おかえり、前向きな俺──
あきらめの悪さが、引き寄せた幸運。

a flood of circle

取材/文:なかしまさおり

おかえり、前向きな俺──<br>あきらめの悪さが、引き寄せた幸運。

メジャー・デビュー15周年を迎えた今年、a flood of circleはひとつの大きな花火を打ち上げる。8月12日、東京・日比谷野外大音楽堂でのワンマン・ライヴ。もちろん、彼らにとっては、これが初めての野音単独公演ではない。だが、立ちたいからといって、誰もがすぐに立てるステージでもない、ということは彼らが一番よくわかっている。そんな誰もが待ち望んだ一夜に向けて。良い意味での“あきらめの悪さ”が引き寄せた幸運を手に、ひた走る──佐々木亮介(Vo,Gt)にツアーへの展望と最新作『CANDLE SONGS』について話を訊いた。

──まず、前回のインタビュー以降の話でいうと、昨年9月6日に、ストレイテナーのホリエ(アツシ)さんプロデュースによるシングル『ゴールド・ディガーズ』が配信リリースされました[※LIVE映像付のフィジカルはテイチクのオンラインショップにて販売中]。その前のフルアルバム『花降る空に不滅の歌を』では、“自分の中にあるものを全部、出し切った状態”だと、おっしゃっていたので。そこから、もうここまでの気持ちに?!と楽曲を聴いた時にはワクワクしました。

花降る空に不滅の歌を(再生リスト)

佐々木:『花降る〜』で一回(自分の)履歴を全部出しきったし、次は“バンドとして”すごくパワーのあるものがやりたかったっていうのはありましたね。ただ、そのためには自分が本当に尊敬できる人と一緒に曲を作りたいとも思っていて。そこでまず、ホリエさんとやれることになったのは、本当に幸運だったなと思います。俺、ホリエさんが演ってる音楽の中で──もちろん“歌”を大事に作ってる曲も大好きだけど、ちょっとオルタナっぽい、どこかへそまがりなセンスを感じる曲が大好きなんです。だから(『ゴールド・ディガーズ』でも)そういうことをやりたくて、ちょっとふざけた感じで“武道館どうこう”って歌詞に入れたんですよ。

──<武道館 取んだ3年後/赤でも恥でもやんぞ>っていう、ところですね。

佐々木:そう(笑)。ただ、“武道館”っていうのは、その時に思いついたわけじゃなくて。『花降る〜』のツアーを演りながらだったか、終わってからだったか…どっちかは忘れたんですけど、(メンバー/スタッフの)みんなに「(バンド結成)20周年を武道館でやろう」「俺はやりたいと思ってる」って話をしてたんです。もちろん、最初はみんな「え?!」って顔になってたんだけど、俺は「絶対、必要だ」って思ってたので、(歌詞の中でも)ガチで“武道館”って言っちゃおう!と。しかも、中途半端に“3年後”。…いやいや、来年じゃないんかい!っていうツッコミがくることも想定済みで。そんな歌詞、書いている人って、いないんじゃね?と思って(笑)。

ゴールド・ディガーズ

──確かに。いませんね(笑)。

佐々木:それに、ホリエさんと曲を作り始める前だったかな?10何年かぶりにドラマーのナベちゃん(渡邊一丘)と2人だけで飲んで、いろんな話をしたんです。それこそ年齢だったり、生活だったりの現実的な話も含めて、いろいろと。…で、40歳。俺にとっては、その年齢が何を意味してるのか、まだちょっとピンと来てないんですけど、ナベちゃんは「40歳になっても今とあんまり変わんない感じだったら、色々考えなきゃいけないかも」と言ってて。そうなんだ?と思って。

別にそれで俺を責めてるとか、そういうのでは全然ないし、本当に自分の気持ちも体もダメになるまでやりたいと思ってるのか?そこまで本当に行けんのか?っていう、バンドに対する覚悟の問題だよね。だったら、ダラダラしてる余裕はもうないよね?!って。その認識がお互い一緒だったことがわかったから。より“3年後、武道館”という歌詞の意味合いが強まってきたところはあるかもしれない。それこそ“ヒット曲があるから演る”でもなく、“なにかのご褒美として演る”でもない。自分たちの人生を誰かと比べて演るんじゃなく、それを演りたい気持ちがあった時に演る。そういうがむしゃらな新しいチャレンジの一つとして(武道館を)考えてみようかなと思って。

──そんな中、偶然にも決まったのが2024年8月の野音公演ですね。そこから“メジャー・デビュー15周年記念”、『キャンドルソング』の制作…と、さまざまなことが繋がり始めた。『キャンドルソング』のプロデュースはASIAN KUNG-FU GENERATIONのゴッチ(後藤正文)さんに依頼されましたが、きっかけは、やはりロット(バルトバロン主宰)のイベント*で共演されたことでしょうか?

