ピュアな初恋から、こじらせ男子まで。
愛すべきサウンドとワードで描いた“告白”EP。

reGretGirl

取材/文:なかしまさおり

ピュアな初恋から、こじらせ男子まで。<br> 愛すべきサウンドとワードで描いた“告白”EP。

EPとしては約2年ぶりとなる最新作『告白e.p.』を11月1日にリリースしたreGretGirl(リグレットガール)。キーワードとしたのは“告白”で、さまざまなシチュエーション、タイミング、関係性の中で秘めた大切な人への“想い”が、彼ららしい描写で打ち明けられてゆく。今回、インタビューに答えたのは全詞曲を手掛ける平部雅洋(Vo,Gt)。前回のインタビューでは、曲作りにおける「実体験とフィクションとの整合性が、自分の中でしっかり取れるようになってきた」と語っていたが、今作では如何に。先行配信シングル『ページワン』『ワールド』を含む収録曲全5曲について、話を訊いた。


──今作はEPということで、コンセプチュアルな作りになっていますね。


平部:はい。EPって、シングルよりは曲数が多くて、ミニアルバムよりは少ない。その“中途半端さ”が面白い形態でもあるし、それだけにコンセプチュアルな作りがしやすいと思うんですよね。それで、2年前に“生活”をキーワードにした『生活e.p.』という作品を出して、今回また(そういうコンセプチュアルなEPを)作ろうということになったんですけど、そこで最初にできた曲が『ページワン』でした。これは、実際に僕が経験した中学生の時の“初恋”をテーマに描いた曲なんですけど、これができた時に“告白”をキーワードに作れそうだなと思って、今回の制作がスタートしました。

『ページワン』

──サウンド的にも瑞々しい疾走感があって、オープニングに、ふさわしい1曲ですよね。平部さん自身の思い出とは言え、描かれているのは普遍的な青春の1コマなので、共感するリスナーも、きっと多いんじゃないかと思います。


平部:僕、曲書く時は、ほんまに自分の実体験をもとに書くことが多いんですけど、そうやって作った曲の中でも、たぶん(『ページワン』は)いちばん古い記憶かもしれないです。それこそ、リグレットって“失恋”(を歌うバンドだ)って言われますけど、“今まで付き合ってきた相手との思い出”(から作る)ってなると、けっこう大人になってからの話、成熟してからの話が多いんですよね。でも『ページワン』に関しては、本当に中学1年生とかの記憶──実際、僕が行ってた中学校にも渡り廊下があって、そこで(初恋の人と)すれ違うのを思い出しながら書いたりしてて、まだ“(13歳の)子ども”なんだっていう部分では、曲調とかも(疾走感をもたせるようには)意識しましたね。


──個人的にはギター・サウンドの多彩さ、ソロの部分もそうですが、後ろで鳴っているアコースティックな音色とか、<「いつか実らせたい」とか思っていないけど>のパートで聴こえるピュンピュンというシンセちっくな音色とか、そういう細かい部分へのこだわりも非常に興味深くて、楽しかったです。


平部:やっぱり、僕の中では、“初恋”イコール“疾走感”とか“爽やかさ”、“甘酸っぱさ”みたいなイメージがあるので、“小気味良いリズムで速く進んでいく”というのは、とくに意識しましたね。アコースティックギターに関しては、これまで、バラードに入れることは多かったんですけど、今回は、ちょっとアップテンポな曲にも入れてみようと思って、やってみたら、本当にいい感じになって。より軽快さが増したなと思います。


──2曲目『バブルス』では、さらに勢いが加速していきます。全体的には、reGretGirlらしさ満載のギターロックですが、ラップパートもあって、リズムも軽快。ライヴでもかなり盛り上がりそうです!

『バブルス』

平部:ライヴでも最近、やっていまして。お客さんの反応も良くて、すごく楽しいんですけど、実は…めちゃくちゃ大変なんです(笑)!というのも、後ろで弾いてるギターのフレーズ。これがけっこう細かくて。それをラップしながら、弾かなくちゃいけないってんで…もう(苦笑)。家でもこればっかり練習してます。ただ、ラップパートに限らず、全体的に“韻を踏む”というのをすごく意識して書いた歌詞なので、“聴き心地の良さ”には自信を持っています。


──こういう構成にしてみようというアイディアは、どこから?


平部:曲を作っていく上では“新しいことに挑戦したい”という思いが常にあって、こういうものもいつかはやりたいと思っていたんですけど、今回いいバランスで出せそうな感じがしたので挑戦しました。とくに、ラップや冒頭のロックなリフ、そういう部分で、ちゃんと“今までの自分らしさもしっかり残せた”というところが、自分の中では満足度が高い曲です。


──前作(『tear』)収録の『remind』もそうでしたが、それを出す時の“バランスとタイミング”というのは、やっぱり重要ですよね。


平部:そうですね。そういう意味では、やっぱり“今”やから、作れた曲だと思います。これを3年、4年前に同じ感じで作ろうと思っても、多分、ここまで上手くまとめきれてなかったんじゃないかと思います。


──前回、平部さんは「めっちゃ歌詞書くのが遅いんですよ」とおっしゃっていましたが、こういう曲では…?

