象徴、星なるもの。誰もが偽星

PK shampoo

取材/文:なかしまさおり

象徴、星なるもの。誰もが偽星

5月27日にリリースされたPK shampooの最新EP『尊い偽星』。ここには『還らざる光』、『Viva la fake star』の新曲2曲と、昨年11月の配信シングル『Bad Boys Blue』、ライヴ定番曲『天王寺減衰曲線』(再録)の全4曲が収録されている。轟音、泣きメロ、君と宇宙。もはや彼らの代名詞ともいえるキーワードの向こうに今回、チラ見えするのは遥かなる郷愁。帰りたくても、帰れない場所。忘れたくても、忘れられない日々。本作が辿った軌跡について、ヤマトパンクス(Vo,Gt)に話を訊いた。



EPISODE:1 青、遭遇



──昨年11月に配信リリースされた『Bad Boys Blue』が、やはり今作のスタート地点となりますか?


「そうですね。でも、あの時は、夏の曲を夏に書き始めたら、出すのが冬になっちゃって…いろんな人に“なんで夏の曲を冬に出すんだ、素人か!”とツッコまれた(苦笑)。でも、今回はそこも含めてやっと、書きたかったこととピッタリの季節に出せてよかったなと思ってます」


──『Bad Boys Blue』は、ジャケット写真も新鮮でした。


「バンドを始めた当初から、メンバー4人の中では“PK shampooの全体的なイメージカラーは寒色、青系”という認識で。これまでも何度か、そういう色を狙ってやってはきたんですけど、これがすごく難しくて。本当にこの青でいいのかな?とか、これじゃないんだよなぁ…みたいな気持ちになることがよくあって。そんななかで去年、東京藝術大学の「藝祭」(学園祭)に、友だちとふらっと遊びに行って、見かけたあの空の…なんて言ったらいいんでしょうね、僕がまさに求めてた青色を写真で切り取ってらっしゃる方(※1)がいて、もうビビッ!と来てしまった。それで、それをそのまま(『Bad Boys Blue』のジャケットワークに)使わせてもらうことにしたんです。といっても、実際には、その作品に出会ったのは曲を書き始める前のことで。そこで見た空の青さとか、建造物の白さ、コントラストみたいなものがずっと心のどっかに残ってたんだと思う。だから、今回はどんな青さがいいんだろう?って考えた時に、僕が見た“あの青さ”──それは写真に切り取った“過去の青さ”であり、過ぎ去った青さなんだよなというところから、そういう“昔の青さ”みたいな部分を自分の中でも掘り起こして書いていったところはありますね。しかも、京都のホテルに缶詰になって書いていたんで…例えば、地元の思い出の場所をいろいろ散策してみたり、昔の友だちに会ってみたり。あと、MCとかでも散々言ってるんですけど、(自分が)とんでもないダメ人間だった時の思い出とかを(笑)思い返してみたりしながら(書いたら)ああなったという感じです」

※1)…しんどう あすか──“日常の中の小さなときめきを写真で切り取り作品にする”写真家。東京藝術大学修士課程修了。

【MV】Bad Boys Blue/PK shampoo
中学時代、授業をサボって日々たむろした学校近くのタコ焼き屋。ふと思い出し、電車を乗り継ぎ見に行くも、店は跡形もなく消え去り、周辺の様子もすっかり変わってしまっていた。“あんたたちは何がしたいねん?”そのタコ焼き屋のおばちゃんのお節介な言葉をいまさらながらに思い出す。思えば、大事なことは先延ばしにばかりしてきた人生だ。ようやく出会った“バンド”のことも、大学に7年通って“やっと”覚悟を決めたぐらいには、いまだ惑う日々が続いている。

──冒頭のコーラスワークも爽やかですよね。歌詞としてのニッチな引用もなく、素直でいい曲だなと思いますし、初めてPK shampooを聴く人にとっても“なんだ、ネットでいろいろ言われてるけど好青年じゃん!いいバンドじゃん!”という(笑)、プラス評価にもつながった気がします。


「実際、同じことばかりやってると単純に“飽きる”ってこともあって、毎回、新しいことには挑戦したいなと思ってるんです。この曲ではそれがイントロのアルペジオとか、コーラスワークとかに繋がったと思うんですけど、そうやって、あえて挑戦した難しいこと…っていうと語弊があるけど、世の中にあまり流通してないようなコード・フローとかを考えていった結果、今度は、その挑戦に自分が追いつかないというか。演奏がむずかしくて、全然弾けないっていうことにもなってます(苦笑)」


──そうなんですか?!