佐々木:うん。あれはデカかったですね。もともと10年ぐらい前に、NO NUKESっていうイベントで一度、会ってはいるんです。でも、その時もゆっくり喋れてはなくて。ただ、僕らのレーベルのフラッド担当の人が昔、バンドをやっていて。ゴッチさんとは、当時からの知り合いだったらしいんですよね。それで、ロットのイベントの時にも二人で話していたので、その人を介して、つないでもらって。それで、是非一緒に作業をしてみたいということを直接伝えたんです。

──やってみて、いかがでしたか?

佐々木:ホリエさんの時は結構、狙いが決まっていたので、最初から2、3曲しか送っていないんですけど、後藤さんの時は、そこまで曲調を決めてなくて。むしろ後藤さんのセンスでピンと来る俺のデモって、どれなのかな?っていうのに興味があって。たしか過去のデモとかも含めて10曲ぐらいは送ったんじゃなかったかな。それこそ、打ち合わせではグラミー(賞を)獲ったアラバマ・シェイクスのアルバムがいいとか、オーストラリアのコートニー・バーネットの歌詞が面白いとか、いろんな話をしていたので、送った曲の中には、そういう感じのものも作って入れたりはしてたんですけど、その中で一番、後藤さんがグッときたってやつが、今の『キャンドルソング』の元ネタになってるやつで。あ、後藤さんの琴線って、ここだったんだと。全然、アラバマ・シェイクスでも、コートニー・バーネットでもない、真っ直ぐなロックだったんだってことがわかって、改めて“この人は信頼できるな”とも感じましたね。

──最後のコーラス・アレンジの部分もいいですよね。それこそ、野音とかの広い会場で聴いたら、気持ちが良さそうです。

佐々木:うん。それはまさに後藤さんのアイディアで。<ユラユラユラ>ってサビを付けた後に、野音の話もしてたのかなぁ?そのコーラス自体に後藤さんも参加してるんですけど、後藤さん的にはみんなが歌ってくれる曲になったら、すごく嬉しいということで“合唱”にしようってことになりましたね。

キャンドルソング

──それこそ歌詞は冒頭から<ここまで来ても/未来はちゃんと闇の中>で。相変わらず“困っている”ことには変わりはないんですけど、サウンドの広がり方ともあいまって、その困り方が以前よりもどこか明るく、前向きにも感じられるのが印象的です。

佐々木:うん。今まで、無理やりにでも“(過去は)振り返らない”って歌がいっぱいあった中で、『キャンドルソング』は、めずらしく、ちょっと(過去を)振り返る系の歌になっている。それは、さっき話したようなメンバーのこと、スタッフのこと、この15年間何をしてきて、何が1番大切かとか、何が武器なのか、とか。そういうことをいろいろ考えていたときに、野音が決まって。知らず知らずのうちに、そういう気持ちが入っちゃったのかもしれないっていうのと、もしかしたら、その時期、ちょうどテツが復帰したタイミングで。それもあるかもしれないですね。当時は、それこそバンドを続ける続けないとかじゃなく、“続けようがない”って状況になりうることもあるんだなって考えてたし。そんなんで2年後、無事に武道館まで行けんのか?とか。日々アップダウンする気持ちの中で、矛盾を抱えながらやってたので。そこは結構大きかったかも。

──なるほど。そういう意味では『ギター(羽あり)』にも、テツさんへの想いが?とくに「ギター!」という声が入ってからのソロへいく感じとか。かなりエモい展開だったので。

ギター(羽あり)

佐々木:そうですね、それはもう本当にその通りで。もともとは自分でギター(=ブラックファルコン)を壊しちゃったところからはじまって、それをグレッチの人が完全に“好意で”直してくれて、それが戻ってきたことへの<おかえり相棒>だったんですけど、もう一つは、さっき言ったみたいな、アップダウンする(気持ちの)賭け引きを“コントロールする自分=もう1人の自分”が帰ってきたことへの、「おかえり」っていうのもあるのかもしれない。もちろん、テツのことも含めて。

例えば『おやすみシュガー』にしても、実際には結構、具体的なエピソードがあって。書き方によっては、もっと暗いだけの曲になってたかもしれないし、別にそれはそれでいいのかもしれないんだけど、なんか今、この曲の感じで歌になるっていうのは、結構気に入っていて。『ギター(羽あり)』じゃないけど、<なんかまだいけそう>って思ってるから、やってますよね?って。<どうせ誰も見てないぜ>なんてことはなくて、誰かがどっかで聴いてるじゃん!って。そういう、ちょっと前向きな俺が帰ってきたのかなって。