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平部:なぜか不思議と早く書けるんですよねぇ(笑)。もちろん、歌詞の内容より、聴き心地を優先したから(すぐ書けた)というのもあるんですけど、自分の経験に、ちょっとだけ脚色をして、なおかつ“バブルス”が割れて出てくるような言葉を入れてみたり…と、自分の中では(これまでの手法から)一個、逸脱できたような曲の気もしていて、“ちょっと新しいな”とは思っています。


──今おっしゃった“バブルス”はタイトルにもなっていますが、アニメ『パワーパフガールズ』*のキャラクター名から付けたと伺いました。


*クレイグ・マクラッケン原作の漫画、およびテレビアニメ作品。“砂糖、スパイス、素敵な物”+“誤って入ってしまった「ケミカルX」”が混ぜ合わさって誕生した3人の女の子たち(ブロッサム、バブルス、バターカップ)の物語。

『パワーパフ ガールズ(リマスター版)』

平部:はい。子どもの頃から海外のアニメが大好きで、とくに『パワーパフ ガールズ』は好きな番組でした。“バブルス”はその中に出てくるキャラクターの名前の一つで、実はreGretGirlには『ブロッサム』(『soon』収録)という曲もあるので、そういうところでも関連性を持たせられたらなと思って付けました。

『ブロッサム』

──それを知っているファンの人たちにとっては、タイトルを見ただけでも“あ!”と思ってニンマリする、そういう仕掛けなんですね。


平部:やっぱり、そんなふうに“自分が影響を受けてきたモノ”を作品の中で出せるっていうのは、(自分が曲作りをしていく上での)“お楽しみのひとつ”にもなっているので、そういうところも含めて楽しんでもらえたらなと思います。


──3曲目『ワールド』では一転、ファルセットからコーラスまで平部さんの“声”の魅力が存分に味わえるナンバーとなっています。


平部:ありがとうございます。いや、これまではレコーディングとかでも、何時間もやってダレたり、詰まったりして、ひ〜ひ〜言いながらやってたんですけど、最近は少し、自分の中にも余裕が出てきて。それ(その余裕)を1個先の表現力みたいな部分に使えるようになってきたのかなと。とくに、この曲なんかは思いましたね。もちろん、曲も良くて。自分で言うのもなんなんですけど、最初のギター・リフから“ワールド”感満載で、一気に引き込まれるような、すごい世界観の曲が作れたなと思っています。

『ワールド』

──そして4曲目『マイフェアレディ』ですが、ツッコミどころがたくさんあって。もちろん、ポップでロックで、“reGretGirlらしい”といえば、らしい曲なんですけど、歌詞をよく読んだら、なんかちょっと怖いかも…って(笑)。ただ、それでも最後は“平部さんの手腕”、“平部マジック”みたいな部分で、このこじらせ男子が可愛くさえ見えてくるから、ほんと不思議ですよね(笑)。


平部:これも新境地感ありますよね。歌詞だけ読むとエグいんですけど、それをキャッチーに昇華できるのがreGretGirlだと思っているので、それをうまく体現できた曲だなと思っています。多分、こんなこと、人には言わないですけど、思ったことがある人って、いっぱいおると思うんですよ。それを僕が代わりに歌ってる、みたいな感覚ではいます(笑)。

『マイフェアレディ』

──サウンド面での遊び方も面白くて、きっと皆さん楽器が大好きなんだろうな、そこで音楽を鳴らすことが大好きなんだろうなというのが、ダイレクトに伝わってきます。とくに、いなたい感じのギターや軽快なタンバリン、時折のぞく60〜70年代的なエッセンスは、平部さんの嗜好性を反映したものでしょうか?


平部:そうですね。その辺りは結構、僕の趣味ですね。もともと両親がすごく洋楽好きで、その影響もあって、小さい頃からビートルズとか、60〜70年代の洋楽ばっかり聴いて育ってきたんです。だから、途中、カオスになったりだとか、ああいうのもずっとやってみたいなとは思ってたので(やれて)すごく楽しかったです。


──この曲はアウトロでも結構、引っ張りますが、こういう部分はライヴでも今後、いろいろな“遊び”が展開できそうですね。


平部:はい。まだ、ライヴでやってないんで、そこは僕らも結構、楽しみにしています。ただ、僕らアドリブ力が全然なくて(苦笑)。そのあたりは今後に期待してくださいっていう感じです。


