をリリースばかり。ちなみに今、ハマっているのはフィルムカメラ。デジタルとは違った「フィルムならではのひと手間やシャッターの音が好き」とのことで「一日の中で“カメラ時間”を設けて、それだけのために外に出るのが好き」というから、なかなかの本格派かも?!