「たしか(2025年11月に開催した“PSYCHIC FES 2025”の)Zepp Shinjukuかなんかで初披露したんですけど、これがまぁホントに全然弾けなくて。全員がバラバラのことやって、グッチャグチャになって、Zepp Shinjukuどっちらけみたいな(苦笑)。本当に情けない、どうしようもないバンドなんです。ヴォーカルとしてもそうですよ、自分で書いたメロディラインが歌えない。よく“歌謡曲っぽいメロディーだ”とか言われたりすることもあるし、自分でもそう思ってた時期もあったんですけど、実際は半音の細かいメロディーとか、チャレンジングな1オクターブ、2オクターブの跳躍がそこら中にあったりとかして、誰もカラオケとかでは歌えないっていう…。そりゃそうですよ、大体、僕が歌えてないんだから(笑)。でも、そこから半年ぐらい経って、最近は、ようやくまとまってきたのかなとは思います」

READ MORE


──でも、そういう過程も含めてPK shampooのファンは、“ライヴ”という“リアル”な場での面白さを楽しんでいるのかなという気もします。


「どうかな…さすがにこっちとしては、クオリティはできる限りあげていきたいとは思ってるんですけど。最近はSNSとかでも、俺の調子がいい時と悪い時の差がすごい激しいって。なんか“今日はアタリだった”、“今日は大ハズレ!”みたいなのを書かれてるって聞いたことがあるんですけど(笑)。それはもう本当に、申し訳ないなとは思ってます」



EPISODE:2 偽星、廃校の図書室で



──今回、EPのタイトルが『尊い偽星』で。言葉としての響きの“犠牲”と、偽の星、いわゆるFAKE STAR(フェイク・スター)を掛けてあると思うんですが、これはどのタイミングで決めたんですか?


「僕は割と最初に、テーマっぽいタイトルをドカンと決めて、そこに向かって投げ込むような曲を書いていくっていうやり方をすることが多いんですけど、今回で言うと<トウトイギセイ>という言葉自体は、ずっと前からダジャレのような感覚であったんですよ。で、さっき言ったみたいな流れで去年『Bad Boys Blue』ができて。その『Bad Boys Blue』が入るであろうEPのタイトルを決めるってなったときに……そうだ、今、聞かれて思い出しましたけど、『Bad Boys Blue』のMVの撮影で、埼玉の廃校に行ったんですよ。でも、僕は最後のワンシーンしか出ないんで、暇だったから、ウロウロ、学校の中を見てたんです。で、ちょうど役者さんとかスタッフさんの詰め所になってるところが図書室みたいになっていて、本がたくさん置いてあったんです。廃校になる時に売れなかったのかなんなのか、打ち捨てられたように埃まみれの本がいっぱいあって。ふ〜んと思って見ていたら、その中に野尻抱影(※2)っていうおっさん──その人、ものすごい天文学者かなんかで、明治とか大正時代の人なんですけど。星とか星座とかに関したいろんなエッセイとか、私小説っぽいものとか、図鑑みたいなものもいっぱい書いてるんですけど、その人の本があって。たしか、その中に、“偽星”って文字があったんじゃないかな?今だったら、英語とかフランス語とか、いろんな言葉で書けると思うんだけど、それがいまいち訳しきれていない時代の言葉。多分、その野尻さんのオリジナルなんだろうなぁ、星を熟語で表したような言葉がたくさん載ってて。多分、そこから“偽星”って思いついたような気も、しなくはないなと今、思い出しました」

※2)…野尻抱影(のじりほうえい)──星座に関する研究・執筆などで知られ、今なお星の和名研究の第一人者とされている英文学者/随筆家。大佛次郎の実兄でもある。


──“フェイク・スター”という言葉自体は、私たちもよく知っているし、使ったりもします。でも、それを漢字にするという発想は意外となくて、そうか“偽の星”かと、今回のEPであらためて気づきました。


「宇宙とか、星の動きとか、星座とか、僕、めちゃくちゃ詳しいわけじゃないんですけど、例えば、惑星は、なんか変な動きをするから“惑う星”で惑星だとか、そういう、自分らの生活とか考え方に当てはまりそうな言葉って、意外とたくさんあるんですよね。てか、人間がその言葉を決めてるわけだし、自分たちに星を当てはめてるんでしょうから、ある意味、それも当たり前なんでしょうけど。そこで見つけた“偽星”という文字、ギセイと読むのか、ニセボシと呼ぶのか、わかんないけど、そこからちょっと着想を得たっていうのは、なんかロマンチックな話だなぁとは自分でも思います(笑)」 


