TENJIN NEO CITY POP──
貫きつつも、流動していく。
コラボプロジェクトで見えた
バンドの潜在力。
Deep Sea Diving Club
取材/文:モリカワカズノリ
INTERVIEW
ロック、ジャズ、R&Bなどジャンルレスな音楽性を感じさせるメロウでフローキーな、福岡在住の4人組バンド「Deep Sea Diving Club」。彼らの挑戦とも言える、feat.三部作を締め括る『Just Dance feat. kiki vivi lily』が、10月8日に配信リリースされた。今回は、三部作への思いから、バンド結成のストーリー、初のワンマンツアーにかける熱量まで、メンバーの谷颯太(Gt,Vo)と出原昌平(Dr,Cho)に時間が許す限り語ってもらった。
──まずは、10月に配信になったばかりの新曲『Just Dance feat. kiki vivi lily』について。バンド史上もっともダンサブルな楽曲に仕上がっていますね。feat.三部作はそれぞれテーマを持たせていますが、この楽曲は「踊り」がテーマだけあって、メロディー、テンポ、そして、kiki vivi lilyさんのヴォーカル、すべてが心地よく、思わず体を揺らしたくなる曲だなと思いました。
出原昌平(以下、出原):トラックは自分が制作したのですが、最初はどうしても暗いイメージになってしまって。最初は、何パターンか出しながら、イメージを模索していったという感じです。
谷颯太(以下、谷):その中には明るい曲もあったけど、でも、どこかのタイミングで、出原の中で答えが出た瞬間があったよね。
出原:やっぱり自分が一番テンションが上がる時って、ダンサブルな曲を聴いた時だなと思ったんですよね。Michael Jacksonや、Marlena Shaw、Earth, Wind & Fireとか、学生時代はダンスミュージックが大好きだったので。そして今回の楽曲を作るにあたって、The Doobie Brothersをめちゃくちゃ聴き直して、アップビートでみんなが踊れる曲を作りたいと思って改めて作り始めたら、2日間くらいでトラックができました。
谷:それまでは1ヶ月くらい悩んでいたようなので、出原の中で一つの答えが出たことは本当によかったと思います。
出原:そうだね。あとは、kiki vivi lilyさんの曲も聴き直して、どういう曲にしようかと考えた結果、ダンサブルな曲を歌うキキビビさんも見てみたいというのもありましたね。
谷:それってある意味夢のあることだよね。「この人でこんな曲を聴いてみたい」っていう。だから、今回は三部作すべてに言えることですけど、コラボ相手の方々と一つの音楽をシェアしながら、その中でいろいろと挑戦できたことで、バンドとしてとても成長できたと実感しています。
──それを聞くと、80年代のディスコ音楽を現代版にアップデートしたような風景が広がってきますね。歌詞については、谷さんとkiki vivi lilyさんの共作ですか?
谷:歌詞は自分が書いたものをkiki vivi lilyさんとシェアして作り上げていきました。三部作すべてそういった形だったのですが、この曲はkiki vivi lilyさんとかなりディスカッションを重ねて仕上げていった感じですね。俺たち地元の後輩ではありますが、知名度も差があるのに、しっかりと寄り添っていただいて、もっと良くしていこうというプロ意識を感じました。第一弾と第二弾でコラボした、Rin音くんやMichael Kanekoさんももちろんそうですし、それぞれ違ったアプローチの仕方だったので、歌詞制作も本当に勉強になりましたね。
──今回は「踊り」がテーマということですが、「Deep Sea Diving Club」の楽曲って「ダンス」や「踊る」などのフレーズがよく出てきますね。ダンスミュージックはやはりバンドの音楽の根底にあるものですか?
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出原:そうですね。踊りって音楽作りと密接な関係があると思いますし、「踊れるか踊れないか」というのは、自分の音楽の判断基準になっていますね。ちなみに、最近は踊りたすぎて、作業するデスクをスタンディングにしました(笑)。いつでも踊り出せるように。
谷:実際、本当に踊りながら曲作りとかしてますから。その光景をよく見るしね(笑)。ダンスってそういうものだと思うんですよね。習っているわけじゃないから恥ずかしくて踊れないというのもあると思うんですけど、ダンスができる人から見たら、ぐちゃくちゃな踊りでも「最高!」って言ってくれるんですよ。だから、自分が歌詞で使う時は、「自信がないからできないことだけど、周りの人はそういう風に見てないよ」っていうニュアンスで書くことが多いですね。
──リスナーには、「Deep Sea Diving Club」の音楽を聴きながら、気持ちよく踊ってほしいですね。さて、feat.三部作について話を戻しますが、そもそも、どういった経緯でこの企画がスタートしていったんですか?
