『花降る空に不滅の歌を』[DISC REVIEW]

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『花降る空に不滅の歌を』[DISC REVIEW]

見ざれども、我は咲くなり。
ともに信じて、この道を行く。

結成17年目。オリジナル・アルバムとしては通算12枚目となる最新アルバム。前作『伝説の夜を君と』を掲げて廻ったツアーでお披露目。テレビ東京「隅田川花火大会特別編 2022」OP曲としても使用された『花火を見に行こう』をはじめ、『Party Monster Bop』『バードヘッドブルース』など、全10曲が収録されている。

リリースにあたって佐々木亮介は「自分のしょぼさや弱さや愛するものや逆ギレや順ギレや違和感などについて自分なりのロック・ミュージックとして歌うことにして、それっていつものことじゃんとも言えるけど、さらに追い詰めてもう一度追い詰めてこれ以上無理だというところでどうにか歌を書いた」とコメント。それだけに、これまで以上に赤裸々な表現で真情を吐露した楽曲も多く、改めて彼らの“音楽”に対する“覚悟”の強さ、深さを感じる1枚となっている。

例えば『バードヘッドブルース』や『如何様師のバラード』『Party Monster Bop』といった、彼らならではの疾走感あふれるキラー・チューン。その前後で静かに爪を研ぐ『月夜の道を俺が行く』『本気で生きているのなら』の2曲には、それが顕著に出ているのではないだろうか。情けない俺、ふがいない俺、そんな俺を断罪する俺…さまざまな“俺”との対峙に自問自答を繰り返しながら、それでも<俺の夢を叶えるやつは俺しかいない>と歩き出す前者。振り払っても振り払っても、まとわりついて離れない“夢の呪い”の中で、必死にもがく後者。偶然なのか、必然なのか、そのどちらもが“月夜”で、また“夢”を叶えることへの苦悩や葛藤、覚悟などを歌っているのが、いずれにしても興味深いところではある。

というわけで、お題回収。レビューのタイトルは近代日本文学を代表する作家のひとり、武者小路実篤が残した名言(「人見るもよし 人見ざるもよし 我は咲くなり」「この道より我を生かす道はなし、この道を行く」)から転じてつけた。どちらも、自分の行く道以外に自分を生かす方法はなく、人が見ていようがいまいが、その命をまっとうし咲くだけだという清々しい覚悟に満ちている。だが、もし、その行き先が同じであるなら、“共に行く”のも悪くないのではないだろうか。

そんな本作を携えての全国ツアーが2月23日よりスタートする。九州は大分、鹿児島、福岡の3公演を5月に予定。その前には佐々木ソロ弾き語りも各地で決定しているとのことなので、詳しくは公式サイトをチェックしよう。また、今作のジャケット・ワークを手がけている世界的アーティストの奈良美智。以前から佐々木とは交流があり、ファンにとってもおなじみの佐々木の愛機、ホワイト・ファルコンのボディにも直筆のイラストとサインが描かれている。気になる方は是非、ライヴ会場で直接チェックしてみてほしい。(なかしまさおり)

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LIVE INFORMATION

Tour 花降る空に不滅の歌を

2023年5月25日(木)
大分 Club SPOT
2023年5月27日(土)
鹿児島 SRホール
2023年5月28日(日)
福岡 LIVE HOUSE CB

PROFILE

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