──しかも、おもしろいのは、そこに“尊い”という言葉を付けることで、響きとしては“犠牲”のほうにも、ちゃんと意味が振れるようにしてあるという点。別に戦争云々の話ではないんですが、個人的には私たちがよく見聞きする“尊い犠牲”の“尊さ”にも、フェイクがあると思っているので、“偽星の尊さとはなんぞや”とも思いながら聴いています。


「うん。本当はそこに無関心ではいけないんでしょうけど、僕がそっち側にあまり積極的に関与したいタイプではないんで、言い方としては不謹慎なのかもしれませんけど。まさにあちこちで戦争が起きているなかで、逆にそういう言葉を使うことが、ある種、警鐘を鳴らすことにもなるなら嬉しいですし、それこそ偽物っていう漢字が入ってることとか、嫌味たらしく“尊いでんな〜”(笑)と言ってみたりすることで、ひねくれた形での反戦運動みたいにとってくれる人が出てきてもいいなとは思います」



EPISODE:3 フェイクスター、誰もがみんな。



──そうしたテーマのもとに完成したのが『還らざる光』と『Viva la fake star』。


「この2つは、ほぼ同時進行で作りましたね。例えるなら、パズルやルービックキューブをガチャガチャやるような感じでやってて。半年ぐらいずっと、書いては(脇に)置いて、書いては(脇に)置いてを繰り返した。こっちで思いついたアイデアをこっちに持ってきては、ここがハマらない、ここもハマらない。でも、ここを揃えると、ここが揃わない!…みたいなことを延々やってて。それで、編曲とか歌詞とかにも、かなり時間がかかりました。一度、“偽星”って言葉自体も曲名にしちゃおうか?と考えたこともあったんですけど、結局、この2曲になりました」


──そういう意味でいくと、漢字ではないんですけど『Viva la fake star』はタイトルも“フェイク・スター”で、歌詞にも<偽の星>という言葉が出てきます。ただ、さっきの話のようなシニカルさはほとんどなく、どちらかというと“自分たちも含めてフェイク・スターだ”という視点で歌われているのが印象的です。


「別にこれは悪い意味じゃないんですけど、今の時代、TikTokで、インスタのリールで、YouTubeのショートで、毎週、毎月のようにバズる若者が生まれてる。で、その中から、スターとされる人が、テレビでも“TikTokで何万いいねされた”みたいな感じで紹介されて。次の週には、また別のやつが出てきて、次の月、このワンシーズン終わったらもう、誰もそいつのことは覚えてないっていう。もちろん、それがいいとか悪いとかじゃなく、そういう消費サイクルの速さみたいなものが、僕らとは違うところでずっと流れてて。それを横目で見た時に、あれも1つのフェイクスターだなと思ったんです。でも、だからといって、僕たちこそが本物のスターなのか?っていうと、それも違って。結局、(音楽の話に限らず)自分が望むと望まざるとに関わらず、あいつはどうとかこうとか勝手に言われて。その議論の俎上に載せられたやつだけが、やれFAKEだとか、最低だとか、叩かれまくってる状況はどうなんだと。ただそれでも、そこに向かって「そういうの最悪やで!」って言ったところで、こんな流れが止まるとも思えないし。だったら、この速いBPMの中で、すごいスピードで消費されていく我々そのものに(FAKE STARを)なぞらえて、“あんただってFAKE、俺だってFAKE、みんなだってそうでしょ?”って。そんなみんなを含めてバンザイ!って、いっそのこと言ってやろうと思って作りました」

