『ユートピアン』[DISC REVIEW]

フレンズ

『ユートピアン』[DISC REVIEW]

人生はビター&スウィートの繰り返し

今年6月に結成10年目へと突入するフレンズの最新アルバム『ユートピアン』が到着。フルアルバムとしては約2年半ぶり。前回レビュー(https://beavoiceweb.com/column/11329/)の『superb』と昨年リリースの『愛をやめない』──その両方を全曲網羅し、そこに既発/未発表含む4曲(もちろん、フルアルバム恒例の“元気 D.C.T”シリーズも)を加えた全12曲入りの決定盤だ。

まるで、おとぎ話の入り口のよう。イントロいざなう優しき世界。冒頭を飾る『Donuts』の、小さな穴から覗いた景色。<甘い指に 戦うライダース こうじゃなきゃダメって 決めないで良いよ><もがいて行こうよ たまには休んで お茶でも飲もう>。わかっていても、自分では、なかなか気づくことのできなかった、その広さ、まぶしさ。その視線の先にあるものを描く、心地良い風のようなサウンド。肩のチカラがスッと抜けていくのがわかる。それこそ、人生はビター&スウィートの繰り返し。ついてないなと思う日もあれば、夢見る夜や、ときめく朝が巡ったりもするから、生き続けられる。

おそらくは、そんなストーリー性も反映されての、この曲順(あくまでも個人の想像と願望デス…笑)?であれば、シャッフルなどせず、できれば(いや、絶対に!)このまま1曲目から通して聴いて、みて欲しい。なかでも、私が最高に好きなのは『夜は嫌い』からの『朝が来た』→『きっと私は大丈夫』→『ヤッチマイナ!』の一連の流れ。言葉選びのセンス、小物を含めたリズム楽器の使い方、あるいはコーラスの演出の仕方など、バンドとしての“進化の現在地”がどこにあるのかを強く感じさせてくれる部分でもある。

そんな本作をひっさげての全国ツアーは現在進行中。5月24日には福岡・INSAでの公演も予定されているが、すでに発表されたドラム・関口塁の“6月7日渋谷 duo MUSIC EXCHANGE公演をもっての卒業”は、いろんな意味での“新たな未来”を示唆するものとなっている。もちろん、現体制でのフレンズは今回のツアーがラスト。ぜひ、ひとりでも多くの人に、その楽しさを体感してほしいと思う。(なかしま さおり)

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LIVE INFORMATION

フレンズ 3rd Full Album「ユートピアン」Release TOUR「Pair」

2024年5月24日(金)
福岡 INSA

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