『オールウェイズ』[DISC REVIEW]

奇妙礼太郎

『オールウェイズ』[DISC REVIEW]

バンド編成で紡ぐ、時代を超えるソウルへの讃歌
音楽の本質的な寛容さを湛える《オールウェイズ》

奇妙礼太郎BANDのバンマスである中込陽大がプロデュースを担い、その中込との共作曲を含め全作詞作曲を奇妙自身が手がけた、奇妙礼太郎源泉かけ流しのソウル満タンニュー・アルバム。聴けば、《オールウェイズ》という冠に宿る実感が、あなたの身体にも満ちることだろう。

華々しくスウィンギンなオープニングは、堤幸彦監督・のん主演の映画『私にふさわしいホテル』への書き下ろし主題歌『夢暴ダンス』。鍵盤のファンタスティックな煌めきが、瞬く間にダンスホールへといざなう。情熱と衝動が弾けてあふれHeart&Soulを燃やす、なんともゴージャスで贅沢な、かつ敬意に満ちた一曲だ。続く『スケベなSONG』では、管弦打のヴェルヴェットのように艶やかなプレイとスムーズな歌がスウィート&テンダーに融け合う。トロリと溶け出すほどにロマンチックが極まる。ミッドナイトブルーの孤独をひとつひとつ引き寄せる『愛と性』の甘美さもまた、時代を超えるソウルへの讃歌である。

奇妙のフリーキーなヴォーカリゼイション、それを引き出す奇妙礼太郎BANDの芳醇にして即妙のグルーヴ。熟した果実にも似たその味わいの深さが今作の肝のひとつだが、他方、昨年4月から約1年をかけて敢行された弾き語りによる47都道府県ツアーの余韻を孕んだ楽曲の求心力も群を抜く。日日の営みの中で生まれ、生きることそのもののおかしみとかなしみが知らず滲む、聴く者ひとりひとりが各々の愛おしさを覚えてしまう――歌、音楽としての本質的な寛容さと逞しさを湛えるタイトルチューンの『オールウェイズ』、怒りを祈りへと昇華させたような途方もない慈しみに満ちた『こどもラジオ』、歌い手としての原初的な希いを平易に紡いだ『ほどける』。それらもまた、今作の忘れがたい触感となるはずだ。(山崎聡美)

SHARE

LIVE INFORMATION

5th Album「オールウェイズ」Release Tour

2025年6月22日(日)
福岡 The Voodoo Lounge 

PROFILE

奇妙礼太郎