【MV】Viva la fake star/PK shampoo

「それに…たとえば法を犯すような罪は別として、酔っ払って要らんこと言うとか、喧嘩になるとか、遅刻とか。…って、さっき遅刻してきた身で言うのもアレなんですけど(笑)、人間、そこそこの失態は仕方ないんじゃないかなって思うんですよね。それは周りの友だちにしてもそうで。それこそ、(バンドの)金盗んで飛んだマネージャーとかもいますけど、今も仲良く酒飲んでますし。いまだに「お前には俺しかいない」って泣きながら言ってきたりもするけど、それでまたやり直すわけもないから、それはそれ。僕もいろんな失敗をしてきて、人に嫌われたり、あの話はもうないとか、これはもうできないとか、この先も踏めないマスがたくさんあったりもするから、そこはお互いが過去の失敗も含めて“そういうやつなんだからしょうがないよね”って、受け入れてやっていくしかないのかなって。だって、仕事失って、金も失った上に、友だちまで失っちゃったら最悪だなとも思うしね。だったら、今ある手札で何をする?どこに進む?って、考えるほうが楽しいし、そういう人間がいたっていいじゃん?って。その時はちょっと失敗しちゃったかもしんないけど、叩かれたり、炎上したり、キャンセルされたりしてる人間が、もう一度、やり直したっていいじゃん?やり直せばいいじゃん!って。そういう視点をね…まぁ、この曲では、そこまでのことは直接的には言ってないですけど、“何度でもやり直せばいいじゃん”っていうテーマは持ってましたね」


──<互いの違う所より/似てるとこ探そう>というフレーズもいいですよね。曲を聴きながら、ふと寺尾紗穂さんの『彗星の孤独』の中の“二つの彗星”なんかも思い浮かべたり。実は親子関係にも重ねて聴くことができるんじゃないかなとも思いましたね。


「あ〜、でも、実際、そうっすね。どちらかというと俺は母親似だと言われるんですけど、この前、実の父親の地元で、親父とその友だちと一緒に飲んだんです、で、その友だち連中がみんな言うには「ほんま、おかあちゃんに似て良かったなぁ〜」って。風体や顔がそっちに似て、良かったなって、冗談でしょうけど(笑)言うわけです。でも、やっぱり“声”は、めちゃくちゃ親父に似てて。とくに歌声。「めちゃ似とるなぁ!」って何度も言われて。どうやら音楽的な遺伝子みたいなものは多分、親父の方にあるのかなって。それこそ父方の叔母はフラメンコ歌手ですし、いとこは音大生。人生悪ふざけな感じとかも…そうなのかなとは感じてます(笑)」


──よくヤマトさんは冗談で“捨てられた”って話をされますけど、拒否して絶対会わないとかじゃなく、そこから新たな関係性で繋がっていく。まさに“やり直せばいいじゃん”ってところに持ってってるのが、いいなと思いますね。


「うん。父親とも、もう会いたくないとか、受け入れてブン殴って2度と会うか!みたいな感じだったら、ここまでいろんなことに気づけることもなかったなって。そう思うと、それは本当に良かったなと思いますね。それに親父の離婚理由が、実は一緒に会社立てたやつに金盗まれて、飛ばれて借金負って、妻子に迷惑かけられないから縁を切ったって話だったのも、ちょっと(自分と)似てて。そう思ったら、なんか憎めないなって」


──まぁ、それも含めて、バンザイ!と(笑)。


「そう。みんなバンザイ!ヤッホー!って(笑)。それこそ自分も含めて、世の中にはダメなやつがいっぱいいるから大丈夫だよって。そう言ってあげることで、誰かの心の救いになればいいなとは思います」



EPISODE:4 女性に、心、重ねて



──どことなく『星』を彷彿とさせるイントロから始まる『還らざる光』。EPの1曲目に、こういうタイプの曲がくるというのも意外でしたが、歌詞の描き方にも新しさを感じました。


「確かに。プリイントロっぽい2段階イントロがあって、曲に入ってくみたいなのは『星』もそうだし、『夜間通用口』とかもそう。割と僕たちがやりがちな手癖ではあるんですよね。ただ、今回は“カラオケで歌えるような、ヒットソングっぽいものが作りたい”っていうのが最初にあって。まずはサザン(オールスターズ)の『TSUNAMI』をやってみよう!ってとこから始めました」


──え?サザン?!