谷:シングルを何曲か出して、次はまた違うことをしてみようかなとなりまして。レーベルともコラボ案について話し合っていたところ、Rin音くんがInstagramで「コラボ相手募集」みたいな投稿をしていたので、それに乗る形で最初のコラボが実現しました。そこから三部作が始まるわけですけど、第二弾のMichael Kanekoさんについては、大井ちゃん(Gt,Cho)が大好きなアーティストさんということもあり、思い切って声をかけさせていただきました。
出原:マイキー(Michael Kaneko)さん自体、バンドとコラボをするのは初めてだったそうなんですけど、快く引き受けていただきました。最初、トラックと歌詞をシェアさせていただいたんですが、自分たちが思ってもいない形にアレンジしてくださって、それがめちゃくちゃ素晴らしかったんですよ。歌詞もそうですし、メロディーについても、ポップだけどロマンチックな雰囲気も表現されていて、ここまでの楽曲に仕上がったのが本当に感動ですね。
──バンドとしても実りあるプロジェクトだというのが窺い知れますね。さて、「Deep Sea Diving Club」は2019年に結成され、配信シングルやfeat.三部作など、すでにいくつもの実績を積んでいるバンドです。そのルーツにも触れたいのですが、結成までの道のりについて教えていただけますでしょうか?
谷:まず、俺と出原と鳥飼さん(Ba,Cho)は、福岡の音楽バーで一緒に働いていたんですが、もともと、出原と鳥飼さんは高校が同じで、コピーバンドとかをやっていたということもあり、俺と出会う前から付き合いは長いですね。大井ちゃんは、ライヴハウスやバーを道場破りみたいに渡り歩きながらバンドメンバーを探していたところ、俺がDJとして出ていたイベントでたまたま知り合いました。最初は大井ちゃんと二人でやっていこうと思ったんですが、ちょうどその頃に出原と鳥飼さん2人から「バンドしよう」って連絡がきたんですよ。最初は冗談かと思ったんですけど(笑)。二人にはサポートメンバーとして誘おう思っていたのもあり、せっかく声をかけてくれたので、それをきっかけに、ちゃんとバンドとして活動していこうと決めました。
──結成当初、大変だったことや苦労したことはありますか?
谷:一番大変だったのは、バンドのコンセプトを決めようとしていた時ですね。4人とも好きな音楽もバラバラなので、音楽性を決めていくのって本当に難しくて。でも結局、それを決めてしまうと、自分たちが後でつらくなるだろうというのを感じていたので、一つではないけど、大きいくくりでバンドの方向性が絞れたかなという感覚ですね。曲作りも最初は全然違っていて、スタジオでジャムりながら作っていこうとしてたんですけど、それだと無駄が多くて、結局同じことの繰り返しになるんですよね。アレンジも出原に頼り切りになってしまっていたので。そうではなく、それぞれがトラックを作って、みんなでコンペをして合格したら曲にしていくという方法にしてからは、割とスムーズにいくようになりました。その頃作った配信三部作の『cinematiclove』『おやすみDaydream』『T.G.I.F.』を作り終えた頃には、みんなスッキリしてましたから。
──元のトラックをみんなでアレンジしていくというアプローチに切り替わっていった感じなんですね。
谷:そうですね。あともう一つ、キーボードとかバンドにない楽器を曲中で使うのはどうなのか、というのも議論になりましたね。今の編成では、ライヴで完全に再現できないので。でもサポートを入れたり、アレンジを加えたりすることで曲としては成立するので、その問題もクリアできました。自分のやりたいことよりも、「この曲を良くするにはどうすればいいか」という目線で曲を捉えるようになったので、曲作りも当初より進化できていると感じています。
──ライヴでのパフォーマンスも楽しみです。まず年内最後のイベントとして、BEA主催のイベント『STEP by STEP』(12月26日、DRUM Be-1)があり、年明けには初のワンマンツアーが控えています。最後にメッセージをお願いします!
出原:今年はいろんなフェスやイベントに出させていただきましたが、DRUM Be-1は初出演なのでとても感慨深いですね。
谷:そうだよね〜。DRUM Be-1に出られるなんて本当にうれしいですし、一緒に出る「浪漫革命」と「WANG GUNG BAND」との共演も楽しみです!ワンマンライヴもかなり気合いが入っているので、ぜひ遊びに来てください!
出原:年明けからスタートするワンマンライヴもしっかりやっていきたいですね。本当はもっと前にツアーをやる予定だったんですけど、コロナの影響でここまで延びてしまいました。でもその分、バンドとして成長できていると感じるので、今となっては良いタイミングだと思っています。どのライヴもアレンジを変えながら楽しんでもらえるように工夫しているので、楽しみにしていただきたいです。みんなで踊りましょう!
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LIVE INFORMATION
PROFILE
Deep Sea Diving Club
谷颯太(Gt,Vo)、出原昌平(Dr,Cho)、鳥飼悟志(Ba,Cho)、大井隆寛(Gt,Cho)からなる、2019年に福岡で結成されたバンド。オルタナティブロック、R&B、ジャズなど、ジャンルに囚われないオリジナリティーあふれるメロディーと、谷のツヤがありつつパワフルなヴォーカルが魅力。feat.三部作として、2021年5月26日に第一弾『フラッシュバック’82 feat.Rin音』、7月14日に第二弾『SUNSET CHEEKS feat. Michael Kaneko』、10月8日に第三弾『Just Dance feat. Kiki vivi lily』をリリース。12月26日にはBEA主催のイベント「STEP by STEP」、2022年1月からは初のワンマンツアーがスタートする。変化を厭わず、挑戦を続ける彼らの活動から目が離せない。