それこそ、数ある歌、数あるバンドの中から、たまたまa flood of circleを選んで、聴いてくれている人がいるってこと自体が“ご褒美じゃん”って。それなのに“孤独”とかって言ってんじゃないよって。<孤独なんか内臓の一つじゃん>って本当に思って書いたけど、バンドやれてるだけ、恵まれてんじゃん!っていう。なんか“こっち側の自分”が今、いるんですよね。だから、多分『花降る〜』のままだったら、潰れてたかもしんないっていうところを、ホリエさん、後藤さん、それからメンバーとか、ファンとか、そういう人に俺が今、救われて、やれてる…みたいなところはありますね。

──ちなみに野音は「これまでで一番、曲が多いライヴにしたい」ともコメントされていましたが、その野音とは、また「違う曲をツアーでは演りたい」とも言われていました。

佐々木:ツアーでは今、『CANDLE SONGS』の曲をメインに演っていて、それと相性がいいなと思う曲が、初期の(楽曲の)中にいくつかあるので、それを織り交ぜながら演ってるところです。

──個人的には『Happy Yappy Blood Hunt』が気になります。昨年のツアーラストで発表されたとのことですが、福岡ではまだ聴けていないので、楽しみです。

Happy Yappy Blood Hunt

佐々木:『花降る空に不滅の歌を』は、アカペラから始まるアルバムだったし、間奏とかもあんまりないみたいな曲が多くて。イントロも、いつもだったら8小節やってるとこを4小節しかやらないで、すぐ歌。とにかく歌、歌、歌なアルバムだったんで、今回は“歌詞も2行しかない、楽器メインの曲”を作っとこうかなと思って、変なバランスの取り方をしました(笑)。だから、この曲の主役はベース。姐さん(HISAYO)のベースソロがいっぱいある曲になっています。他にも、テツやナベちゃん、メンバーそれぞれが活躍する曲が入ってますし、みんな“武道館”の話をしてからの方が、腹が決まって見えるので、是非その辺りも楽しみにしていただけたらと思います。

──福岡公演は6月7日OP’sにて。

佐々木:とにかく“本気だな、コイツら!”ってことが伝わるライヴになっていると思いますので、人生に困ってる人はもちろん、そうじゃない人も、是非遊びに来てもらえたらと思います。その上で、8月12日も。絶対に特別なものにしますので、是非みんなで東京に来てもらえたらと思います。

──野音のチケットに限っては「U22割」(22歳以下向けの割引)もあるとか?

その線引きもすごく迷ったんだけど、自分に置き換えたら、やっぱりそのぐらいの年代じゃ買えないような値段で(今、ライヴを)やってんのかな?とも思ったので、是非、活用していただければと思います。とは言ってもね、福岡とかからだと、それ以上に交通費がかかったりもすると思うので、大変だとは思うんですけど、是非、“15年に1度のモノ”だと思って、来てくれたら嬉しいです。あと、実はもう次のレコーディングの準備をしているんですけど、(そのことで)みんなを困らせていて(笑)。

──“みんな”というのは、メンバーを?スタッフを?

佐々木:んー、全員ですね。俺も含めた、全員(笑)。ただ、今はまだ詳しく言えなくて。きっと発表したらビックリ…する?…かなぁ?わかんないけど(苦笑)。それについてはまた今度、お伝えできればと思っています。

──わかりました。いずれにしても“野音のその先”をすでに考えてらっしゃるということで。楽しみにしています!

*ロットのイベント…昨年7月16日に東京・日比谷公園大音楽堂で開催されたROTH BART BARON主宰のライヴ・イベント「BEAR NIGHT 4」

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LIVE INFORMATION

a flood of circleデビュー15周年記念ツアー "CANDLE SONGS -日比谷野外大音楽堂への道-"

2024年6月7日(金)
福岡 OP's

a flood of circleデビュー15周年記念公演 "LIVE AT 日比谷野外大音楽堂"

2024年8月12日(月・休)
東京 日比谷野外大音楽堂

PROFILE

a flood of circle

佐々木亮介(Vo,Gt)、渡邊一丘(Dr)、HISAYO(Ba)、アオキテツ(Gt)。2006年の結成以来、常に不屈の精神で、自らの進む“未来を更新”し続けているロックンロール・バンド。最新EP『CANDLE SONGS』では、CDのみの通常盤のほか、昨年9月7日に東京・新代田FEVERにて開催された「Mini Album『a flood of circle』&『泥水のメロディー』再現ライブ」の模様を収録したDVD付属の初回限定盤の2種類があるが、昨年9月にリリースされたシングル『ゴールド・ディガーズ』(配信、およびCD+Blu-ray、CD+DVD)と併せて、是非チェックしておきたい。また、5月22日発売予定の小説家・住野よるさん新刊『告白撃』では、本文中にa flood of circleの『Honey Moon Song』の歌詞が引用されているとのこと。そちらの方も是非チェックを。