「はい(笑)。まずはギターの(福島)カイトに、Logic(Pro)で、ストリングスからコード進行、キーまで全部、まるごと『TSUNAMI』のオフヴォーカル・バージョンみたいなカラオケを作ってもらったんですけど、そこに僕が歌を乗せたら……まんま『TSUNAMI』になっちゃって(笑)。これはダメだ!っていうんで、今度はそこから1個ずつ要素を壊していったという。言ってみれば“守・破・離”(※3)の手法を半年間、急ピッチでやった感じですよね。サザンオールスターズ師匠に1回入門して、そこでやってることを全部完コピ。で、その型を破るべく、今度は…例えばですけど、くるりの『東京』とか、世にあるマスターピースのいろんなエッセンスを、メロディだったり、コード進行だったり、BPM、キーといった部分で取り入れては外し、取り入れては外し。で、最終的にそうやって取り入れたものを全部さっぴいて、離れるっていう。おかげで、自分たちにとってもそうですけど、世間的にもあんまり聴いたことのない感じ…少なくとも人口に膾炙(かいしゃ)してるものにはあまりないアレンジメントになったんじゃないかなという気はします。とくにコードのプログレッション。実は、これがめちゃくちゃ複雑で。難しいものを使ってるというよりかは、毎パート、コードが細かく変わってて、すごく弾くのがめんどくさい(笑)。だからライヴでは僕ら、めちゃくちゃミスしてるんじゃないかな…」

※3)…守破離(しゅ・は・り)──千利休の訓をまとめた『利休道歌』に由来する芸道における精神作法を解する言葉。師の教え(基本の型)を忠実に守り、自分なりの工夫でその型を破る。そして師の型、自分の型を取り合わせた独自の新しい世界を確立して、ひとり立ちするというのが一連の流れ。


──でもすごくいい曲ですよね。それこそ“カラオケで歌えるような”ものを最初は目指したとおっしゃってましたが、そこはきちんと歌やメロディーで担保しつつ、そうやって新しい表現にも挑戦されている。きっと長く愛されていく曲になるんじゃないかという気がします。ただ、そのぶん歌詞は、かなり難航したそうで?


「そうなんですよ。最初は歌詞の部分でも、自分の中でのとっかかりがほしくて。サザンになってみたり、くるりになってみたり、ちょっとオアシス入れてみたり(笑)、いろいろやってはみたんですけど、なかなかうまく書けなくて。そんな中で、もう思い切って女性…それこそaikoだったら、ここでなんて言うのかな?とか、自分の中にある“勝手な女性像/女性らしさ”のモデルケースをいろいろ混ぜ合わせながら、少しずつ言葉を引き出していきました。例えば、よく言うじゃないですか。男性と女性が喧嘩した時に、男性はどうすべきなのかを話すが、女性は共感を求めるみたいな。そういう言葉の筆致がここには、無意識に出てるような気がして、自分でもおもしろいなと思います。それに、はちぶんぎ座って日本からは見えない星座なんですけど、そういうものをネットで拾った情報ではなく、あえて、自分で探しにいくという感覚。さっきは『Viva la fake star』で、フェイクでもなんでもいいじゃん!って歌いましたけど、そことは真逆のテーマをこの曲ではやりたいなと思って。なるべくバズりそうじゃないもの、どっか一部だけを切り取って載せても、あんまり意味がないようなものを目指しました」

還らざる光
雨の東京、この国から見えない星座=はちぶんぎ(座)、ポストの中に落ちる鍵、土星、夕陽に染まった中野駅を臨む跨線橋、宇宙の風、月の裏側──次々とアングルを変えつつ映し出される景色はどれも、愛おしくて涙があふれそうになる。振り返った道のむこうに輝くのは“あんなに抜け出したかった街”。<泣いちゃうなんて思わなかったよ>というストレートな響きが、どこまでも郷愁を掻き立ててくれる新たなる名曲。


EPISODE:5 減衰の、前か後か。



「たしか、アフリカのことわざだったと思うんだけど、“早く行きたければ1人で行け、遠くへ行きたければみんなで行け”って言葉があって。僕だったら迷わず、“みんなで行く”を選ぶと思う。昔は、“ヒットソングを書きたいわけじゃないしな”って思いもあったから、実験音楽とか前衛芸術みたいなものを好き好んで聴いたり、勉強したりしてましたけど、考えれば考えるほど、そうじゃないんだよなって。そんなことやってもあんまり面白くないよなって自分がいて。だったら、何がやりたいんだろう?って考えたときに、やっぱりこのバンドが好きなんだなって。この4人で、あのサークルの延長戦で、シーンのすみっこからヤジをとばしているような、そんなバンドでいたいんだなって、最近よく思うようになりましたね」


──確かに。ヤジを飛ばすにしても、ちゃんとシーンの中にいないと意味がないですからね。


「うん。そういうことが今だったらできる…っていう言い方をすると、すごく驕り高ぶっているような気もしますけど、幸い、そういう環境にもいると思うので。そこは、ちゃんとTPOをわきまえながら(笑)、作品の中で、ある意味でのヤジを、ある意味でのチャチャを、ある意味でのカウンターを打っていけたらなと思ってます」


