『Love me tender』[DISC REVIEW]

Uniolla

『Love me tender』[DISC REVIEW]

待望の2ndアルバムリリース!
Uniollaという森の中で冴え冴えと澄み渡る光

アンサンブルの風通しの良さ、メロディの豊かさ、そして新たなバンドの奏でる音と紡ぐ歌そのものへの歓喜にあふれた快作『Uniolla』から約1年8ヶ月。2枚目のアルバムである本作『Love me tender』は、Uniollaのもつ代え難い豊潤さと躍動感はそのままに、さらにパーマネントなバンドとしての深化を見せている。言い換えればそれは、ソングライター・深沼元昭の深淵をのぞかせているということだ。

パイロット曲として本作の“起”を担って疾走する『The 1st chapter』、頭上に蒼空を描く爽快なサウンド感、哀愁をはらんだギターの音色やメロディの展開、寛容なグルーヴ感が冴える『It’s  just the time』、抒情を静かに湛えながら永遠のスタンダードにも通ずるサビのポピュラリティがひそやかに輝く『So am I』……曲を追うごとに、本作においてわたしたちは、Uniollaという森に分け入ってその真理と出会う歓びを与えられているのだと、強く感じる。

なかでも、本作に深い陰影を及ぼしているのが、ドラマティックなイントロからの力強いアンサンブルの昂りと曇りなく澄み切ったヴォーカルが果てない大地にまっすぐ射す光を思わせる『容赦なく美しい朝』。そして、冒頭から極彩色の羽根を広げるように鮮やかなオルガンも圧巻、ノスタルジックなマンドリンに彩られたあどけない歌の踊るようにしなやかな、タイトルチューン『Love me tender』。

わかりあえなくとも分かち合えることの尊さを希求する前者。そして後者は、失ったものへの惜別や寂寥が轍に煙る、ともすればウェットになってしまいそうな情景すらも、音に託し詞(ことば)に転化して、ノスタルジィに留まることなく現在地からの光を見いだす。先に触れた、深沼の深淵(ってなにかとてつもない底なし沼のようだ)とはこれらの発露の在り様で、彼が長くその音楽に託しつづけてきたテーマが冴え冴えと澄み渡り、純然として在る。KUMIの透徹した歌の、敢然と未来に向けられる眼差しの強さは、彼女の歌い手としての凄烈さであると同時に、楽曲の純然たる光を受けてのものでもあろう。それはまた、本作を聴くひとりひとりにとって、過去を今に、今を未来へとつなぐための光ともなるはずだ。(山崎聡美)

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RELEASE

Love me tender

Album

2023.7.5 Release
Speedstar Records

01. The 1st chapter
02. 嘘はないはず
03. It's just the time
04. So am I
05. Leap(Alternate Mix)
06. ララ
07. 容赦なく美しい朝
08. Love me tender
09. まぼろし
10. No wrong answers

PROFILE

Uniolla