『Bee and The Whales』[DISC REVIEW]
Galileo Galilei
COLUMN
7年ぶりの再始動!全国ツアーを前に新作リリース。
Galileo Galileiに見いだす《まっとうな人生》。
7年ぶりに活動を再開したGalileo Galilei。ファン待望の新作アルバム『Bee and The Whales』がいよいよリリースされる。再始動を決めたという’22年初夏から約1年をかけて紡ぎ出された全14曲。フルヴォリュームだが、7年分の軌跡と思えばむしろ必要な曲数で、ここに彼らは大仰さも衒いもなく、自身の道程とライフを多彩な情景に映し出す。
【初期からGGの歌詞世界のキーワードになっていた “輪廻するくじら” を、メンバー自身と定義し、 彼らが追いかける “かけがえのない存在” “希望” の象徴が蜂となっている】と手元の資料にはあるが、生きる最中での魂の流転する様をすくい音へ託す静かな痕跡が、筆者には特に印象的だ。
オープニングこそリスナーの感情を掻き立てバンド自身を鼓舞するような、アジテイトな『ヘイヘイ』で幕を開けるが、続く『死んでくれ』でパラドックスに満ちた感情の執着と終着点を吐露したかと思えば、3曲目の『色彩』ではすがすがしくスケールの大きなバンド感で聴く者を包み込む。ミドルテンポに鷹揚なアレンジを利かせ、気合い(勢い)よりも間合いや行間を生かすようなサウンドメイク、非凡な世界観ではなく日常を奏でるように落とし込んだ豊潤な人肌のアンサンブルは、実に風通しがいい。
透明感に満ちた伸びやかなヴォーカルが艶やかなサックスのフレーズと睦みあい、天上へ導くような悠久たるサウンドに溶け込んでいく『汐』(M08)や、アイリッシュフォークのエッセンスの効いた『愛なき世界』(M10)、R&Bフレイヴァーのモダンな音像に繰り返す日々の彷徨の足跡を刻んだ表題曲など、その楽曲群もまた豊かだ。
ラストの『あそぼ』で彼らは、Galileo Galileiというバンドそのものを《まっとうな人生》として恐れも喜びもそのまま肯定し謳歌する。諦念と解放を抱くこの曲は、今再びバンドを全うする覚悟の象徴ともとれる。(山崎聡美)
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