──そういう意味では『天王寺減衰曲線』がここに入る流れにも、何らかの必然性を感じます。


「それこそ、曲としてはトラッシュ(ノイズ)の時に作ってて、確かレコーディングする前に解散しちゃったみたいな感じだったと思うんですよ。でも、その頃に出会ったバンドに最近、再会することが結構あって。この間も、KOTORIってバンドと京都のKBSホールでツーマンやった(※4)んですけど、その時にもヴォーカルの横山(優也)に「昔、トラッシュと対バンしたけど、何がしたいのか分かんないような、めちゃくちゃなライヴをしてて。その時に比べると、だいぶ音楽的になったな」みたいな話をされたんです。本当にもうその頃はドラムセットを投げるとか、アンプの上に乗っかってキックボードで走るとか、そんなんばっかりやってたので…(苦笑)。で、当時よく出てたのが、天王寺Fireloopとか、十三FANDANGO、それから心斎橋HOKAGE、あとは緑橋・戦国大統領かな?そういうパンクとかオルタナとか、ハードコアとか(のバンド)が出てるライヴハウスだったんですけど、そんときに一番、口出ししてくれたのがFireloopの新世界ホシヲさんって人だったんですよ。他のところは“もう好きなようにやれば?”みたいな感じだったんですけど、ホシヲさんは自分でバンドをやってることもあってか、もっとこうした方がいいよとか、こういうマイク使ったほうがいい、こんな曲作れ!って。時にブチ切れられたりもしながら(笑)、めちゃくちゃ事細かに言ってくれてて。で、これはご本人、覚えてらっしゃるかどうかはわかんないんですけど、“お前、せっかく曲はいいんだから、そんなふうにモノ壊したりしててもしょうがないだろ?”って。“そんなのダサいって思うかもしんないけど、もっと踊れる曲とか、そういうのを作っていかないと、どうしようもないんじゃない?”って。そんなふうなことを、当時、言ってくれて。じゃあ書いてみようかなと思って書いたのがこの曲なんです。だから、ちょっと跳ねるようなリズム、ちょっとアップテンポなわかりやすいリズムで書いたんですけど、当時は“関西発4つ打ちロックバンド!”みたいなのがめっちゃ流行ってるときで、なんか、そこに丸ごと乗っかるのも嫌だなーって。だから減衰曲線(※5)…今は勢いよく飛び跳ねてても、どうせこんなブーム、すぐに終わるわい!って。この曲をやってる3、4分はフロアで飛び跳ねてくれたとしても、どうせ曲が終わったら、誰も俺らのことなんか見てくれませんよ〜って。シーンに対しても、自分自身に対しても、それからお客さんに対しても、かなりイジケた言い方で書いた曲だったんです」

※4)…From World Wide Web pre.「FIRE WALL Vol.3」(2026年4月5日京都KBSホールにて開催)
※5)…放射性物質や蓄電器の電圧など、ある量が時間とともに減少していく様子を示す曲線。

天王寺減衰曲線(2021)

──それが今ではライヴでも鉄板の、みんなが“待ってました!”って感じで盛り上がる曲になっている。


「うん。その頃は多分、減衰して、どんどん弱々しくなっていく方にばっかり目がいってた。でも今では、いっときでも飛び跳ねられるならいいじゃんって。飛び跳ねないより、飛び跳ねたほうがいいじゃん。踊れないより、踊った方がいいじゃんって。そういう、ポジティブな方にも目が行くようになってきた。だから、そういう意味でも今、再録しておきたいなと思って録りました」


──音源としては『PK shampoo.wav』にも入っていたと思うんですけど、ライヴではずっとこの(再録Ver.の)アレンジでやってましたよね?


