『FOLK 4』[DISC REVIEW]

ハンバート ハンバート

『FOLK 4』[DISC REVIEW]

歌い継がれるもの
歌い継いで萌えるもの

ハンバート ハンバートの人気企画盤であるカヴァーシリーズ『FOLK』第4弾。誰もが口ずさんだことのあるようなJ-POPや、二人のルーツのひとつである70年代の日本のフォーク等に加え、セルフカヴァー、さらに新曲も収める。ヒットチューンの手垢を全く感じさせないうえ、すくっと伸びるハンバート音楽という大樹の幹、枝葉、地中に張った根っこまでをもじっくりと感じられるのがうれしい。

たとえば、アコギ1本で歌い合い唱え合う『リンダ リンダ』の美しさは、誰かが心の内で歌って自身を奮い立たせる時にはきっと、バンドの音像じゃなくてこんなふうに鳴らしてるよなあと気づかせる、青い炎のような静かな熱さにある。メロディーの叙情性だけでなく、楽曲そのものが宿すリズム(鼓動)を二人は決して逃さない。感情をのせるのではなくて、リズムとメロディーとうたことば(歌詞)に、身体を、声をゆだねる。それは、ジャズもしくはボサノヴァあるいはシティポップスいずれかの風味にさらっと凡百の女性ボーカルで仕上げた、耳に障らないだけのカヴァーソングには決してない、《うた》への敬意でもある。

本作の大きな波は、セルフカヴァーの『ひかり』(アルバム『家族行進曲』収録)、新曲『見知らぬ街』、そして、関西を代表するフォークシンガー、大塚まさじの『うた』を編んだ中盤だろう。(『FOLK』シリーズの1作目収録の『プカプカ』は、西岡恭蔵の代表曲でもあるが、最初の録音は大塚まさじのグループ、ザ・ディランⅡのデビューシングルに収録されたものだ。)

カヴァーというよりも《歌い継ぐ》と言ったほうがしっくりくる。さらに歌い継ぐにとどまらずそれらを糧とした若葉が萌える。だから、二人のうたにはいつだって、先達が紡いだ生きていることの尊さが灯火のようにゆらめいている。

福岡・みらいホールでの2daysからはじまる今秋のツアー“ハンバートのFOLK村”にて、その《うた》のいまを、ぜひ。(山崎聡美)

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LIVE INFORMATION

ハンバートのFOLK村

2023年11月11日(土)
福岡 電気ビルみらいホール
2023年11月12日(日)
福岡 電気ビルみらいホール

PROFILE

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