《僕たちは、気が狂うほどのバラバラ感の中で生きている》 
世界中のフォークスへ贈る、現代のフォーク・ロック・ミュージック。

ROTH BART BARON

取材/文:山崎聡美

《僕たちは、気が狂うほどのバラバラ感の中で生きている》 <br>世界中のフォークスへ贈る、現代のフォーク・ロック・ミュージック。

<<この記事は、BEA VOICE2018年12月号の記事の再掲です>>



 丹念に織り上げたフォーク・ロックを「’18年現在にアップデートした今鳴らすべき音」として再構築し、ロットが前作『ATOM』から3年ぶりのフル・アルバム『HEX』をリリースした。


試みたのは「デジタルとアナログ双方のアプローチでハイブリッドなものをテーマに、今までロックミュージックが積み重ねてきた歴史とその歴史を裏切る行為、両方を混ぜる」(三船雅也 Vo,Gt)こと。録った音のコンピュータ上での切り貼りや波形編集にも踏み込む一方、真骨頂である生楽器のフィールも残した。 


それは「今の時代、僕らにはデジタルとアナログ両方の世界を生きるってことが起きてて、それを表した音楽ができないかと思ったのが今作の核。デジタルなフォーマットで、伝統的な部分の分解と再構築を繰り返して音楽にしていくことが必要なプロセスで、音として表したいことでもあった」から。


現代の音楽シーン最先端であると三船が実感するシカゴのヒップホップ勢、その動力であるL10MixedItに『HEX』『SPEAK SILENCE』という今作中最もメロディックな2曲のミックスを委ねたのも、この時代の気風を見出すため。


また『Hollow』『HAL』に顕著なミニマルミュージックの要素や、ハイファイな音環境が広げたレンジの低音部へのこだわり──
「今のUSやUKで鳴ってる音も、聴こえない低音感がサウンドデザインとしての表現になってきてる。現代音楽を鳴らす上で必要なことだと思ってトライしてみた所」──は、ロットが鳴らす現代のフォーク・ロックを象徴する音像だ。いくつもの冒険的アプローチを以て生まれた珠玉の10曲は鳥肌立つほどにプリミティヴな感動を私たちにもたらしてくれる。


その真っ芯にある、三船とフリート・フォクシーズのロビン・ペックノールド(Vo,Gt)が確かめ合った矜持を最後に記そう。


《コンピュータで作れるヒップホップ全盛のバンドサウンドが聴かれない時代でも、僕らはフォークギターを持って歌う。テクノロジーは手段でしかない。エレクトリックだろうがフォークだろうが、僕らが目標としてるのはいいソングを作ることなんだよ》

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LIVE INFORMATION

ROTH BART BARON
LIVE TOUR“HEX”2018-2019

2019年1月13日(日)
福岡UTERO

PROFILE

ROTH BART BARON

(ロット・バルト・バロン)

三船雅也(Vo,Gt)、中原鉄也(Dr)によるユニット。東京出身。2008年結成。1st EP『ROTH BART BARON』(2010)、2nd EP『化け物山と合唱団』(2012)、1st AL『ロットバルトバロンの氷河期』(2014)、2nd AL『ATOM』(2015)、3rd EP『dying for』(2017)を経て、核となるタイトル曲ができるまで約2年、曲にして120曲を費やしたという長い苦悩を超えて最高傑作『HEX』をリリース。レコ発ツアー九州公演は2か所、年明け初ライヴとなる熊本ではアコースティックで、翌日の福岡ではフルのバンドサウンドで、今作を二通りのスタイルで楽しめる2Days!