「そうですね。もともと歌始まりの曲なんですけど、ライヴでは結構前から、あのアレンジでずっとやってますね。なんでそうしたのか、今となっては覚えていないんですけど、とにかくもう、あのイントロが面白くて。最近は“西山ダディダディ(※6)”になぞらえた“ヤマちゃんダディダディ”で、めちゃくちゃふざけた後に、あのイントロにつながるって遊びもよくやってますね(笑)」

※6)…西山ダディダディ──2025年、TikTokを中心に大流行したダンスミーム。


──だからでしょうか。今回の“再録”に関して、“ヤマちゃんダディダディから入るVer.では?!”と期待した人が一定数いたとか、いないとか(笑)。


「マジですか?!いや、それはさすがに入るわけないやん(笑)。でも…今思ったのは、そのコンセプトが、さっき言ったみたいに(曲を作った時点からは)徐々にポジティヴに変わってきてるっていう意味では、今後もし、もう一回再録があったとしたら、“ヤマちゃんダディダディ”から入ってもいいのかなと。それこそ“ダディダディRemix”みたいな名前で、入る可能性はありますね(笑)。でもまぁ今回は、クリックも聴かず、せ〜の!で、僕の歌に全員が合わせるような形で演奏して、録っていったので。たぶんメトロノームとかで測ると(リズムとかは)グラグラだと思うんですけど、それももう、ここまで何年もライヴでやってきた曲だし、全然気にならないというか。逆にそれが良かったなとは思いましたね」

天王寺減衰曲線 (2026 Ver.)


EPISODE:6 象徴、星なるもの。それから。



実は今作の制作過程において、自身の“星”に対する源泉がどこにあるのかについても、見つめ直したというヤマト。なぜなら、これまでずっと“星になれたら”、“星になりたい”、そんな歌ばかりを歌ってきたが、“じゃあなぜ、星なのか?”という原始的な問いに対しては、まだきちんと答えを出せていなかったからだ。それこそ“星になりたい”とは言っても、本物の白色矮星などになりたいわけではなく、かといって“死んだら星になるんだよ”という比喩の話でもない。ましてや時代や才能に選ばれたヒーロー=スターなんてこともあるはずはなく、言ってみれば“星っぽいもの”。「クリスマスツリーの1番上に載ってるアレとか」そういう“象徴としての星なのかも?”との思いにいたったのだという。そんな中でふと、思い出したのは母親との、ある記憶。それは、保育園や小学校で、持ち物に名前を書く際、母親が自分の名前のうしろに必ず「星(いわゆる五芒星)」のマークを書き足してくれていたことだった(例えば「ヤマト⛥」というように)。


「たぶん、字がわからなくても“この星を見たら、あんたのもんやと思い”ってことやったと思うんですけど、そんな刷り込みも、もしかしたら、“星”という概念を、自分の名前の1文字として、“自分のもの”として、認識するきっかけの一つだったのかもしれないなって。半分こじつけではあるんですけど、さっきの親父の友だちとの会話の中でふと思い出したりして。そういう“星みたいなもの”への意識、感情の発端は、そこにもあったんじゃないのかなって」


──6月には全国7か所を巡るツアーも始まります。今回のツアーでは、オーラスの東京Zepp DiverCity以外は、すべて対バンということで。発表されたバンド名に、各地でファンが盛り上がっているようです。


「今回の楽曲のテーマがそうだからってわけではないんですけど、ツアーでもやっぱり、“今まで見たことのないモノを見たいし、見せたい”って想いが、どうしてもある。だから、変えない部分、軸足の部分はちゃんとありつつも、ちょっとずつ新しい出会いにも手を伸ばしてみたって感じ(のラインナップ)になってます」


──なかでも、意外だったのは9mm(Parabellum Bullet)で。


「対バンとしては初めてなんですけど、メンバー全員、ド世代なんで。ある意味、大阪で一緒にツーマンができるっていうのは、凱旋感があっていいなと思ってます。僕、軽音サークルにベーシストとして入ったんですけど、一番最初に仲良くなった友だちが、めっちゃ9mm好きで。最初に新歓ライヴみたいなのがあるんですけど、そこで一緒にコピバンやって、一番最初に弾いたのが9mmの曲だった。そういうのもちょっと感慨深くて、楽しみにしています」


──かたや福岡はツアー初日、時速36kmとの顔合わせです。先日のオレンジスパイニクラブとの対バン(5月20日)に続いて、これまた長いお付き合いのバンドとの対バンとなっていますが。


「そうですねぇ…前にバンドマンの友だちから言われたんですよ。“ちょっとロックとかパンクでプロップスを得たと思ったら、すぐコメンテーターとかやりやがって。嫌いなんだよなぁ、俺”みたいなこと。もちろん、冗談半分で、なんですけど、それが時速36kmだったなぁって(笑)」