──そして最後は『月の色』。バンドと絡み合う鍵盤とストリングスの音色、歌詞の内容も含めてジワジワと心に沁み入る素敵なナンバーとなっています。

『月の色』

平部:ありがとうございます。実は僕自身としては“男女の友情”は“ある”と思っているんですよね。実際、自分にもそういう女性の友達が結構居てるし、別にその子に恋愛感情あるか?っていうと、全然無い。でも、中にはいろんな人がいるよなって。“友だち”と呼んでても、ほんまはそうじゃなかったなって人とか、お互い“友だち”とは言ってるけども、一緒にいたり話しているとただの友だちとは少し違う雰囲気になる子がいたり…とか。それこそこの曲は、本当に居心地が良い、歌詞にも書いたような友だちが居てて、その人が結婚するって話を受けて、書いたんですけど、(こういう関係性は)特殊かな?と思いきや、意外とみんな“同じような経験があるよ”っていうコメントをたくさんくれて。書いて良かったなと思いましたね。個人的には<愛情か友情かとかどうでもいいんだよ / 大切な人には変わりないぜ>っていう最後のフレーズがすごく気に入っていて、僕らしい歌詞になったんじゃないかなと思っています。


──こうして聴いてくると、このEPで言う“告白”とは、決して恋心を告げることに限った話ではないということがわかりますね。


平部:そうですね。“告白”という言葉のイメージだけだと「好きです!付き合ってください」みたいな場面を想像する人が多いと思うんですけど、僕の中では“本来、そういう意味じゃないよね”と。例えば、別れた後に“本当はこう思ってたんだよ”とか、『月の色』みたいに、おめでとうとは思いつつも、なんだかちょっとモヤッとするとか(笑)。そういう、いろんな胸の内をさらけ出すっていうのが“告白”なのかなという思いがあるので、“ちゃんとコンセプトを持たせつつも、幅広い楽曲が入っている”という意味では、本当にバランスのいいEPになっているんじゃないかなと思っています。


──ちなみにジャケット写真は、平部さんが『ページワン』で描いた“告白”の実際の場所で撮られたそうですね(笑)。前回の記事でも少し紹介していますが、以前からreGretGirlの曲やMV、ジャケット写真などには、平部さんの地元愛があふれ出ていて、“それだけで聖地巡礼ができそう!”との声も多いと聞きました。そういった意味では今回の作品もまた、その一角に加わることになりそうですが、上京前と上京後、何か心境的に変化した部分などはありますか?


平部:今は東京に事務所があって、バンドの動き方としても、そっちに居た方がいいということで上京してるわけなんですが、もし、そういう必要性がなければ、今すぐにでも大阪に帰りたいとは思っています。…というか、実際には今でも、地元が好き過ぎてしょっちゅう大阪には帰っています。


──大体、どれぐらいの割合で帰っているんですか?


平部:うーん…なんやかんや多いときで、月1回くらい?(笑)。で、そのたびに思うんですよね。“やっぱ僕、地元、好きなんやな〜”って。でも、それがあるからこそ、“東京”に大きく影響されず、ちゃんと“今までの自分”を持ったまま(音楽が)やれてるのかなって、思いますね。

『平部の地元・和泉府中紹介ドキュメント!前編』

──さて、年明けからは全国17カ所を巡るワンマンツアーが開催されます。個人的には、このEPに収録された楽曲たちが、ツアーのセットリストの中で、どう既存曲と絡んでいくのかも楽しみですが、九州では熊本、福岡の2公演を予定。この秋には対バンツアーでも全国を回ったばかりですが、今度のツアーはどんな内容になりそうですか?


平部:どんな曲をやるのかは、まだ全然決まっていないんですけど、ワンマンツアーとしては約1年ぶりなので、もし、1年前に来てくれた人がいるなら、そこからさらにグレードの上がったモノを見せることができるという自信は、確実にあります。こないだの対バンツアーでは、一緒にやったバンドからも大いに刺激を受けましたし、その日その日の瞬発力もどんどん上がっていった気がします。本当に僕ら、この1年間、休むことなくライヴをやって、自分たちでも“グッと良くなったな”と思える瞬間が増えているので、その違いを感じてもらえたらなと思っています。それに、福岡をはじめ九州には、もう今年だけでも6回(!!)は来ていて。是非みなさん、これからもライヴやいろんな場所で、お会いしましょう!!


──ありがとうございました。

Major 2nd EP『告白e.p.』全曲Trailer
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LIVE INFORMATION

reGretGirl presents 忘れたくないワンマンツアー "World with you"

2024年2月10日(土)
熊本B.9 V1
2024年2月12日(月・休)
福岡DRUM LOGOS

PROFILE

reGretGirl

平部雅洋(Vo,Gt)、十九川宗裕(Ba)、前田将司(Dr)。2015年大阪にて結成。2017年12月、初の全国流通盤『my』をリリース。収録曲『ホワイトアウト』がTikTokやYouTubeなどを中心に大きな話題となり、2021年1月に1stフルアルバム『カーテンコール』でメジャー・デビュー。今年2月に2ndフルアルバム『tear』を発表した。バンド名は、平部が当時の彼女にフラれた際に「いつか有名になってフッたことを後悔させてやる」と思ったことに由来。そんな平部の実体験をもとにした、切なくも共感度の高い歌詞とキャッチーなメロディで、多くのファンを獲得している。