──まぁ、仲がいいゆえのディープなジョークということでしょうけど(笑)。こちらも見逃せないライヴになりそうですね。


「そうですね!前回の福岡はもう、信じられないぐらいの土砂降りでしたし(※7)。お客さんの半分ぐらいは来たくても来れなかったみたいなので、そのやり直しの意味も込めて、福岡から始めるっていうのは、すごくいいんじゃないかなと思ってます。それに、いつも言ってますけど僕、福岡がすごい好きなんで。今回も是非、いろんな人に、見に来てもらえると嬉しいなと思ってます。楽しみに待っていてください」

※7)…2025年8月10日(日)“PK shampoo Tour 2025 -Login to PK shampoo-”at LIVE HOUSE CBのこと。後から調べてわかったことだが、実はこの日の明け方も水星、金星、木星、土星、天王星、海王星が並ぶ6惑星直列が出現していたようだ。ちなみにこの日のライヴレポートは、いちばん下の<RELATED ARTICLE>から、どうぞ。



PK shampooの全体的なイメージカラーは寒色、青系──とヤマトは言った。でも、その“アオ”にも色んなバリエーションがあるのだと思う。筆者個人としては、ブルーモーメントのような、薄明よりも夕闇に近いロイヤルブルー、もしくはプルシアンブルーのようなイメージだが、どこまで行っても未完成な、また、未完成であろうとする態度には時折、“蒼さ”も感じて。各層ごとに、いろんなアオを魅せてくれるバンドだなぁと、つくづく思う。あなたの場合はどうだろう?彼らの音楽、彼らの歌、彼らのライヴに、どんなアオさを感じるのか。できれば、それを“あなたの言葉で”誰かに伝えてみてほしい。まとまってなくたっていいじゃん。ありふれた言葉だっていいじゃん。ネットの海で拾った“誰かのナニか”じゃなくて。あなたが聴いて、あなたが見た、あなたが感じたその気持ち。酔っぱらって変なこと言って、後悔したっていいよ。少なくとも、ここには、そんなみんなの代表みたいな(笑)人が歌う歌があって、“それくらい大丈夫!”って笑ってくれている。それこそ、今回のツアー・タイトルは“Planet Parade”(プラネット・パレード)。命名の由来は、本作のレコーディング初日(2026年2月28日)が“6惑星直列”の日(※8)であったことから決めたらしいが、競演するバンドも含め、あなたも、そして、あなたが誰かに伝える言葉も、一つの惑星だと捉えて、夜空に並べてみるなら、ツアー後にはきっと壮観な星空が広がっていることだろう。まずは6月14日(日)LIVE HOUSE CBにて。ともに星となりましょう。

※8)…2026年2月28日の6惑星直列では水星、金星、土星、海王星、天王星、木星の6つが地球からの見かけ上、まっすぐに並んだ。ちなみにPlanet Parade(=惑星パレード)においては必ずしも、星の並びは直線ではなく、もっと広い範囲に惑星が連なるように配置されることを指す(しかも“肉眼”で見られることが前提)。また、今年8月12日の夜明け前には、再び6惑星直列が出現するとのこと。その夜にはペルセウス座流星群も降り注ぐと言われているので、興味のあるかたは是非、スターゲイズしてみてほしい。


◯『2026年夏にしなきゃダメなこと』

・『尊い偽星』を買う

・最新ツアー“Planet Parade”へ行く

あとは各自追記するように!

SHARE

LIVE INFORMATION

PK shampoo tour 2026 -Planet Parade-

2026年6月14日(日)
福岡 LIVE HOUSE CB
GUEST:時速36km

PROFILE

PK shampoo

ヤマトパンクス(Vo,Gt)、福島カイト(Gt)、ニシオカケンタロウ(Ba)、カズキ(Dr)。2018年、関西大学の同音楽サークル出身の4人で結成。ノイジーかつエモーショナルなバンドサウンドと、詩的でメロディアスな歌世界。加えて、傍若無人な言動で周囲を困惑させる一方、多くの人から愛されまくりのフロントマン、ヤマトの人間味あふれるキャラクターが熱い支持を得ている。ちなみにレコーディングでは使っていないそうだが、本作のデモはすべて、KANA-BOON谷口鮪に借りたギターで書いたのだそう。「前、家に行ったときに、酔っ払ってる鮪さんに“これ、借りていいですか?”って言ったら、“いいよ”って言われたんで、持って帰ってきました。でも、めっちゃ高いギターらしくて、“100万ぐらいすんねんぞ!”って言われたんですよ(笑)。借りパク?いやいや、もちろん、ちゃんと返しますよ!!」(ヤマトパンクス)